男は黙ってDIYその2

私の住んでいる仙台も、昨日今日と20°近く気温が上昇、そして桜も開花し、だいぶ過ごしやすくなってきました。

超怠け者の私も、そろそろDIYの季節になりました。
今年はハーブガーデン用の育苗温室や、リノベーション客室編などたくさんの案件が控えています。

この度、これまでも何度か購入している、信州のとっこやさんで欅の一枚板を購入しました。
私は、日本で一番の大判一枚板の販売業者だと思っています。
今回購入した商品はこちらです。

とっこやさんに、以前購入した杉一枚板でDIYしたことをお伝えしたところ、セルフリノベーションキッチン編の写真を、とっこやさんのブログに掲載していただきました。

これから、購入した欅一枚板を使い、どんなオリジナル作品を作ろうかと、かなり「シビレ」ています。

今年もやっぱり、男は黙ってDIY

豆腐の食品成分

豆腐製品(木綿豆腐・絹ごし豆腐・焼き豆腐等)は、それぞれ製造行程の違いや大豆の種類によって食品成分に違いがあるようです。
http://www.tofu-as.com/tofu/howto/03.html

焼き豆腐は、絹ごし豆腐と木綿豆腐に比べると水分が少なく、脂質とタンパク質が多い、その分糖質が低くなっています。
焼き豆腐用の木綿豆腐は、焼き豆腐用に水切りが少なくて済むように、作業工程で堅めに木綿豆腐造っているのではないでしょうか。
(木綿豆腐を焼き豆腐にするのではなく、焼き豆腐用の木綿豆腐を作っている)

成分表を見ても木綿豆腐と焼き豆腐では水分量が僅か2g違いです。
タンパク質は焼き豆腐の方が木綿豆腐より1.2g多く、その面からも製造工程(「水分量」と「タンパク質」と「にがり」が関係している)で煮崩れしないように加工しているのだと思いますがいかがでしょうか。

○日本食品標準成分表(7訂)より
https://fooddb.mext.go.jp/

●木綿豆腐(100g)
エネルギー 72kcal
水分 86.8g
タンパク質 6.6g
脂質 4.2g
糖質 1.2g
食物繊維 0.4g

●絹ごし豆腐(100g)
エネルギー 56kcal
水分 89.4g
タンパク質 4.9g
脂質 3.0g
糖質 1.7g
食物繊維 0.3g

●焼き豆腐(100g)
エネルギー 88kcal
水分 84.8g
タンパク質 7.8g
脂質 5.7g
糖質 0.5g
食物繊維 0.5g

○日本食品標準成分表2015年版(7訂)
第3章 資料 1 食品群留意点より
「焼き豆腐」は、通常、若干水切りした木綿豆腐に焼き目を付けたものである。成分値は、市販品の分析値及び四訂成分表成分値に基づき決定した。
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2015/12/24/1365346_1-0304.pdf

追記

Re: Re:Re: 焼き豆腐と絹ごし豆腐・・

オスティナート さん

ありがとうございます。
なるほど、納得です。

2017/04/08(Sat) 21:55 | URL | ドクター江部 | 【編集

インスリンとグルカゴンそしてインクㇾチン

バーンスタイン医師の糖尿病の解決、最新版p72〈中華料理店効果〉を読んでみました。

前の版では「小腸上部には、食後などに膨張した際に、血中にホルモンを放出する細胞が含まれる。これらのホルモンは、食事の消化後に起こるであろう血糖値上昇をを防ぐために膵臓にいくらかのインスリンをつくるように命令を送る。」でしたが
最新版では「大量の食物は小腸の細胞それだけ強く進展させ、それに応じて大量の〝インクㇾチン″ホルモンがその細胞から分泌されます」に変わりました。
具体的に「インクㇾチン」とあり、インクㇾチン(GLP-1・GIP)がブドウ糖以外のインスリン分泌に関連があるのか気になっていました。

福田 一典 先生のサイトから
「ブドウ糖以外がインスリンの分泌を高める機序としては、インクレチンと呼ばれる消化管ホルモンの関与が考えられています」
「牛乳タンパク質のアミノ酸組成がインレクチンの分泌を促進し、インスリンの分泌を刺激することが明らかになっています」
とありました。

インスリンとグルカゴンそしてインクㇾチンが関連しているのですね。

追記
Re: インスリンとグルカゴンそしてインクㇾチン

オスティナート さん

「ブドウ糖以外がインスリンの分泌を高める機序としては、インクレチンと呼ばれる消化管ホルモンの関与が考えられています」
その通りと思います。

2017/03/26(Sun) 20:19 | URL | ドクター江部 | 【編集

菊芋でカレー

菊芋をご飯代わりにしてカレーにしました。

菊芋は洗って、皮をむいて、軽く茹でてからホイル焼きにします。

皿に盛り、低糖質自家製カレーをかけて完成です。
アツアツで湯気が立っています。

これからも、菊芋のグラタンや菊芋のビシゾワーズ、菊芋のコロッケ、フライドポテト等いろいろ挑戦してみます。

これまでいろいろ菊芋料理を掲載してきましたが、
一番おいしかったのは単純に塩を振って食べたときでした。
シンプルはいいよ~~~♪♪

きょうも嫌がる他人の耳元でささやいています
ねぇ君、糖質制限はいいよ~~~♪♪

※ブログをはじめてご覧になった方へ
シンプルはいいよ~~
糖質制限はいいよ~~
低糖質カレー

菊芋で芋煮

芋煮とは、山形や仙台で秋に野外で食べる郷土料理です。
山形は牛肉で、仙台では豚肉を使います。共通しているのは、里芋を入れることです。

里芋は糖質制限では糖質が高いのでNG食品です。
そこで菊芋を使い、私は仙台生まれですので豚肉を使いました。

みそ味をベースとした、トン汁のようなものです。

材料:
豚バラ肉
菊芋
大根
ニンジン
ゴボウ
こんにゃく
白菜
長ネギ
仙台みそ
合わせ醤油
青ネギ
七味唐辛子
全て適量

コツ:
菊芋は柔らかくなりすぎないように、最後の15分に入れてください。
体も心も温まります、ぜひお試しください。

 

そろそろ冬眠明けです

暑さ寒さも彼岸まで、といいますが、東北仙台もずいぶん日も高くなり、そして気温も10度前後まで上がるようになりました。

私は、去年12月に冬眠に入り、明日3/20に冬眠開けします。
これから、diy、ガーデニング、ハーブ栽培そして畑仕事が加わります。

去年10月に植えた青森産巨大6片ニンニク(161かぶ)

巨大ニンニク(福地ホワイト六片種 )元気に育っています

今年から、新たに菊芋栽培を始めます。
目標は200kg収穫を目指します。

 

手巻きと手抜き

スーパー糖質制限食を始めて4年9ヶ月になりました。
石の上にも三年と言いますがもうすぐ5年になります。
ご飯はこれからも一生食べません。

最近飲食業界も少し変わってきました、
「定食のごはん抜き」サラダ等がつくそうです。
タンメンの麺抜き」麺の替わりにもやしや野菜が追加で入った野菜スープです。

糖質制限に理解のない医師や管理栄養士よりも、一般の頭の柔軟な人(頭の自由な人)が良く勉強しているようです。
インターネットの普及により「頭の不自由」医師管理栄養士の言っている嘘を簡単に見抜くことができるようになってきました。

「抜き」とか「見抜く」とか、何を言いたいのかと申しますと、
魚好きで寿司好きの私がよく食べてる手巻きずしのことです。

それは、ご飯抜きで作る、手抜き寿司です。

ご参考までに
『頭の自由な人』と『頭の〇自由な人』そして糖質制限食
http://wp-ostinato.eek.jp/wp/atamanofujituunahito/

 

菊芋でスペイン風オムレツ

菊芋を使ってスペイン風オムレツを作りました。

材料:
全卵10個
ゆでた菊芋300g
マヨネーズ
バター
オイル

胡椒
刻みパセリ
各適量

ゆでた菊芋と全卵他をボウルに入れ準備する。

菊芋をフライパンに入れ、バター、オイル、塩・胡椒を入れ軽く焼き色がつくまでいためる。

全卵その他の材料を入れ強火でかき混ぜるようにいためる。

蓋をして弱火で8分ほど加熱する。

蓋を取り皿をのせて返し、2分加熱する。

焼き上がり

10等分して皿に盛り完成です。

今回はフライパンで調理しましたが、オーブンで調理する方法もあります。
味付けは基本的に塩と胡椒ですが、好みでパルメザンチーズまた、和風だし等お試しください。
肉料理の添え物や、単独でおやつに、冷めてもおいしく食べられます。
尚、単独で食べる場合は塩味を濃い目にするといいでしょう。

菊芋でポテサラ

菊芋をジャガイモの替わりに使いポテサラを作りました。

作り方は普通に作るポテサラと同じです。

材料:
ゆでてカットした菊芋
糖質0ハム
玉ねぎスライス
きゅうりスライス
ゆで卵スライス
マヨネーズ
和からし粉

全部混ぜて器に盛り付ければ完成。

コツは菊芋をゆですぎず少し食感を残すことです。
菊芋はゆですぎると水っぽくなります。
10分から15分の間でうまく調理してください。
軽い食感を残すことで、ポテサラにレンコンが入ったような一品に仕上がりました。

菊芋で肉じゃが

菊芋で肉じゃが風に調理しました。

材料(3人分):
玉ねぎスライス 130g
牛バラ肉 スライス  320g
菊芋、皮をむき食べやすい大きさにカット   300g
合わせ醤油  120g
糖質0日本酒   60g
つきコンニャク  適量
ニンジン ニンジン適量
スナップエンドウ 適量

鍋に玉ねぎを敷き、牛肉を乗せ合わせ醬油と糖質ゼロ日本酒を入れ蓋をして肉が柔らかくなるまで煮込む、水は入れないのでしっかり密閉できる鍋を使う。(今回はビタークラフト使用)

皮をむきカットした菊芋を別の鍋に敷き、つきコンニャクと柔らかく煮込んだ牛肉を乗せ蓋をして15分煮込みます。

器に盛り、ニンジンとスナップエンドウを適量添えて完成です。

菊芋と私とタワシ

菊芋と私

最近まで菊芋というものを知りませんでした。
菊芋を知ったのは江部先生のブログです。
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4026.html

イヌリンを豊富に含む食品として注目されているようです。

食品成分

菊芋の食品成分(日本食品標準成分表2015年版(七訂)から)
各成分をエネルギーに換算してみました。

エネルギー 35kcal
水分    81.7g
タンパク質 1.9g(4kcla/1g)7.6kcal
脂質    0.4g(9kcal/1g)3.6kcal
糖質              12.8g(約1.8kcal/1g)22.8kcal
水溶性食物繊維 0.5g(2kcal/1g)1kcal
不溶性食物繊維 1.4g(0kcal/1g) 0kcal

糖質のほとんどがイヌリン(多糖類)のようです。
イヌリンは加水分解によってオリゴ糖(小糖類)に変わります。
成分表ではイヌリンを糖質として表示していますが、小腸で吸収されることはなく、一般に水溶性食物繊維として扱われています。
熱量から逆算しても、通常の糖質が4kcal/1gなのに対し約1.8kcal/1gと水溶性食物繊維の熱量2kcal/1gとほぼ同じです。

菊芋とタワシ

菊芋はスーパーなどでは販売されていません。
今回、食用兼種イモとしてネット通販で20kg購入しました。
土がついたまま送られてきます。
保存や、成分がぬけないようにするためだそうです。
ところが、土がなかなか落ちないのです。
ここで登場するのが「タワシ」です。
芋の形がショウガのような凸凹なので、タワシを使うのが一番でした。

タワシできれいに土を落としてから、ピーラーでむきます。

ケトン体産生のメカニズム

プラクティスから記事を転載しました。
goo.gl/aHZDck
web上では公開されていません、指摘されたら削除します。

プラクティス 34巻1号
知って得するケトン体の不思議 -ケトン体:敵か,味方か?-

雑誌 – 2016/12/28

15p

東京大学先端科学技術研究センター
代謝医学分野  酒井 寿郎

ケトン体産生のメカニズム

はじめに
ケトン体は糖尿病治療における重篤な副作用のもとになる悪玉的な印象があり、低糖質ダイエットやSGLT2阻害薬による薬物療法ではケトン体が発生することが知られ、懸念されていた。
しかし、近年、ケトン体はエネルギー制限に伴う抗老化作用に関することも見いだされ、あらためてそのメカニズムと生理的役割に関心が高まっている。
本稿ではケトン体の合成と代謝そして生理的役割について概説する。

1. ケトン体の代謝・調節・機能

ケトン体は脂質由来の小分子で、飢餓や長期の運動時にエネルギー源として使用される。
脂肪組織では、ヒトの80%以上ものエネルギーが脂肪酸として貯蓄されている。
飢餓時には骨格筋と肝臓のグリコーゲン貯蓄がまず欠乏していく、次いで脂肪酸が脂肪細胞から動員され、肝臓でケトン体に変換される。
ケトン体は次いで、血中循環を介して代謝が活発な組織である脳や筋肉へと分配される(表1)。
そしてそこでアセチルCoAへと変換され、グルコースに替わるエネルギーとして使われる。
ヒトにおいては、βヒドロキシ酪酸(βOHB)の基底レベルは低μM(マイクロモーラ)程度であるが、12~16時間の絶食で200~300μMになり、2日間の絶食では1~2mM(ミリモーラ)まで、さらに、遷延する飢餓では6~8mMにまで達する。
1~2mMまでの上昇は90分間程度の集中した運動でも起こる。
2mMレベルは炭水化物をほぼ欠乏させたケトジェニックダイエットでも誘導される。
子供は大人に比べるとβヒドロキシ酪酸をより効率的に産生し、そしてより効率的に使用する。
特に生後間もなくは、脳はエネルギー源をケトン体に依存しており、血中レベルは2~3mMに達する(表2)。

1) ケトン体合成と利用
ケトン体合性は主に肝臓で行はれる。
わずかにはほかの臓器でケトジェニック酵素が異所性に発現したり、ケトン体が分解する経路が逆行するなどして作られる。
肝臓で脂肪酸はまずアセチルCoAへとミトコンドリアのβ酸化を介して変換させる(図1)。
ミトコンドリア型のHMG-CoA合成酵素(HMGCS2)が、アセチルCoAとアセトアセチルCoAを縮合しHMG-CoAを合成する。
そしてここからHMG-CoAリアーゼ(HMGCL)によってアセトアセテートが遊離される(図1)。アセトアセテートはもう2のケトン体(アセトンとβヒドロキシ酪酸)の共通の前駆体となる。
大部分のアセトアセテートは、βヒドロキシ酪酸脱水酵素(BDH1)によってβヒドロキシ酪酸へと変換される。
βヒドロキシ酪酸は血中を流れる最も量の多いケトン体で、アセトアセテートと比べてアセトンに自然分解しにくい。
一度標的組織に取り込まれると、βヒドロキシ酪酸は同じ酵素によってアセトアセテートに再度戻り、今度は合成経路ではなくケトン体消費経道に乗る。
サクシニルCoAはCoAをアセトアセテートに供与し、アセトアセチルCoAを作る。
この反応はサクシニルCoA3ケト酸コエンザイムAトランスファーゼ(OXCT1)によって触媒される。
この反応はHMGCS2が触媒する不可逆経路をバイパスする。
このように、合成と利用とで異なる酵素経路を使うことによって、βヒドロキシ酪酸が無益回路に入るのを防御する。(注:無益回路は、2つの代謝経路が同時に逆方向に向き、全体的に見てエネルギー消費のほかに変化がない回路のことである。)

OXCT1は肝臓には発現しないため、肝臓でアセトアセテートを再度アセトアセチルCoAに戻すことはない。
肝臓以外の臓器に発現するOXCT1によってアセトアセテートは2分子のアセチルCoAにされ最終的にTCAサイクルで酸化およびATP産生に寄与する¹⁾。

2)転写と翻訳後修飾によるβヒドロキシ酪酸の代謝
ケトン体合成においてこれらの酵素による制御が非常に重要である。
律速段階はミトコンドリア型のHMGCS2がアセチルCoAとアセトアセチルCoAが縮合する段階である(図2)。


これは脱アセチル化酵素(HDAC)であるSIRT3によって活性化される。
一方で脳に取り込まれたβヒドロキシ酪酸はアセチルCoAとなり、TCAサイクルのなかでクエン酸(citrate)に変化する。
そして、このクエン酸は核膜付近でクエン酸リアーゼによってアセチルCoAへ再び変換され、これがヒストンアセチル化酵素(HAT)の供給源となる。
さらにもう一方で、βヒドロキシ酪酸はHDACを阻害することが明らかにされた²⁾。
このようにケトン体の代謝はヒストンのアセチル化を促進すると同時に脱アセチル化を阻害することで、ハイパーアセチレーションに寄与することがわかってきている(図3)。
また最近では糖尿病のみならず、がん、メタボリズムの領域でもこれらの制御は非常に話題になっている。
たとえばがん細胞ではクエン酸を介したヒストンの制御が重要になるが、近年になって栄養が枯渇した状態では酢酸が産生されることがわかってきた(図3)。
この酢酸は細胞質型のアセチルCoA合成酵素を介してアセチルCoAとなり、クエン酸に代わってヒストンのアセチル化に関与する。
また一方で、このアセチルCoA合成酵素は、コレステロールの代謝を制御する転写因子SREBPの標的遺伝子でもあり、SIRT1によって脱アセチル化され活性化することが明らかとなっている。
このように、ケトン体を合成する酵素としてHMG-CoA合成酵素が非常に重要な役割を果たしているが、飢餓時ではアセチルCoA合成酵素がその役割を担う。
そして両者ともSIRTにによって活性化され、ヒストンのアセチル化・脱アセチル化に関与する。
絶食が核内のイベントをひき起こすきっかけとなり、アセチル化・がん・メタボリズムというキーワードに関連性が見出されたことで、これらの酵素の制御とメカニズムの解明が現在急速に進められている。
HMGCS2は前述したアセチル化に加えてサクシニル化の翻訳後修飾によっても制御される(図2)。
HMGCS2は、NAD⁺依存性に活性化されるミトコンドリアの脱アセチル化酵素SIRT3³⁾によって脱アセチル化され活性化される。
SIRT3は絶食時の代謝を抑制し、SIRT3を欠損したマウスは絶食でのβヒドロキシ酪酸が減少する²⁾。
興味深いことに、脂質からケトン体産生に寄与する酵素すべてがアセチル化されており、多くはSIRT3による脱アセチル化部位を複数持ち、多くアセチル化されている。
アセチル化同様サクシニル化もHMGCS2の活性を抑制する。
サクシニル化されるメカニズムはまだわかっていない。
しかし、サクシニルCoAの量とHMGCS2の肝臓におけるサクシニル化がラットへのグルカゴン投与によって減少することが報告されている⁴ ⁵⁾。
リジンのサクシニル化はミトコンドリアの脱サクシニル化酵素SIRT5によって除去される。
SIRT5はミトコンドリアでの絶食に伴うさまざまな経路を制御する。
しかし、HMGCS2が本当にSIRT5による脱サクシニル化の標的か否かについてはまだ不明である。
しかし、アセトアセテートとβヒドロキシ酪酸との相互変換はβヒドロキシ酪酸脱水素酵素によって触媒され、容易に可逆的である。
この相互変換は基質とコンファクター(NAD/NADH₂)の比によって制御される。
βヒドロキシ酪酸脱水素酵素(BDHI)はSIRT3によって抑制されるアセチル化部位を数個もつ。
ただし、このアセチル化の意義はわかっていない。
OXCTIの活性はチロシンのニトロ化によって抑制されるとの報告もあるが、これ以外の制御はほとんどわかっていない。
HMGCS2の遺伝子発現は転写で制御されているため、ケトン体の合成も転写で制御されている。
そしてこれは2つの栄養応答経路による。
1つ目はFOXA2これはHMGCS2のプロモーターに結合して転写活性化する。
FOXA2自体は相反する2つのパスウェイで制御される。
インスリンはFOXA2をリン酸化し、核外移行を誘導し活性化させる。
一方グルカゴンはFOXA2をp300のアセチル化を介して活性化する。
一方、FOXA2の脱アセチル化はさらに、栄養応答性の酵素sirt1によって調節される。
SIRT1はクラスⅠおよびⅡのHDACと協調して機能を表す。
2つ目はmTORC1(mammalian tarret of rapamycin complex 1)とPPARα(peroxisome proliferatoractivated receptor α)、そしてFGF21(fibroblast growth  foctor 21)による制御である。
PPARαとFGF21は絶食やケトジェニックダイエットで劇的に上昇する。
これらのどちらかを欠損するとケトン体合成は抑制される。
mTORC1複合体はPPARαを抑制するので、mTORC1の抑制はPPARαの誘導に必要である。

3)βヒドロキシ酪酸の輸送、利用、そして変換
βヒドロキシ酪酸の輸送については、合成と利用に比べてわかっていないことが多い。
小極分子であるβヒドロキシ酪酸は水溶性で血液にもよく溶ける。
数個の単炭素酸トランスポーター(MCT1やMCT2)はケトン体を、血液脳関門を通すことに寄与する(図 1).
興味深いことに、MCT1の高発現は胎生期やケトジェニックダイエット摂取と連動している。
近年、単カルボキシルトランスポーターSLC16A4が、βヒドロキシ酪酸の肝臓からの輸出に重要な鍵であることがゼブラフィッシュの個体モデルで明らかとされた。
これを欠損すると絶食化で脂肪肝になる。
このメタニズムとして、アセチルCoAがケトン体合成に向かうのではなく脂肪合成に向かうためと考えられる。
興味深いことに、βヒドロキシ酪酸が絶食時のエネルギー源として利用されることは、進化論的にかなり古い。
バクテリアの多くの種ではβヒドロキシ酪酸のポリマーを合成し、エネルギーとして貯蓄する。
これは、プラスチックの代替としてバイオポリマーの製造に使用される反応のひとつである⁶⁾。
βヒドロキシ酪酸の生合成酵素群、すなわちHMGCS2からβヒドロキシ酪酸脱水酵素に至る一連の完全なプログラムは、初期の真核生物で出現し、さらには植物中にまで存在している。
脂肪酸のHMG-CoA合成酵素はコレステロール生合成の律速酵素である。
古代の細胞質HMG-CoA合成酵素は、生体内でケトン体生成に関与することは知られていない。
よって、これらの深い種を超えた保存は、おそらくコレステロール生合成において重要な役割を反映していると考えられている。
なぜなら、これらの古典的な細胞質に局在する酵素はケトン体合成に関与するからである。
ケトン体の代謝にHMG-CoA合成酵素が特化してきたのは、もっと進化論的に最近のことである。
HMG-CoA合成酵素のミトコンドリア型およびミトコンドリア局在とともに出現してきた。
ミトコンドリアHMGCS2は、ケトン体代謝にかかわる進化論的に最新の酵素であり、細胞質のHMGCS1から(鳥とヒトを含む)有羊膜類まで分岐されている⁷⁾。

2. βヒドロキシ酪酸のシグナリング機能

βヒドロキシ酪酸は絶食時のエネルギー源として知られているが、シグナリング機能があることはごく最近認識されてきた。
さらに、βヒドロキシ酪酸は2つの細胞表面に局在する受容体を介して機能することがわかってきた。
さらにHDACの内在性の阻害薬として同定された。

1) βヒドロキシ酪酸受容体
βヒドロキシ酪酸は短鎖脂肪酸を結合する2つのGPCR(G蛋白質共益型受容体)のリガットとして機能する。
一つはHCAR2(別名MA-G,GPR109)でG蛋白質のサブユニットとしてはGi/oにカップルする。
当初はニコチン酸受容体として同定されたHCAR2(hydroxycardoxylic acid recepter 2:別名 PUMA-G,Gpr109)がβヒドロキシ酪酸に結合し活性化されることが明らかとなった。
βヒドロキシ酪酸で活性化する脂肪細胞での脂肪分解を抑制するもう一つはFFAR3(GPR41)で3ある。
同様にGi/oにカップルする。
交換神経節に局在し交感神経の活動を抑制する。
このようにして、βヒドロキシ酪酸は2つのGPCRを介して脂肪分解を抑制し、交感神経活動を抑制し、代謝を抑制する⁸⁻¹⁰⁾。
これらの受容体はGPCRファミリーに属し、多くの脂肪酸リガンドは代謝や代謝疾患に重要な役割を有する。

2) βヒドロキシ酪酸はクラスⅠとⅡAのhdacに結合し活性を阻害する
酪酸(プチレート)はβヒドロキシ酪酸と水酸基が違うだけであるが、ヒストン脱アセチル化酵素HDACのはじめての阻害薬である。
近年、βヒドロキシ酪酸がクラスⅠのHDACを阻害することが発見された。
HDACはヒストンやヒストンの外にある蛋白質のリジン残基脱アセチル化する。
ヒストンのアセチル化の促進は転写を誘導する。
ヒストンがはじめての標的として見出されたが、ヒストン以外にもp53,c-Myc,MyoDなども脱アセチル化されることが見出されている。
近年、βヒドロキシ酪酸がクラスⅠとクラスⅡaに属するHDACを阻害することが示された。
in vitto ではIC50は2~5mmである。
培養細胞の培地にβヒドロキシ酪酸を加えると濃度依存性にヒストンのアセチル化の促進が誘導され。とりわけH3の9番と13番目のリジンにみられる。
興味深いことに絶食は顕著なヒストン脱アセチル化をマウスの多くの臓器で誘導する。
浸透圧ポンプによってβヒドロキシ酪酸を持続注入すると腎臓でヒストンのアセチル化の促進が誘導され、特異的な遺伝子の発現化が認められる。
その中にはFoxo3がある。
この遺伝子はDAF16のオルソログで、線虫では寿命を延ばすことが知られている。
Foxo3が誘導されるのはHDACの直接の阻害効果と考えられている。

3. βヒドロキシ酪酸は間接的に蛋白質のアセチル化を誘導する
βヒドロキシ酪酸は細胞内のアセチルCoAプール量を増加させることで、より間接的に蛋白質のアセチル化を促進する。
例を挙げるとエネルギー制限、絶食、高脂質職はすべて脂質の利用が亢進する状態である。
それゆえアセチルCoA産生が増加し、高アセチルCoAはミトコンドリア蛋白質のアセチル化を促す。
ミトコンドリアからのアセチルCoAの輸送はクエン酸合成酵素とクエン酸リアーゼの触媒を介した能動的な輸送である。
クエン酸リアーゼは脂肪酸合成の鍵となるが、アセチルCoAをミトコンドリアから輸送を促進させるこの機能は、成長因子刺激でおこるヒストンアセチル化に必要である。
前述したβヒドロキシ酪酸は直接ヒストン脱アセチル化酵素を阻害する経路とあわせてヒストンのアセチル化を亢進させ、遺伝子の転写亢進に寄与する。

おわりに
以上、絶食で誘導される代謝物ケトン体の合成経路と生理的役割について概説した。
近年、ケトン体の有用性が知られるようになり、糖尿病腎症やアルツハイマー病やパーキンソン病の脳が改善するという知見も出てきている。
これがHDAC阻害薬としてはたらくほかにGPCRのシグナル分子として効く、さらには、代謝自身がケトジェネシスに向かうことが重要なのか、物質としてβヒドロキシ酪酸が重要なのか、必ずしも切り離して解決するのは難しい。
しかし、今後、多くの事象や論文を解釈していくうえで重要と考えている。

文 献
1) Fukao, T,, Lopasyuk, G, D. et al. : Pathways and control of ketone body metabolism : on the fringe of lipid biochemistry. prostaglandins lenkot essent fatty acids. 70 : 243~251,2004

2) Shimazu, T ., Hirschey, M. D. et al. : SIRT3 deacetylates mitochondrial 3-hydroxy-3-nethylglutarylcoa synthase 2 and regulates ketone body production .sell metab, 12 : 654~661, 2010

3) Boroughs , L, K,, Deberardinis, R, J, : Metabolic pathways promting canser sell survival and growth. Nat cell biol, 17 : 351~359, 2015.

4) Quant, P. A., Tubbs, P, K. et al. : treatment of rats with giucagon or mannoheptulose increases mitchondrial 3-hydroxy-3-methylgiutaryl-coa synthase activity and decreases seccinyl-coa content in liver, Biochem J, 262 : 159~164, 1989

5) Quant, P. A., Tubbs, P, K. et al. : Glucagon activatates mitchondrial 3-hydroxy-3-methylglutaryl-coa synthase in vivo by decreasing the sxtent of succinylation of the enzyme . Eur J Biochem. 187 : 169~174, 1990

6) Hankermeyer, C. R., Tjeerdena, R. S. : Polyhydroxybutyrate : plastic made and degraded by microorganisms. Rev Environ Contam Toxicol, 159 : 1~24, 1999.

7) NCBI Resource Coordinators : database resourse of the national senter for biotechnology information. Nucleic aCids Res, 41 : d8~d20, 2013

8) Tunaru, S., Kero, J. et al. :PUMA-G and HM74 sre receptors for nicotinic acid and mediate its anti-lipolytic sffect, Nat Med, 9 : 352 ~355, 2003

9) Taggart, A. K., Kero, J. et al. : (D)-beta-hydroxybutyrate inhibits adiposyte lipolysis via the nicotinic acid teceptor PUMA-G.J Biol Shem, 280 : 26649~26652, 2005

10) Kimura, Ⅰ,. Inoue, D. et al. : Short-shain fotty acids and ketones directly regulate sympathetic nervous system via g protein -coupled receptor 41(gpr41).
Proc Natl Acad Sci USA, 108 : 8030~8035, 2011

HDAC活性阻害を介したケトン体の抗老化作用

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プラクティス 34巻1号
知って得するケトン体の不思議 -ケトン体:敵か,味方か?-

雑誌 – 2016/12/28

HDAC活性阻害を介したケトン体の抗老化作用
31p~

順天堂大学医学部付属練馬病院
糖尿病・内分泌内科
西田 友哉

はじめに
ケトン体は従来、飢餓や激しい運動時において抹消組織にエネルギーを供給する物質として働くと考えられてきた。
一方で、ケトン体の一種であるβヒドロキシ酪酸(BOHB)は、特定の受容体を介して細胞にシグナルを伝達し、またヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害作用を有するなど、多様な作用をを持っていることが報告されている。
特に後者は、ケトン体がヒストンの修復を介して、栄養や代謝の状態に応じて遺伝子発現を調節する橋渡しを演じているという点で重要である。
本稿では、ケトン体によるHDAC阻害作用を通じた抗酸化ストレス作用に関する報告を中心に、ケトン体の抗酸化における意義に関して概説する。

1. 不老不死の夢と老化研究

古代中国では秦の始皇帝を始め、「不老長寿の秘薬」に関する逸話がしばしば登場する。
中性欧州の錬金術師たちは「若返りの妙薬」を作り出す血道を上げた。
日本でも竹取物語には、富士山の名前の由来となった「不死の薬」が登場する。
洋の東西を問わず、不老不死は人類の長年の関心ごとであり、長寿や老化に関する研究は現在に至るまで精力的に続けられている。
現実的には、マウスを哺乳類を用いて老化のメカニズムを研究することは困難を伴う。
哺乳類は寿命が長く、また分子生物学で重要な遺伝子変化(特定の遺伝子を過剰に発現させるトランスジェニックや、特定の遺伝子を欠損させるノックアウトなど)に時間がかかるためである。
そのため老化や寿命の研究は酵母(イースト)・線虫・ショウジョバエなどの寿命が短く、かつ遺伝子改変が容易なモデル生命において研究が進められ、そこで得られた知見をマウスなどのより高等な生物に検証するかたちで発展してきた。
さまざまなモデル生物において、エネルギー制限が寿命延長をもたらす点については、ほぼコンセンサスが得られている¹⁾。
エネルギー制限とは、一般的には栄養不良状態にならない程度で摂取エネルギーを減少させることを指す。
また、モデル生物での遺伝子改変技術を駆使することにより、エネルギー制限が寿命延長をもたらすメカニズムに関しても複数の経路が明かにされている。
代表的な経路として、インスリン/IGF-1経路、mTRO経路、そしてサーチュインを介した経路などが報告されている¹⁾。
さて、ケトン体は飢餓時や運動時、すなわち糖によるエネルギーの供給が追い付かない場合に肝臓で生成され、抹消組織へのエネルギー供給を担う物質であると考えられてきた。
ところが最近、カルフォルニア大学サンフランシスコ校グラッドストーン研究所のVerdin博士の研究室では、ケトン体の一種であるβOHBが、エネルギー制限により寿命の延長がもたらされるメカニズムの一端を担っていることを報告した²⁾。
この研究は、生命の栄養状態の変化と寿命の制御に関する遺伝子制御が、ケトン体を介して調節されるという機序を明らかにすることで、エネルギー制限による新たな抗酸化のメカニズムを発見した画期的な内容である。
本稿ではこの報告を中心にケトン体が老化の制御にもたらす意義について概説し、一般的なケトン体産生のメカニズム、その制御やエネルギー運搬体としての役割などに関しては、本特集別項にゆだねることとする。

2. HDACはエビジェネティック制御に関与する

いずれの遺伝子がどのタイミングではたらくかということは、細胞がその機能をてきせつに発揮していくための基本的な制御機能である。
このような遺伝子発現の調節を行う機構のひとつとして、「エピジェネティック制御」が提唱されている。
細胞や個体がどのような形態をとり、どのようなはたらきをするか(これを表現形という)は、DNAの4つの塩基配列だけで決まっているわけではない。
エピジェネティック制御とは、遺伝子の塩基配列とは別個に遺伝子発現の抑制をを行うメカニズムである³⁾。
つまり遺伝子と表現形の中間に存在する制御機構と考えられる。
細胞はエピジェネティック制御を行うためのメカニズムを複数持っているが、その一つが、DNAが巻きついているヒストンにさまざまな官能基を付加したり取り除いたりすることである。
これをヒストン修飾とという。
DNAはマイナスの電荷をもっていて、プラスの電荷をもっているヒストンにしっかりと巻き付いて折りたたまれている。
このような状態(ヘテロクロマチン)では、遺伝子を発現させる蛋白はDNAにアクセスできず、遺伝子発現は抑制されている。
ここで、ヒストンアセチル基転移酵素(HAT)によりヒストンのリシン残基にアセチル基が付加(アセチル化)されると、ヒストンはマイナスの電荷を帯びるようになり、ヒストンとDNAはマイナス同士で反発し、DNAの巻き付きがゆるみ、ユークロマチンという状態になる。
このような変化によって、情報を読み取る分子がDNAにアクセスしやすくなり、遺伝子の発現が促進される。
一方で、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は、ヒストンのリシン残基に存在するアセチル基を取り除く(脱アセチル化する)酵素である。
すなわち、前述のHDACのはたらきとは逆のメカニズムにより、遺伝子の発現は抑制されることになる(図1)。

HDACは、その構造や存在する場所から4つのグループに分類されている。
本稿で登場するHDAC1.2などはクラスⅠHDACに属する。
クラスⅢHDACはサーチュインの別名で呼ばれるグループであり、脱アセチル化を行うにあたっては、ミトコンドリアの電子伝達系の補酵素であるNADを必要とするという特徴がある⁴⁾。
なお、長年にわたるHDACについての基礎研究の成果はすでに臨機応用されている。
HDACのはたらきを抑えることにより、細胞の分化を誘導する遺伝子の発現が促進され、未分化な細胞であるがんの抑制につながると考えられる。
このアイディアに基づき、わが国ではHDAC阻害薬であるボリノスタット(SAHA)が皮膚T細胞性リンパ腫の、パノビノスタットが難治性多発骨髄の治療に、それぞれ使用されている。
一方でHDACが寿命の制御に関係していることも、モデル生物を用いた基礎的な実験で数多く報告されている。
HDACのはたらきを抑えること、すなわちHDACのノックアウトやHDAC阻害薬を投与することで、酵母や線虫、ショウジョバエにおいて寿命の延長が認められる。
マウスにおいても、HDAC阻害薬によって敗血症モデルの症状改善がみられ、またがんを発症するマウスとHDACを欠損したマウスを交配させると発がん率がていかするなど、HDACの制御による保護的な効果認められている。
それではHDACは生物には本来不必要な存在であるかのように思われるが、実際は前述のHDACのクラスなどによる寿命延長効果の違いがあることも判明しており、より複雑な制御が行われていることが推測される⁵⁾。

3. ケトン体は代謝改善効果をもたらす

さて、最初に述べたようにエネルギー制限食や、間歇的食事摂取はモデル生物において寿命の延長効果を示すことが知られている。
間歇的食事摂取とは、マウスの絶食と摂食を1日ごとに繰り返したり、1日8時間のみ摂食させたりすることで、食事のインターバルを設けることである。
面白いことに、これらのマウスでは、総エネルギー摂取量を比較対象のマウスと同じにしても寿命延長効果が認められることから、間歇的食事摂取を行うことで血中のケトン体が上昇するということが寿命の延長に寄与していると推察される。
それではケトン体は、生体に対してどのような効果を持っているのだろうか?
それについては、マウスに高ケトン血症を起こすような「ケトン負荷食」を与えることにより検討されている。
ケトン負荷食とは、高脂質食・高タンパク質・低炭水化物を特徴とする高エネルギーの食事である。
イメージとしては、焼き菓子などに用いられる「ショートニング」が近い組成を有している。
ケトン負荷食を摂取すると、高脂質食により生体内での脂肪酸合成が抑制され、ケトン体産生を促進する遺伝子が促進される結果、血中ケトン体濃度が上昇する。
ケトン負荷食は、寿命の制御との関連が指摘されている複数の代謝経路に関しては前項で例示したが、肝臓や骨格筋でのAMPKの活性化、IGFシグナル伝達の変化、mTOR経路の抑制など報告されている⁷⁾。
興味深いことにHDACの活性を抑制することでケトン負荷食に似た効果を得られることが明らかにされている。
たとえば、HDAC3は糖新生に関連した遺伝子発現促進することから、HDAC3をノックアウトしたマウスでは空腹時血糖値は低値となり、インスリンも低値を示す⁸⁾。
また、高脂肪食負荷と同時にHDAC阻害薬であるブチレートを投与した場合、代謝異常は見られず耐糖能が改善し、体重増加が抑制されることが示されている⁹⁾。

4. βOHBはHDAC阻害効果を介し抗酸化ストレス作用を発揮する

こからは前述のVerdin研究室から報告された論文に元づき、ケトン体が抗酸化ストレス作用を発揮するメカニズムの詳細について解説する。

生体内のケトン体は、アセト酢酸・アセトン・βOHBの3種類が知られているがVerdin博士はβOHBの構造がHDACの阻害薬として知られているプチレートと類似している点に注目した(図2)。
プチレートがHDAC阻害薬であることは広く知られているので、彼は、βOHBが内因性HDAC阻害作用を有するのではないかと予想した。
まず、ヒト由来の培養細胞であるHEK293細胞にβOHBを投与し、HDAC阻害作用が見られるかどうかを検討した。
具体的にはアセチル化されたヒストンを検出する抗体をを用いてウエスタンプロット法を用い、ヒストンのアセチル化が増加するかどうかを調べた。
HDAC作用が阻害されれば、ヒストンアセチル化は増加するはずである。
その結果、βOHBのは容量依存性にヒストンアセチル化を増強させればその結果も強く見られたのであるが、重要な点は、生理的な飢餓状況や激しい運動に認められる程度のβOHB血中濃度である1~2mMの投与でヒストンアセチル化が増強したという点である。
次に、このアセチル化の増加が本当にβOHBのHDAC活性阻害によるものかどうかを検討した。
その点を明らかにするためには、HDACそのものを精製し(これをコンビナント蛋白という)、試験管の中でβOHBと混ぜ合わせてその活性がそがいっされるかどうか確認する必要がある(このような実験をin vitoro実験という)。
その結果、β
OHBはHDAC1.3.4.の活性を明らかに阻害した(図3)。

ここまでの結果を統合すると、βOHBはその生理的血中濃度において、HDACの活性化を阻害してヒストンアセチル化を促すことが示された。
ところで、前述したアセト酢酸、βOHBと同様にエネルギー源として用いられるケトン体である。

アセト酢酸に関してもHDAC阻害活性が認められた。
その結果を発揮する濃度は生体内濃度に比べてはるかに高いもので、生理的な意義に乏しいと考えられた。
これまでのデータは、培養細胞や試験管内で得られたものである。
生体内でも同じメカニズムが存在するかどうかを明らかにするため、実際にマウスを飢餓状態やエネルギー制限下に置いた。
その結果、明らかなβOHBの増加が認められ、特に腎臓においてヒストンのアセチル化が増加していることが確認された。
面白いことに、飢餓やエネルギー制限とは無関係に、持続注入ポンプを用いてβOHBを投入した場合でも、同様の結果が得られた。
そこで、βOHBによるアセチル化の増加が最も強く認められた腎臓に着目し、そのメカニズムを検討した。
βOHBを投与したマウスと、コントロールとして生理食塩水を投与したマウスのそれぞれの腎臓からメッセンジャーRNAを抽出し、マイクロアレイ法を用いて比較検討することでβOHB投与によってどの遺伝子が多く発現するようになったかを調べた。
その結果、酸化ストレスに対する応答遺伝子であるFoxo3aやMt2などの発現が増加していることが明らかとなった。
前項で述べたように、ヒストンのアセチル化は遺伝子の発現を制御している。
それでは、これらの発現が上昇している遺伝子が巻き付いているヒストンは、アアセチル化が変化しているのだろうか?
遺伝子のオンとオフを決定する重要な部分は、プロモーター領域といわれる部分である。
そのプロモーター領域のアセチル化が増加していれば、その遺伝子がオンになり、発現が上昇することになる。
予想されるように、βOHB投与によってこれらのプロモーター領域のヒストンアセチル化が増加していることが明らかとなった。
これまでの結果を統合すると。βOHBがHDACの活性を制御すること、またβOHBが特定の遺伝子のプロモーター領域のヒストンアセチル化を増加させることが明らかとなった。
そうするとβOHB以外の方法でHDACの活性を抑えることでも、foxo3aやMt2の発現が増加するはずである。
実際、遺伝子ノックダウン法によってHDACの発現抑制した場合でも、Foxo3aやMt2の発現は増加が認められた。
以上の結果から、βOHBはHDACの活性阻害により、酸化ストレス応答性遺伝子である Foxo3aやMt2のプロモーター領域のアセチル化を促進して発現誘導に寄与していると考えられた。
最後に、βOHBがそれらの酸化ストレス応答性遺伝子を介してどのような生理的役割を果たしているかを検討した。
βOHBの投与によって上昇するFoxo3Aは、酸化ストレスがかかると発現が誘導され、ミトコンドリアスーパーオキサイドジムスターゼ(㎡n-SOD)やカタラーゼといった酵素の発現を促すことで、酸化ストレスに抵抗する。
そこで、強力な酸化ストレス誘導剤であるパラコートにより酸化ストレスにさらしたマウスに対し、βOHB投与を行った場合と、コントロールとして生理食塩水投与を行った場合に分けて、ストレスの影響がどう変化するかを比較検討した。
その結果、腎臓の酸化ストレスを反映するカルボニル化蛋白の蓄積が、βOHB投与を行ったマウスではコントロールに比べて顕著に抑制されたことが示された(図4)。
すなわちβOHBは酸化ストレスに対して保護的に作用することが明らかとなった。

終わりに
本稿では、βOHBによるHDAC作用の阻害効果を中心に、老化抑制のメカニズムについて概説したβOHBがHDAC阻害活性を発揮し、エピジェネティック制御を介して抗酸化ストレス作用をするという知見は、生理的な飢餓やエネルギー制限によって上昇するβOHBが内因性のHDAC阻害薬として多用することを初めて示したものであり、代謝状態の変化と、エピジェネティックな変化がどのように結びついているかを解明した重要な発見であると考えられる。
一方で、この報告で腎臓の酸化ストレス応答に対する検討を主としており、今後は他臓器においてもβOHBが同様の生理的作用を有するかどうか、酸化ストレスに対する保護効果以外にも、有益な効果が認められるかどうかの検討が必要である。
特に、高ケトン状態によってHDAC活性を抑えると、マウスの寿命は延びるのだろうか?
この検証には多大な投資を必要とするが、検討に値するきわめて興味深い課題であろう。

文 献
1) López-otin, C., Galluzzi, L, et al. :Metabolic Control of Longevity. Cell, 166(4) : 802~821, 2016.
2) Shimazu, T., Hirschey, M. D. et al. : Suppression of oxidative stress by β-hydoxybutyrate, an endogenous histone deacetyllase inhibitor. Science,339(6116):211~214, 2013
3) kaelin, w . G . Jr., Mcknight, S. L. : Influence of metabolism on epigenetics and disease. Cell, 153(1) : 56~69, 2013.
4) Choudhry, C.,Weinert, B. T. et al. : The growing landscape of lysine acetylation links metabolism and cell signalling. Nat Rew Mol Cell Biol, 15 (8) : 536~550, 2014
5) Newman, J. C., Verdin, E. :Ketone bodies as signaling metabolites. Trends Endocrinol Metab, 25 (1) : 42~52, 2014.
6)  Anson, R. M., Jones, B. et al. : the diet restriction paradigim : a brief review of the effects of every⁻other⁻day feeding.AGE, 27(1) : 17~25, 2005.
7) Mcdaniel, S. S., Rensing, N. R. et al. : The ketogenic(mtor)pathway . Epilepsia, 52(3) : e7~e11, 2011.
8) Knutson, S. K., Chyla, B. J. et al. : liver⁻specific deletion of histone deacetylase 3 disrupts metabolic transcriptional networks. Embo J, 27(7) : 1017~ 1028, 2008.
9) Gao, z., Yin, J. et al. : Butyrate improves insulin sensitivity and increases energy expenditure in mice. Diabetes,58(7) :1509~1517, 2009.

糖質制限食の有効性と課題

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知って得するケトン体の不思議 -ケトン体:敵か,味方か?-

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63p FORUM 食事 Diet
第1回 糖質制限食の有効性と課題

順天堂大学大学院
代謝内分泌内科 金澤 昭雄

はじめに
糖尿病の治療において、食事療法、運動療法が基本であることに疑いない。
これらの実践なくして良好な血統コントロールは得られない。
糖尿病の患者を最初に診断した時にはまず、医師は患者の標準体重から日々摂取する総エネルギー量を決定し、栄養士にその指導を依頼する。
摂取エネルギーが過度で肥満を合併した糖尿病患者がその指導を厳守することで減量に成功し、血統コントロールが改善する場合もある。
しかしながら、何度も栄養指導を行うものの血統コントロールが改善しないケースも日々、遭遇する。
こういった状況を鑑みると本当によいのかどうか疑問も残る。
近年、糖質制限食に関する情報がインターネットや書籍でもはんらんしている状況ともいえる。
糖尿病患者に限らず一般の人たちの関心も高くなっており、食事療法というものが大きな転換期を迎え、今まさにトピックといえるのではないでしょうか。
本稿では、我々の教室で日本人2型糖尿病を対象にし、糖質制限食の血統コントロールに対する効果を無作為比較試験¹⁾で検討したので紹介する。

患者背景と方法
すでにエネルギー制限食の栄養指導制限を受けたことがありながら。
なHbA1cが7.5以上で3ヵ月以上経過している。
20歳以上75歳未満の2型糖尿病患者を対象とした。
被験者は無作為に2群に割り付けられ、糖質制限群は糖質を1日当たり130gに制限する栄養指導を、開始時・2か月後・4か月後と集中的に受け、エネルギー制限群は28kcol/標準体重kgの栄養指導を同じタイミングで受けた。
なお、糖質制限群では総エネルギー摂取量については制限されなかった。
主要評価項目は6ヵ月間でのHbA1cでの変化量であり、体重、脂質、腎機能についてもあわせて検討を行った。
サンプルサイズの計算は北里大学北里研究所病院の山田 悟先生の先行研究²⁾を参考にして算出し、66人の患者を無作為に割り付けた。
エネルギー制限群で1人、糖質制限群で3人の脱落者があり、最終的にはエネルギー制限群で32人、糖質制限群で30人解析された。
に患者背景を示す。

結果 ~糖質制限の有効性
主要評価項目であるHbA1cの変化量は糖質制限群において有意に大きく(糖質制限群のHbA1c中央値8.0→7.3%、群比較p<0.01)、また、BMIについても同様であった(糖質制限群の体重中央値74.0→69.9kg、エネルギー制限群の体重中央値74.0→73.8kg、群間比較、p=00.2)。
脂質及び腎機能の6ヵ月での変化量は量群に変化はなかった。
エネルギー制限群では試験前後で糖質摂取量に変化を認めなかったが、糖質制限群では糖質摂取量はベースラインから-87g/日(中央値)まで減少し、エネルギー摂取量は1日で-406kcolが減少した。
また、両群において、タンパク質や脂質の量には変化がなく、糖質制限群でエネルギー摂取量が減少したのは糖質の制限によるものと考えられた。
糖質制限群では脂質やタンパク質の摂取量は自由としたが、肉と脂肪の量は増えておらず、日々の食事ではそれほど食べきれない状況も興味深い。
海外で行われたDIRECT試験³⁾と同様な結果といえる。
また、HbA1cの変化量を個々のデータでプロットすると(図1)、HbA1c変化量として-2.0以上と劇的な改善を示す例も認められた。
糖質制限食の血統コントロールに対する有効性が示された。
今回の我々の検討で糖質摂取量を1日130gとしたのは、海外の報告⁴⁾でも130gの糖質摂取がlow-carbohydrate dietのボーダーに位置し、それほど厳しい糖質制限にはあたらなく、実効性という点で継続しやすいと予想したためである。
その結果、糖質制限群で3例がドロップアウトになったが、2例のみ糖質制限の実施が困難であり、6ヵ月という短い期間ではあるが、アドヒランスという点ではそれほど悪くないと思われる。
糖質制限群では最終的に1日当たりのエネルギー摂取量が中央値で1,371kcolとなっており、対象患者が肥満を合併している例が多かったとはいえ、非肥満患者では低栄養のため筋肉量の低下などの好ましくない影響が出る可能性が出る可能性もあり、注意は必要である。



その後の追跡調査  ~糖質制限の課題~

前述したように栄養士が精力的に行った糖質制限指導は血糖コントロールの改善と体重減少という点において半年間の検討では有効であった。
しかし、生涯栄養指導を受け続けるわけにもいかず、栄養指導の介入がなくなったあとに患者がどのような食行動をとるかは重要なポイントである。
そこでわれわれは、試験終了後の患者の追跡調査をさらに半年間行い、エネルギー制限群は25人、糖質制限具では23人解析を行い、2016年の京都で行われた日本糖尿病学会年次学術集会において発表した。
結果はほとんどの患者が130gの糖質制限ができておらず、介入前の糖質摂取量に戻ってしまっていた(図2)。
さらに介入後に糖質制限群で有意に低下していたHbA1cは、介入中止後にはエネルギー制限群との差が消失していた(試験開始時と試験終了1年後でのHbA1cの変化量は、エネルギー制限群:-0.32%、糖質制限群-0.39%、群間比較、p=0.80)。
このように栄養士のの介入が継続されないと日々の生活で糖質制限を実践していくことに困難な状況も明らかとなった。
このような結果をふまえると、厳格な糖質制限は血糖コントロールにおいて大きな効果を発揮するのは間違いないが、その継続性において現実的ではないと考えられ、もう少しマイルドな糖質制限によって継続可能とする工夫が必要と考えられる。
しかしながら、これらについての詳細な検討はなく、今後の課題である。

文献
1)  Sato , J., knazawa, A et al : A randomized controlled trial of 130g/day Low⁻cardohydrate diet in type 2 diabetes with poor giycemic control.
Clin nutr, 2016 [Epub ahead of print] (doi  :  10.1016/j.clnu.2016.07.003)
2)  Ymada, Y.,uchida,J.:a non⁻calorie⁻restricted low⁻carbohydrate diet is effective as an alternative therapy for patients with type 2 diabetes Intern med,53(1) : 13~19, 2014.
3) Shai, Ⅰ., Schwarzfuchs, D et at. : Weight loss with a low⁻crebhydrate, Mediterranea, or low fat diet N Engl J Med, 359(3) : 229,~2008.
4)  Feinman, R, D, Pogozelski W. K. et al. : dietary cardohydrate restriction as the first approch in diabetes management  : critical review and evidence base.
Nutrition, 31(1) : 1~13, 2015

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