糖尿病はよく見られる代謝疾患の一つで、肥満から生じることが多い

今日は「ストライヤー生化学」第7版   p744   から糖尿病に関する記述をご紹介します。
(リンクや色文字そしてカッコにより補足しました。一部原文と異なりますので、原書をご確認ください。)

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27・3 ≪糖尿病はよく見られる代謝疾患の一つで、肥満から生じることが多い

体重の調節の全体像がつかめたところで、行動、遺伝、あるいはその両方で調節がうまくいかないと生化学的にどうなるかを考えよう。

調節の失敗の結果としてもっとも一般的なのは肥満、すなわち過剰なエネルギーがトリアシルグリセロール(トリグリセリド)の形で蓄えられた状態である。
過剰に摂取された食物は、最終的にはすべてトリアシルグリセロールに変換されてしまうことを思い浮かべてほしい。
人は、グリコーゲンをおよそ1日分に相当する量に維持し、その分を補充した後は、余分な糖質を脂肪酸に変えてトリアシルグリセロールに変換する。
アミノ酸は全く貯蔵されないので、過剰なアミノ酸も結局は脂肪へと変換される。
つまり、食物の種類には関係なく、過剰に摂取すれば脂肪の貯蔵が増える。
カロリー恒常性の破壊がもたらす影響について、まず糖尿病(daiabetes mellitus (ダイアビーティス・メリタス)普通は単にdaiabetesという)から考えてみよう。
糖尿病は燃料の利用の仕方にひどい異常がある複雑な病気で、肝臓でグルコースが過剰に生産され、他の臓器ではグルコースの利用が低下する。
糖尿病の発症率は人口の5%で、世界で最も多く見られる代謝疾患であり、患者は数億人に上る。
1型糖尿病(type 1 daiabetes)はインスリンを分泌する膵臓の自己免疫機序による破壊が原因で起こり、通常は20歳前に発症する。
1型糖尿病は、インスリン依存性糖尿病とも呼ばれる。
インスリン依存性とは、患者が生きていく為にインスリン投与を必要とすることを意味している。
これに対し大多数の糖尿病では、血中のインスリン濃度は正常かむしろ高いのだが、患者はインスリンに対して全く応答を示さないインスリン抵抗性(insulin resistance)という特徴を示す。
この型の糖尿病はⅡ型糖尿病(type Ⅱ daiabetes)とよばれ、インスリン依存性糖尿病よりも一般的に発症時期が遅い。Ⅱ型糖尿病は糖尿病の90%以上を占め、世界で最も多くみられる代謝疾患である。
米国では、失明、腎不全、指や足の切断のおもな原因となっている。
肥満はⅡ型糖尿病を発症する大きな原因の一つである。

 

インスリンは筋肉で複雑なシグナル伝達経路を開始する

インスリン抵抗性の生化学的原因はなんだろう。
インスリン抵抗性がどのような仕組みで膵臓のβ細胞の機能不全を引き起こしⅡ型糖尿病に結び付くのだろう。
肥満はこの過程の進展にどう関わるのだろう。
これらの疑問に答え、代謝疾患の謎を解き明かす手始めに、インスリンによって調節される最大の組織である筋肉におけるインスリンの作用機構を見ていこう。

 

正常な細胞では、インスリンが受容体に結合すると受容体は二量体を形成しチロシン残基を自己リン酸化する。(このとき二量体の各サブユニットが互いに相手をリン酸化する)。
受容体のリン酸化によって、IRS-1等のインスリン受容体基質(IRS・insulin receptor substrate)の結合部位が生じる。
すると受容体のチロシンキナーゼ活性によってIRS-1がリン酸化され、インスリンシグナル伝達経路が開始する。
リン酸化されたIRS-1は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)に結合して活性化する。PI3Kは、ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸(PIP2)を二次メッセンジャーであるホスファチジルイノシトール3,4,5-トリスリン酸(PIP3)へと変換する反応を触媒する。PIP3がホスファチジルイノシトール依存性プロテインキナーゼ(PDK)を活性化し、これがさらに他のキナーゼを活性化する。
中でも特に重要なのが、Aktと呼ばれるプロテインキナーゼB(PKB)である。
プロテインキナーゼAktは、GIUT4を含む小胞の細胞膜への移行を促進するので、グルコースが血中からよりしっかりと吸収されることになる。
〇しかもAkt はグリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3)をリン酸化して阻害する。 〈GSK3前に述べたようにグリコーゲンシンターゼを阻害する。〉
したがって、インスリンはグリコーゲンシンターゼの活性化をも引き起こし、グリコーゲン合成を促進する。

 

シグナル伝達経路の例にもれず、インスリンのシグナル伝達カスケードのスイッチも、オフにできなければならない。
インスリンのシグナル伝達を抑制する方向に働く過程は3種類ある。

〇第一に、ホスファターゼがインスリン受容体を活性化して、鍵となる二次メッセンジャーを破壊する。チロシンホスファターゼ(tyrosine phosphatase)のPTP-1Bがリン酸基を除去して受容体を活性化する。
二次メッセンジャーであるPIP3は、PTENホスファターゼ(PTEN phosphatase; PTEN=phosphatase and tensin homolog)によって脱リン酸され、不活性され、二次メッセンジャーとしての作用を持たないPIP2が生成する。

〇第二にIRSタンパク質は、特異的Ser/Thrキナーゼによってセリン残基がリン酸化される、このキナーゼは過剰な栄養摂取や他のストレスシグナルによって活性化され、インスリン抵抗性の発生に関わっている可能性がある。

〇最後に、以前に述べた調節たんぱく質SOCSがインスリン受容体やIRS-1に結合し、それらのプロテアソーム複合体による分解を促進する。

ストライヤーからの掲載はここまでです。
後半の用語を少しまとめましたので、検索などの参考としてください。

・ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)Phosphatidylinositol 3- kinase
・ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸(PIP2)Phosphatidylinositol 4,5bisphosphate
・ホスファチジルイノシトール3,4,5-トリスリン酸(PIP3)Phosphatidylinositol 3,4,5 trisphosphate
・ホスファチジルイノシトール依存性プロテインキナーゼ(PDK)Phosphatidylinositol dependent protein kinase
・Aktと呼ばれるプロテインキナーゼB(PKB)Protein kinase B
・グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3)glycogen synthase kinase 3

 

 

※続きは次回掲載します。
●Ⅱ型糖尿病の前には、メタボリックシンドロームが見られることが多い。
●筋肉の過剰な脂肪酸が代謝を変化させる。
●筋肉のインスリン抵抗性が膵臓の機能不全を悪化させる。
●Ⅰ型糖尿病の代謝異常は、インスリンの不足とグルカゴンの過剰によって起こる。

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