炭水化物成分表解説

日本食品標準成分表2015年版(七訂)炭水化物成分表編 -2015/12/25  文部科学省 (著)

上記書籍の解説文が文部科学省のサイトで公開されています。
http://goo.gl/yOsd2I

抜粋して投稿します。

解 説

1 炭水化物

国際純正・応用化学連合(IUPAC)の炭水化物命名法7)の定義では、炭水化物は、単糖類、オリゴ 糖類(単糖がグリコシド結合で結び付いたもので、特定の構造をもつものと定義している)及び多 糖類(オリゴ糖類との境界は曖昧で、特定の重合度によって定義してはいない)並びに単糖類に由 来する物質、例えば、カルボニル基が還元されたアルディトール類、1 個以上の末端基が酸化され たカルボン酸類、1 個以上の水酸基が水素、アミノ基、チオール基あるいは類似のヘテロ原子含有 基で置換した物質及びそれらの化合物の誘導体を含む。

この定義に従えば、本成分表に収載している有機酸のうちグルコン酸は、ぶどう糖の1 位のアル デヒド基が酸化されたカルボン酸であり、炭水化物である。
食品成分委員会は、この定義があるこ とを認識しているが、食品分野における一般的な取り扱いに従い、グルコン酸を有機酸とみなして いる。

炭水化物は、化学式では、一般にCm(H2O)nで表される。FAO/INFOODS の指針(2012)4) では、 次の式を用いて、差引き法により求めた炭水化物のTagname(FAO/INFOODS が定めている食品成分識別子)はCHOTDF である。

可食部100 g 中の炭水化物(CHOTDF)
= 100 −(可食部100 g 中の[水分 + たんぱく質 + 脂質 + 灰分 + アルコール]のg 数)
しかし、成分表2015 年版の炭水化物は、酢酸等の他の成分も差し引いて計算しているため、 CHOTDF の定義には該当しない、わが国の食品成分表固有の成分項目である。

FAO/INFOODS では、成分項目として、(差引き)炭水化物を用いずに、利用可能炭水化物と食物 繊維とを用いるよう勧めている。

食品成分委員会が成分表2015 年版でこの考え方を採用しなかった
理由は、
○コーデックス委員会において食物繊維の定義が決定され、また定義に沿った分析法が決定 されたことから、今後速やかに、現在の食物繊維の収載値をコーデックス委員会の定義に沿った収 載値に変更する予定があること、
○食物繊維の収載値が変更されるまでの比較的短期間の利用のため に、エネルギーの計算方法を変更し、食品のエネルギー値を変更することは、国の施策の継続性を 考慮した場合に好ましくないと判断した
こと等による。

「第1 章 説明」の2 の1) の(3) において、「成分表2015 年版の炭水化物の成分値と炭水化物成 分表2015 年版の成分値を比較することはできない」とした理由は次のとおりである。

○食品成分表の収載値は、成分値が様々な要因で変動するため、食品によっては、異なる年次にわ たり収集した分析値を基に決定する。

○年次により成分含量が変動することも多いので、その変動を 補正しなければならない場合が多い。
実際には、無機質や水溶性ビタミン類の場合には、水分を用 いて、試料の水分の分析値を成分表の収載値になるように補正係数を定め、これを試料の分析値に 乗じて補正する。

脂肪酸や脂溶性ビタミン等の脂溶性物質の場合には、脂質を用いて、試料の脂質の分析値を成分 表の収載値になるように補正係数を定め、これを試料の分析値に乗じて補正する。

アミノ酸組成の場合には基準窒素を用いて、試料の基準窒素の値を成分表の基準窒素の値になる ように補正係数を定め、これを試料の分析値に乗じて補正する。

利用可能炭水化物、糖アルコール及び有機酸の場合には、試料の差引き利用可能炭水化物の量を 求め、これを成分表の差引き利用可能炭水化物の量になるように補正係数を定め、これを試料の分 析値に乗じて補正するのが望ましいが、上に述べたように現行の食物繊維の分析法は不適切である と考えられるようになりコーデックス委員会の定義に沿った分析法を用いた分析値も未だないた め、この方法による補正はできない。

そこで、本成分表では、水分を用いて、試料の水分の分析値が成分表の収載値になるように補正 係数を定め、これを試料の分析値に乗じて補正している。

この方法は、アミノ酸や脂肪酸の補正方 法に比べると、補正の妥当性が低いと判断されるため、成分表2015 年版の炭水化物の成分値と炭水化物成分表2015 年版の成分値は比較できないとした。

なお、FAO報告書(2003)では、利用可能炭水化物について、差引き法による利用可能炭水化物 も「許容し得る方法」としている。

このことに関し、平成22 年度炭水化物量妥当性検証調査3)では、
炭水化物及び利用可能炭水化物の差引き法による成分値と直接分析による成分値の間には極めて強 い正相関が認められると報告している。

このことから、本成分表に収載されていない食品であっても、成分表2015 年版に収載している炭 水化物の成分値は、直接分析による炭水化物の成分値と正相関があるものと推察できる。

2 利用可能炭水化物

FAO/INFOODS のTagname は、個別の成分を直接分析して、合計した場合はCHOAVL、差引き法 により求めた場合はCHOAVLDF である。FAO/INFOODS の差引き法による利用可能炭水化物(CHOAVLDF)は次の式を用いて計算する。

可食部100 g 中の差引き法による利用可能炭水化物(CHOAVLDF)(g)
= 100 −(可食部100 g 中の[水分 +たんぱく質 +脂質 +灰分 +アルコール +食物繊維]のg 数)
=可食部100 g 中の(差引き法による炭水化物 – 食物繊維)のg 数)

この考え方は、四訂日本食品標準成分表における糖質(Non-fibrous carbohydrates)の求め方に類似 しているが、糖質は、差引き法による炭水化物(Carbohydrate by difference)から繊維(Fiber)、アル コール、タンニン、カフェイン、酢酸等を差し引いて求めていたため、FAO/INFOODS の差引き法 による利用可能炭水化物(CHOAVLDF)ではない。

また、成分表2015 年版の炭水化物から食物繊維を差し引いたものを利用可能炭水化物とみること もできるが、前述の炭水化物の定義の違いからこの値もFAO/INFOODS が定義する差引き法によ る利用可能炭水化物(CHOAVLDF)とは一致しない。

なお、FAO/INFOODS の指針(2012) では、差引き法による利用可能炭水化物のエネルギー換算 係数は17 kJ/g(4 kcal/g)であり、食物繊維のエネルギー換算係数は8 kJ/g(2 kcal/g)である。

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