運動は、細胞を生化学的に良い方向に変化させる

ストライヤーの生化学 第7版 から
(リンクや色文字そしてカッコにより補足しました。一部原文と異なりますので、原書をご確認ください。)

p750    27・4    《運動は、細胞を生化学的に良い方向に変化させる》

運動と健康的な食事の組み合わせは、糖尿病の最も効果的な治療法の一つだが、それだけでなく、冠動脈疾患、高血圧、うつ、癌を始めとするさまざまな病気に対しても、最良の治療法となる。糖尿病の場合、インスリン抵抗性になった人やⅡ型糖尿病患者でも、運動によってインスリン感受性が高まる。
この有益な効果が生じるのはなぜだろう。

筋肉の活動によってミトコンドリア生合成が促進される

運動の際、筋肉が運動ニューロンから神経インパルスを受け取って、収縮するよう刺激を受けると、筋小胞体からカルシュウムが放出される。
カルシュウムは、後に35章で説明するように、筋収縮をひき起こす。
前に述べたように強力な二次メッセンジャーであり、多くの場合カルシュウム結合タンパク質カルモジュリンと協力して働く。二次メッセンジャーとしてのカルシュウムの作用には、カルモジュリン依存性プロテインキナーゼなど、さまざまなカルシュウム依存性酵素を刺激する働きがある。
カルシュウム依存性酵素は、AMPKと同様に、つぎには特定複写因子複合体を活性化する。
第29章、第31章で見ていくが、転写因子とは遺伝子の発現を抑制するタンパク質である。
特に2種類の遺伝子発現パターンが、定期的な運動に応じて変化する。
定期的な運動は、β酸化を行う酵素など、脂肪酸代謝に必要なタンパク質の生産を促進する。
興味深いことに、脂肪酸それ自体が、脂肪酸代謝系の酵素の転写を活性化するためのシグナル分子として働く。
さらに、カルシュウムシグナルカスケードによって活性化された別の転写因子群が代謝をプログラムし直し、それによってミトコンドリアの生成が亢進する。
脂肪酸酸化能力の上昇とミトコンドリアの増加が合わさって、脂肪酸の効率よい代謝が可能になる。
前に述べたように過剰な脂肪酸はインスリン抵抗性につながるので、逆に、効率の良い脂肪酸代謝はインスリン感受性を高めることになる
実際、トレーニングを積んだ運動選手の筋肉は、高濃度のトリアシルグリセロールをを含んでいても、インスリンに対する高い感受性を維持している。

運動時の燃料の選択は活動と時間によって決まる

ここまで異なった条件下でのエナルギー利用を見てきたが、このテーマに従って、今度は、様々な運動を行うときに燃料がどのように使われるかを考えてみよう。
嫌気的な運動、例えば短距離走をしているときに使われる燃料は、長距離走のような好気的な運動で使われる燃料とは異なる。
このように運動の種類が異なるときの燃料の選択から、エナルギー変換と代謝統合の多くの面が説明される。
化学エネルギーを運動エネルギーに直接変換するタンパク質であるミオシンは、ATPを直接の原動力とする。(第35章)
しかし、筋肉中のATP量は少ないので、筋肉からの出力とそれに応じて決まる走行速度は、他の燃料からのATP産生速度によって左右される。表27・3に示すように、ホスホクレアチン(phosphcreatin)〔クレアチリン酸(creatin phosphate)とも言う〕は、高エネルギーをもつリン酸基をADPに素早く移してATPを産生するが、ホスホクレアチンの量もATPと同様に限られている。
ホスホクレチンとATPは、激しい筋収縮の5~6秒分のエネルギーを賄える。
そのため、短距離走で最高速度が維持できるのは5,6秒だけなのである。
したがって100m走の勝者となるのは、初速を最大にするとともに速度の最低を最小限に抑えられる走者ということになる。
約10秒間走る間に、筋肉のATP濃度は5.2mMから3.7mMへ、ホスホクレアチン濃度は9.1mMから2.6mMへと低下する。
失われたATPとホスホクレアチンを補充するのには、嫌気的な解糖によって供給される燃料が使われる。
100m走のエネルギー源は、貯蔵されているATPとホスホクレアチン、筋グリコーゲンの嫌気的解糖である。
筋グリコーゲンの乳酸への変換では、ホスホクレアチンからのリン酸基転移に比べると、かなり大量のATPが得られるが時間が掛かる。
嫌気的な解糖のため、血中の乳酸濃度は1.6mMから8.3mMへと上昇する。
激しく活動する筋肉からはH⁺が放出され、それに伴って血液の㏗は7.42から7.24へと低下する。
1000m走(約132秒)の場合には、このような速度は二つの理由で維持できない。
第一にホスホクレアチンが数秒で使い果たされてしまうからである。
第二に生成する乳酸によってアシドーシスが起こってしまうからである。
したがってこれに代わる燃料源が必要になる。
筋グリコーゲンがCO₂にまで完全に酸化されればエネルギー収量はかなり大きく増加する。
この好気的過程は嫌気的解糖よりもかなり遅いが、走る距離が長くなるにつれ、好気的呼吸すなわち酸化的リン酸化の重要性が増す。
例えば1000m走で消費されるATPの一部は酸化的リン酸化から得られるに違いない。
解糖に比べると酸化的リン酸化ではATPがゆっくり生成するので、必然的に1000m走の速度は100m走よりも遅くなる。世界記録の100m走の約10.4ms⁻¹に対し1000m走は約7.6ms⁻¹である。
マラソン(42.195km)ではまた違った燃料の選び方が必要で、筋肉、肝臓、脂肪組織の共同作業が特徴である。
肝臓のグリコーゲンはすぐに頼れるエネルギー貯蔵庫として筋肉のグリコーゲンを補う働きをする。
しかし、約2時間ものこの過酷な競技に必要な150molのATPを補うには、全身の貯蔵グリコーゲン(最大でATP 103mol)でも足りない。
脂肪組織の脂肪の分解で得られる脂肪酸を酸化すればはるかに大量のATPが得られるが、ATP生成速度は最高でもグリコーゲン酸化よりも遅く、ホスホクレアチンからの生成速度の1/10以下である。
このように大量の貯蔵庫からのATP生成は、容量の限られた貯蔵庫からに比べてはるかに遅く、好気的運動と嫌気的運動の速度が違う原因となる。
長距離走には脂肪酸からのATP生成が不可欠である。
長距離走のような運動では脂肪が速やかに消費されるので、インスリン抵抗性を示す人に好気的運動を長くつづけるのが有益なのはそのためである。
しかし、優れたマラソンランナーの場合、脂肪だけを燃焼源にするわけにはいかない。
研究の結果明らかになっているのだが、筋肉のグリコーゲンが使い果たされると、筋肉の出力は最大50%に低下してしまう。
脂肪が十分に得られているにもかかわらず出力が低下するということは、脂肪で賄えるのは好気的活動の最大値の50%に過ぎないことを意味する。
脂肪酸酸化はグリコーゲン酸化よりもはるかに遅いので、脂肪酸酸化で得られるATPですべてを賄おうとすると、マラソンはおよそ6時間かかってしまう。
優れたマラソンランナーは、グリコーゲンと脂肪酸をほぼ同量ずつ消費して、100m走の速度の約半分に当たる5.5ms⁻¹という平均速度を実現する。
どうすれば、これらの燃料を最適な混合比で消費できるのだろう。
血糖値が低くなるとグルカゴン/インスリン比が高くなり、脂肪組織から脂肪酸が動員される。
脂肪酸はすぐに筋肉に入り、そこでβ酸化によってアセチルCoAへ、ついでCO₂へと分解される。
アセチルCoA濃度が上昇するとピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体の活性が下がり、ピルビン酸からアセチルCoAへの変換がが妨げられる。
つまり脂肪酸酸化によってクエン酸回路と酸化的リン酸化に進むグルコースが減少する。
こうすると、マラソン終了時にも十分使えるだけの量が残るようグルコースが節約されることになる。
両方の燃料を同時に使うことで、グリコーゲンを使い果たしてから脂肪酸酸化を始めた場合よりも、高い平均速度が得られる。
グリコーゲンが枯渇したところで糖質の多い食事をとると、グリコーゲンの貯蔵が速やかに回復する。
さらに、糖質の多い食事をとっている間もグリコーゲン合成は続くので、グリコーゲン貯蔵量が正常値よりはるかに多くなる。
この現象は、❝筋グリコーゲンの超回復❞と呼ばれ、普通にはカーボローディングと呼ばれることの方が多い。

低糖質牛バラカレー🍛ラタトゥイユ添え

今日の低糖質カレーは、低糖質麺をご飯粒の大きさに刻みライスの代わりにしました。

小麦ふすま・小麦ファイバー・こんにゃく粉の麺


カレーは自家製低糖質カレーを使いました。

低糖質牛筋肉カレーライスもどき


そして作り置きしているラタトゥイユを添えて。

ラタトゥイユ

低糖質麺をご飯粒の大きさに刻みます。

刻んだ低糖質麺でピラフを作ります。
材料を揃えます。(ネギ・合わせ醤油・バター・カレー粉・全卵・乾燥パセリは仕上用)

フライパンでいため、最後に卵と合わせます。

大きめの器に盛り付けます。

ラタトゥイユとカレーを盛り完成です。チーズはおまけ。

総糖質量約15g・総質量500g

血糖値測定
pm7:59   117mg/dl

5分で完食。

pm8:58  111mg/dl

pm9:59  121mg/dl

低糖質カレー(水溶性)と低糖質麺(不溶性)それぞれ食物繊維が多く含まれた自家製の食品を使いました。
もし市販のものを食べたとしたら糖質は70gを超えます。
血糖値は300mg/dlを超えていたでしょう。

私は本当にⅡ型糖尿病なんです。

低糖質チャーシュー麺🍜

自家製低糖質麺でチャーシュー麺 を作りました。
低糖質麺の作り方は過去の投稿を参考にしてください。

真夜中の血糖値測定

まずチャーシューを作ります。
今回は、真空低温調理で3日(72時間)調理後小分けし、冷凍したイベリコ豚肩ロースを使いました。
以前の投稿を参考にしてください。

真空低温殺菌調理(イベリコ豚肩ロース肉)


調理した肉150gを小分けにして冷凍してあります。

肉を解凍し合わせ調味料をいれ真空包装します。
2時間ほどで浸透圧で味がしみこみます。


フライパンで軽く焼き目がつくくらいに焼きます。


そぎ切りにします。
具材を全部揃えます。(半熟卵・生若布・しらがネギあおネギ)

麺とスープを別々に温めます。

器に盛り付け、具をのせて完成です。

そして血糖値測定。
10:14  122mg/dl

11:16  124mg/dl

0:16  135mg/dl

食後1時間の血糖値はほとんど変わりません。
不溶性食物繊維の量が結構多いのが原因かと思います。

2時間後13mg/dl上昇ですので今回の糖質制限食試験は合格でしょう。
ちなみに総糖質量は、約12gです。

今回のチャーシュー麺には多量の食物繊維(主に不溶性)そしてタンパク質も豊富に含まれています。
食物繊維が血糖値上昇の抑制に深くかかわっているように思われます。

糖質ゼロコンニャク麺もいいのですが、どこか物足りなく長続きしません。
カロリーとタンパク質と食物繊維そして少量の糖質の含まれた今回の低糖質チャーシュー麺、結構いけると思いました。

小麦ふすま・小麦ファイバー・こんにゃく粉の麺

今日は小麦ふすま・小麦ファイバー・こんにゃく粉の麺を作りました。

材料質量g糖質g/100g糖質量g
小麦ふすま(ユウテック)3010.23.06
小麦ファイバー(ookura)601.40.84
こんにゃく粉355.41.89
小麦グルテン(小川製粉)
12524.130.125
食塩400
16000
4148.6735.915
製麺後3728.6732.27
茹で上がり6205.2032.27
茹で上がり1人前1555.208.06


水を除く材料を全部合わせます。

PHILIPSのヌードルメーカーに合わせた粉を入れ、水を入れスタートします。


麺が出てきました。こんにゃく粉が入ると少し縮れます。
小麦ふすまですので日本そばのような色です。


沸騰した湯で約5分ゆでます。


茹で上がったら冷水でしっかり洗い料理に使います。
残った麺はポリ袋に入れ冷蔵庫で保管できます。また冷凍もできます。

またアップします。

グルコースは食事の炭水化物から産生される

食事により摂取された炭水化物がグルコースとして体内に取り込まれる過程を記事にします。
以前(2015/1/6)の投稿記事もご覧ください。

砂糖・糖類そして糖質について1~5

小糖類・二糖類は、小腸でαグルコシダーゼという酵素の働きにより単糖となり、グルコースとして体内に吸収されます。
そこで開発された、αグルコシダーゼ阻害薬についても記載します。

まず、ストライヤーの生化学 第7版 p413
から一部ご紹介します。
(リンクや色文字そしてカッコにより補足しました。一部原文と異なりますので、原書をご確認ください。)

グルコースは食事の炭水化物から産生される

私たちは、一般に、食事において多量のデンプンと少量のグリコーゲンを摂取する。
これらの炭水化物複合体は、腸管からの吸収と血中での輸送のために、より単純な炭水化物へと変換させる必要がある。
デンプンとグリコーゲンは、その大部分が膵臓の酵素であるα-アミラーゼ(α-amylase)によって、またその一部は唾液のα-アミラーゼによって消化される。
アミラーゼはデンプンとグリコーゲンのα1→4結合を切断するが、それらのα1→6結合を切断しない。
その代謝物は、二糖類または三糖類のマルトース(麦芽糖・二糖類)とマルトトリオース(三糖類)である。α1→6結合をもつため消化されないそれらの物質は、限界デキストリン(limit dextrin)と呼ばれる。
マルターゼ(maltase)はマルトースを2分子のグルコースに切断するが、一方、α-グルコシダーゼ(α-giucosidaase)は、アミラーゼによる消化を免れたマルトトリオ―スと他のオリゴ糖を消化する。
α-デキストリナーゼ(α-dextrinase)は、限界デキストリンをさらに消化する。
マルターゼとαグルコシダーゼは、腸管細胞の表面に局在する。
野菜に由来するスクロース(ショ糖)をフルクトース(果糖)とグルコースに分解するスクラーゼ(sucrase)も同様である。
ラクターゼは(lactase)は、乳糖のラクトースをグルコースとガラクトースに分解するのに重要な酵素である。単糖類は腸管壁細胞に輸送され、さらにそこから血中に輸送される。

ここまでが、ストライヤーの生化学 第7版 p413からの抜粋です。


【α-グルコシダーゼ阻害薬】

食事により摂取された炭水化物は、小腸においてαアミラーゼによって小糖類(オリゴ糖)・二糖類に分解さ れる。
小糖類(オリゴ糖)・二糖類は、小腸膜上(刷子縁膜上)に存在するα-グルコシダーゼ、マルターゼ、ラクターゼ、スクラーゼ、サッカラーゼ、グルコアミラーゼにより、単糖類(グルコース、フルクトース、ガラクトース)に分解される。

グルコースは、小腸粘膜細胞上に存在するNa・グルコース共輸送体1(SGLT1)によってNaと共に細胞内へ輸送される。
α-グルコシダーゼ阻害薬が小腸内に存在すると、α-グルコシダーゼ阻害薬がα-グリコシダーゼに結合する。

αグルコシダーゼ阻害薬は上記の作用によって、二糖類の分解を阻害する。
分解が阻害された二糖類は、回腸まで輸送され、この部位において分解されて単糖類となり、吸収される。
したがって、食後の急激な血糖値の上昇(グルコーススパイク)は抑制される。
また、血糖値が徐々に上昇するため、インスリンもそれに応じて徐々に分泌されることになり、高インスリン血症が改善されることになる。

α-グルコシダーゼ阻害薬の種類や副作用についてはこちらのサイトが参考になります。

α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)

グルコバイ(アカルボース)

ベイスン(ボグリボース)

セイブル(ミグリトール)

 

参考にさせていただいたサイト
http://www.amano-enzyme.co.jp/jp/enzyme/2.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%BC
https://katosei.jsbba.or.jp/download_pdf.php?aid=135
https://ja.wikipedia.org/wiki/%CE%91-%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%82%B7%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%BC
http://kusuri-jouhou.com/medi/diabetes/
http://polaris.hoshi.ac.jp/openresearch/index.html

インクレチンとDPP4阻害薬

前回、グルコースが膵β細胞に作用してインスリンが分泌される仕組のほかに、インクㇾチンにもインスリン分泌を促す作用があることを記載しました。

インスリン分泌の仕組み

今回は主にインクㇾチン、関連してDPP4阻害薬・GLP-1受容体作動薬について記載します。

経口投与されたグルコースは小腸のL細胞に作用してGLP-1 (glucagon-like peptide-1)を分泌し、またK細胞に作用してGIP (glucose-dependent insulinotoropic polypeptide)を分泌する。
これらGLP-1 、GIPを総称してインクレチンという。

インクレチンは膵β細胞内においてcyclic AMPを産生し、protein kinase Aを介して電位依存性Ca2+チャネルをリン酸化することによってCa2+イオンの流入を促進する。
よって、食後高血糖になる場合、2つの経路によってインスリンが分泌されることになる。
一つはグルコースによってATPが産生され、ATP感受性K+チャネルが閉鎖することによって脱分極し、電位依存性Ca2+チャネルが開口してCa2+イオンが流入する経路。
もう一つは、インクレチンによってcyclic AMPが産生され、上述した過程により電位依存性Ca2+チャネルが開口してCa2+イオンが流入することによってインスリンの分泌が促進されることになる。

DPP-IV阻害薬】

インクレチンはDPP-IV (dipeptidyl peptidase-IV) によって分解され、血中半減期は5分程度である。
このDPP-IVを阻害して血中のインクレチン濃度を上げるとインスリン分泌が増加するだろうと云う概念でDPP-IV阻害薬が開発された。

インクレチンは、膵β細胞内においてcyclic AMPを産生するために、膵β細胞の保護作用、増殖促進作用を示す。
GLP-1あるいはGIPによって産生されたcyclic AMPはプロテインキナーゼA (PKA)を活性化し、PKAはCREB (cyclic AMP応答タンパク質)を活性化することによってアポトーシス(積極的、機能的細胞死)を誘発するカスパーゼ3(caspase 3)を抑制し、膵β細胞の死が抑制されることになる。
また、プロテインキナーゼA (PKA)は、MAPキナーゼなどを活性化して膵β細胞の分化・増殖を促進する。
一方、プロテインキナーゼA (PKA)は、CREB (cyclic AMP応答タンパク質)を活性化して、IRS2の発現を促進し、PI3K/Aktを介して、PDX-1 (pancreatic duodenal homeobox-1)を活性化して膵β細胞の分化・増殖を促進する。

○GLP-1とGIPは、いずれもインスリン分泌を促進するが、少し作用が異なっている。
●GLP-1は、インスリン分泌促進作用、膵臓β細胞増殖作用、膵β細胞死抑制作用、グルカゴン分泌抑制作用、胃排泄能抑制作用、中枢性食欲抑制作用を示す。
●GIPは、インスリン分泌促進作用、膵臓β細胞増殖作用、膵β細胞死抑制作用を示すと共に、脂肪細胞に作用して脂肪の取り込みを促進し、肥満を誘発する作用を示す。

GLP-1受容体作動薬】

GLP-1はDPP-IVによって分解され、血中半減期は5分程度であることから、このDPP-IVを阻害して血中のインクレチン濃度を上げるとインスリン分泌が増加するだろうと云う概念でDPP-IV阻害薬が開発されたことは上記した。

GLP-1と同じような作用をする薬を外から投与すれば、すい臓からインスリンが分泌される過程を促進できることが分かる。
GLP-1そのものは体内で素早く分解されるため、分解されにくいようにGLP-1の構造を少し変えることで糖尿病治療薬が創出された。
そして、GLP-1受容体に結合する薬物がGLP-1受容体作動薬として開発された。
(薬の詳細や副作用については、こちらのサイトを参考に)

これらの薬剤は、体内の血糖値に応じて作用し、高血糖の時にのみ膵臓からのインスリン分泌を促進するため、インスリン治療に比べて低血糖発現率が低いと言われている。
また、いずれも体重減少や膵β細胞の保護作用を示すことも報告されている。

※参考にしていただきたい図
https://www.google.co.jp/search?q=dpp4%E9%98%BB%E5%AE%B3%E8%96%AC%E3%81%A8%E3%81%AF%E5%9B%B3&biw=1600&bih=751&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ved=0ahUKEwi3hrXUl_PQAhWEvrwKHWcfDqgQsAQILA

参考にさせていただいたサイト
http://kusuri-jouhou.com/medi/diabetes/dpp4.html
http://polaris.hoshi.ac.jp/openresearch/index.html

インスリン分泌の仕組み

食事によって炭水化物が消化・吸収され、血中グルコース濃度が上昇する。
このグルコースが各組織へ運ばれてエネルギー源となるが、各組織へグルコースを運ぶホルモンはインスリンのみである。(グルコーストランスポーターを介する(glucosetranceporter・GLUT1~14))

GLUT2を介して膵β細胞内へ流入したグルコースはグルコキナーゼによってリン酸化され、G-6-Pとなり、その後、解糖系を経てピルビン酸となり、ピルビン酸はミトコンドリア内へ入り、TCA回路を経て、ATP(アデノシン三リン酸)が産生される。
その結果、ATP/ADP(アデノシン二リン酸)比が上昇し、このATPがATP感受性K+チャネルを閉鎖する。
通常、ATP感受性K+チャネルはATP/ADP比の上昇によって閉鎖される。

膵β細胞内は、-70mV程度マイナスとなっている。
プラスに荷電しているK+イオンが外へ流出する分、細胞内はマイナスの方へ傾く。
しかし、ある程度マイナスになると、K+イオンが引き寄せられて平衡状態に達する。この平衡状態の電位が-70mV程度となる。
ATP感受性K+チャネルが閉じて、プラスに荷電したK+イオンが外へ流出しなくなると、細胞内はプラスの方向へ傾く。これを脱分極という。
この脱分極は、グルコース濃度の上昇から数分以内に起こる。-30~-50mV程度まで脱分極すると、それに応じて電位依存性Ca2+チャネルが開き、スパイク電位を発生する。
電位依存性Ca2+チャネルからCa2+ イオンが細胞内へ流入する。
インスリン分泌にはCa2+ 流入が必須である。
Ca2+ イオンは、インスリン分泌顆粒を刺激してインスリン顆粒の開口放出を引き起こす。
分泌顆粒が開口放出する過程には、数種のタンパク質が関与する。

グルコース刺激以外でもインクレチンが細胞内のcAMP(サイクリックアデノシン一リン酸)濃度を上昇させ、PKA(protein kinase A)によって電位依存性Ca2+チャネルがリン酸化されてCa2+が細胞内へ流入してインスリン分泌を促すことが考えられる。
電位依存性Ca2+チャンネルがリン酸化されると、Ca2+チャネルは開きやすくなり、開いている時間も長い。インクレチンとしては、GLP-1 (glucagon-like peptide 1), GIP(gastric inhibitory polypeptide)などがあり、いずれもインスリン分泌を促進する。

※参考にしていただきたい図
https://www.google.co.jp/search?q=%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%B3%E5%88%86%E6%B3%8C%E5%9B%B3&biw=1600&bih=751&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ved=0ahUKEwiXpYfP0vLQAhUEKpQKHUG9CvwQsAQIIA&dpr=1.2

参考にさせていただいたサイト
http://polaris.hoshi.ac.jp/openresearch/index.html

小麦ふすまと小麦ファイバーのパン

2016/12/3に投降した記事です。
最近低糖質パンをキーワードとしてアクセスする方が増えてきたので📌止めします。

これまで使用していたグルテンを低糖質なユウテック(8.3g/100g)から他のメーカーに変更しました。

糖質は高めですが、品質がいいので、株式会社小川製粉のグルテンH-10(糖質24.1g/100g)を使用することにしました。
業務用(20kg販売)ですので、ネット通販では購入できません。
ご希望の方はパン作り教室の際にお申し出ください。(2,020円税別/2kg)

img_5736

焼き上がりの糖質は、
〇以前のユウテック(グルテンの糖質8.3g/100g)使用の焼き上がり、
1個67gの糖質2.56g  ※1
〇今回の小川製粉(グルテンの糖質24.1g/100g)使用の焼き上がり、
1個67gの糖質4.815g  ※2

糖質量の改善はもう少しできそうですが(小川製粉のグルテン特H-10(糖質18.3g/100g)に変更可)、とりあえずこのレシピで焼こうと思っています。

ローソンのブランパン(糖質2.2g/30g)と比較してみます。
※1 .糖質1.15g/30g
※2 .糖質2.15g/30g
小川製粉のグルテンを使い焼いても低糖質(※2)に焼けました。

●イースト菌の発酵には餌となる糖質がある程度必要になるようです。
低糖質な「ふすま粉」や「大豆粉」を使った場合、特にホームベーカリーでのパン作りや生地作りにはグルテンの選択が必要なようです。

材料質量g糖質g/100g糖質量g
小麦ふすま(ユウテック)4510.24.59
小麦ファイバー(ookura)451.40.63
小麦グルテン(小川製粉)
9024.121.69
食塩300
※プリマナチュラ2
※ラカンカット6
ドライイースト310.50.315
全卵500.30.15
オイル4000
生クリーム3051.5
16500
総質量479
総糖質量28.875
焼き上がり1個当たり(1/6)677.1864.815
※血糖値を上昇させないラカンカット(エリスリトール)を糖質量に含めていません。プリマナチュラは糖質量不明のため糖質量に含めていません。

 

img_5737
最初にイーストを入れ、粉物を入れていきます。
最後に、全卵、オイル水を入れます。

img_5738
ホームベーカリーで生地づくりコースを選びます。

img_5739
出来上がった生地を6等分(79g)にして丸く成形します。

img_5740
クッキングシートを敷いたバットに並べます。

img_5741
スチームオーブン(35°)で60分発酵させます。

img_5744
190°に予熱したオーブンで20分焼きまました。

img_5762
焼き上がり1個67gで糖質4.815gです。
バンズに使えます、またスライスしてガーリックトーストやラスクにも使えそうです。

これまで低糖質にこだわってきましたが、原価が高かったり、味の問題で長続きできなければ問題外です。
今回、あえて糖質高めのグルテンを使いましたが品質の面で満足です。
小川製粉のグルテンを使うことで小麦ふすま以外の粉を使ってもよく膨らみ満足のパンが焼けました、
またアップします。

糖尿病の前には、メタボリックシンドロームが見られることが多い

前回に続きストライヤー生化学 第7版  p746
からの記事になります。
(リンクや色文字そしてカッコにより補足しました。一部原文と異なりますので、原書をご確認ください。)

糖尿病の前には、メタボリックシンドロームが見られることが多い

エネルギーの恒常性にかかわる重要な因子がわかったところで、インスリン抵抗性とⅡ型糖尿病の生化学基盤を考えてみよう。
肥満は、Ⅱ型糖尿病に至る道筋で初期に現れる症状の一つ、インスリン抵抗性をもたらす要因の一つである。
実際、インスリン抵抗性、高血糖、脂質異常症(トリアシルグリセロール、コレステロール、低密度リポタンパク質の血中濃度が高い)といった一群の状態は一緒に生じることが多い。
このような病態が集積した状態をメタボリックシンドローム(metabolic syndrome)と呼びⅡ型糖尿病の前兆と考えらえている。
肥満の結果、トリアシルグリセロールの摂取量が脂肪組織の貯蔵容量を超えてしまう。そのため、他の組織、特に腎臓と筋肉に脂肪が蓄積するようになる。理由は本省の後の方で説明するが、こうして脂肪が蓄積すると、インスリン抵抗性、ひいては膵臓の機能不全につながる。
筋肉と膵臓のβ細胞に的を絞って話を進めよう。

筋肉の過剰な脂肪酸が代謝を変化させる

脂肪が細胞の燃料として重要なことは、これまで何度も述べてきた。肥満の場合筋肉で処理できる量を超える脂肪が存在する。
ミトコンドリアでは高濃度の脂肪に対応してβ酸化の速度が上昇するものの、この脂肪酸すべてをβ酸化で処理しきれず、脂肪酸がミトコンドリアに蓄積し、やがては細胞質へとあふれ出す。
実際に、全部を処理しきれないと脂肪酸は再びトリアシルグリセロールに取り込まれ、細胞質に脂肪が蓄積する。細胞質では、ジアシルグリセロールとセラミド(スフインゴ脂質の成分の一つ)も増加する。
ジアシルグリセロールは、プロテインキナーゼc(PKC)を活性化する二次メッセンジャーある。PKCを始めとするSer/Thrプロテインキナーゼは、活性化されるとIRS(insulin receptor substrate)をリン酸化し、IRSのもつインスリンシグナルの伝達能力を低下させる。セラミドやその他の代謝物は、グルコースの取り込みとグリコーゲンの合成を阻害する。
それはPDK(phos- phoinositide-dependent kinase)とPKB(プロテインキナーゼB)を阻害するからで、その結果が食餌誘導性インスリン抵抗性である。

筋肉のインスリン抵抗性が膵臓の機能不全を悪化させる

過剰栄養は膵臓の機能不全にどのような影響を及ぼすのだろうか。
この問題が重要なのは、膵臓の主要な機能が、血中のグルコースの存在に応じたインスリンを分泌することだからである。これをグルコース応答性インスリン分泌(glucose-stimulated insulin secretion)(GSIS)という。
実際、膵臓のβ細胞は実質的にはインスリン製造工場である。
プロインスリンmRNAは膵臓の全mRNA(messenger RNA)の20%にもなり、一方、膵臓で合成される全タンパク質の50%はインスリン前駆体であるプロインスリンである。
グルコースはグルコース輸送体GLUT2を介して膵臓のβ細胞に入る、前にも述べたが、GLUT2は血中にグルコースが多いときにだけグルコースを輸送するので、インスリンが分泌されるのは、食後などのようにグルコースが豊富にあるときに限られる。
β細胞は、細胞呼吸と呼ばれる過程でグルコースをCO2とH2Oにまで代謝しATPを生産する。その結果ATP・ADP比が上昇すると開いていればk+を細胞外へと流失させる働きをするATP感受性k+チャンネルを閉じる。そうして細胞内のイオン環境が変化するとCa2+チャンネルが開き、流入したCa2+の働きでインスリンを含む分泌小胞が細胞膜と融合し、インスリンが血中に放出される。
つまり、グルコース代謝によるエネルギー充足率の上昇が、膜タンパク質の働きによって生理的応用(インスリンの分泌と血液中からのグルコースの除去)へと変換されるのである。
過剰栄養が続くと、最終的にβ細胞のどのような機能が損なわれ、インスリン抵抗性が本格的なⅡ型糖尿病へと移行するのだろう。

前述のように、
正常な状態にある膵臓のβ細胞は大量のプロインスリンを合成している。
このプロインスリンは小胞体内で折りたたまれ、加工されてインスリンとなり、分泌用の小胞へと入れられる。
筋肉でインスリン抵抗性が生じると、β細胞は、インスリンを働かせようとさらにインスリンを合成するという無駄な努力をする。

そのため、プロテインとインスリンすべてを処理する小胞体の処理能力が損なわれて小胞体ストレス(endoplasmic reticulum stress)〔ERストレス(ERstress)〕と呼ばれる状態になり、折りたたまれないタンパク質や誤って折りたたまれたタンパク質が蓄積する。

小胞体ストレスが細胞を守るためのUPR(unfolded protein response)またはストレス応答と呼ばれるシグナル伝達経路を開始する。UPRは数段階から成っている。
〇まず、それ以上タンパク質がERにに入って来ないように、タンパク質合成全体が抑制される。
〇第二にシャペロン合成が促進される。シャペロンとは前に説明したように、他のタンパク質の折りたたみを助けるタンパク質である。
〇第三に、誤って折りたたまれたタンパク質かがERから取除かれ、その後プロテアソームに運ばれて破壊される。

最後に、もしも、ここで述べたような応答でERストレスが軽減できないと、アポトーシス(積極的、機能的細胞死)が誘発され結局は細胞死が起こり、本格的なⅡ型糖尿病につながる。

Ⅱ型糖尿病の治療とはどのようなものだろう
実際は、ほとんどが行動面に関する治療法で、糖尿患者へは、エネルギー摂取が消費を上回らないようカロリー計算をすること、野菜、果物、穀類の多い食事をとることと有酸素運動を十分にするようにとといったアドバイスがなされる。

これらの治療指針は、健康な生活を送るための指針と同じで、Ⅱ型糖尿病のための特別な治療には、血糖値を監視して、これが目標範囲内(3.6~6.1mM)に収まるようにするという方法がある。ここで説明したようなな運動療法、食事療法で血糖値を適正に維持できない場合は、薬物療法が必要になる。
膵臓の機能不全の場合にはインスリン投与が必要になる可能性もある。また、AMPKを活性化するメトホルミンによる治療が有効な場合もある。

Ⅰ型糖尿病の代謝異常は、インスリンの不足とグルカゴンの過剰によって起こる

次に、Ⅰ型糖尿病について考えよう。
Ⅰ型糖尿病では、膵臓のβ細胞が自己免疫によって破壊されるために、インスリンの生産が不十分になる。そのためインスリン/グルカゴン比が正常レベルよりも高くなる。
突き詰めて言うと、この型の糖尿病患者は、血中グルコース濃度が高いにもかかわらず生化学的には飢餓状態なのである。
インスリンが欠乏しているのでグルコースの脂肪細胞や筋細胞への取り込みがうまく行かない。肝臓は糖新生、ケトン体生成の状態に固定されてしまう。
糖新生状態の特徴は、グルコースが過剰に生産されることである。
インスリンに比べて相対的にグルカゴンが過剰になるため、肝臓での解糖を促進し、糖新生を阻害するフルクトース2,6-ビスリン酸(f-2,6-BP)量が減少する。すると、6-ホスホフルクトキナーゼとフルクトース-1,6-ビスホスファターゼに対するf-2,6-BPの相反した効果のため解糖が阻害され糖新生が促進される。
要するに、インスリンの欠乏に対する細胞の応答が、血中のグルコース濃度をさらにさらに上昇させる。
また、糖尿病患者ではインスリン/グルカゴン比が高いため、グリーコーゲン分解も促進される。そのため、肝臓で過剰量のグルコースが生産され血中に放出される。血中グルコース濃度が尿細管の再吸収容量を超えると、グルコースは尿へと排出される。〔これがmellitus(密のように甘い意)という名の由来である〕。グルコースとともに水分も排出されるので、治療を受けていない急性期の糖尿病患者は、空腹とのどの渇きを感じる。
インスリンが欠乏して糖質利用がうまく行かなくなるため、脂質とタンパク質の分解が制御できなくなり、ケトン体生成状態になって、β酸化によって大量のアセチルCoAが生成する。
しかし、このアセチルCoAの大半は、縮合反応に必要なオキサロ酢酸が不十分なためクエン酸回路には入れない。
哺乳類は解糖で生じるビルビン酸からはオキサロ酢酸を合成できるが、アセチルCoAからは合成できないことを思い出してほしい。
その代わりにケトン体が生成するのである。

糖尿病の際立った特徴は、利用する燃料が糖質から脂質に替わることである。グルコースはどんなに豊富にあっても見向きもされないのである。ケトン体が高濃度になると、腎臓の酸塩基平衡維持能力の限度を超えてしまう。

治療していない糖尿病患者は、血液のPH低下と脱水によって昏睡になることもある。
面白いことに、Ⅱ型糖尿病患者では、糖尿病ケトアシドーシスはめったに問題にならない。肝臓や脂肪組織での過剰な脂肪分解を十分に妨げる程度のインスリン活性はあるからである。

Ⅰ型糖尿病にはどのような治療法があるのだろう。
カロリー計算、運動健康的な食生活など、Ⅱ型糖尿病治療の行動指針の多くがⅠ型糖尿病にも当てはまる。同様に、血糖値の監視もしなくてはならない。
生きていく為にはインスリンの投与が必要である。

※ここまで掲載してきての感想です。

糖質制限の理解ができていないようです。
ストライヤーの生化学 第7版 の別のページでは糖質制限に理解を示している個所もあります。
版を重ねるごとに糖質制限に対する理解度は上がってきているように思います。
(ストライヤー生化学  8版 英語版が出ているようです)

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追記

以前江部先生のブログに投降した記事です。

『16/03/15 オスティナート

カロリー恒常性と肥満

江部先生こんにちは、

今回の投稿、肥満に関連して、ストライヤーの生化学からカロリー恒常性と肥満について、抜粋して投稿します

最後に「肥満と戦うために、食事療法がおこなわれる」で低糖質高タンパク質食についての記述がありました。
全1101ページの中のたった12行ですがやっと糖質制限に関する記述を発見しました。
版を重ねるごとに、もっと増やしていってもらいたいものです。

【ストライヤーの生化学第7版 東京化学同人 742p・743p・744p

●レプチンとインスリンはカロリー恒常性の長期的な制御を行う

数時間から数日という尺度でエネルギーの恒常性を調節する重要なシグナル分子が二つある。
脂肪細胞から分泌されるレプチン(leptin)と、膵臓β細胞から分泌されるインスリン(insulin)である。
レプチンはトリアシルグリセロールの貯蔵状況を知らせ、インスリンは血中のグルコース量、すなわち糖質の供給状況を示す。

中略

●レプチンは脂肪細胞が分泌する数種類のホルモンの一つである。

●レプチン抵抗性は肥満の要因になる可能性がある

レプチンが体の脂肪量に比例して産生され、食べるのを抑制するのだとすれば、なぜヒトは肥満になるのだろう。
肥満したヒトでもほとんどの場合は、正しく機能するレプチンをもち、その血中濃度も高い。
レプチンの食欲抑制効果に対応できないことを、レプチン抵抗性(leptin resistance)という。
レプチン抵抗性の原因はなんだろう。

中略

よくわかっていないが、最近得られた証拠が示すようにサイトカインシグナル抑制因子(suppressor of cytokin signaring)(SOCS)と呼ばれる一群のタンパク質がかかわっているらしい。

中略

SOCSがレプチンの抵抗性にかかわっている事を裏付ける証拠は、POMC発現ニューロンから、SOCSを選択的に欠損させたマウスの研究で得られた。

中略

◎肥満と戦うために、食事療法がおこなわれる。

現在我々は肥満の蔓延とそれに関連した病気に直面しており、
どのような食事療法で最も体重を減らせるかが関心の的になっている。

一般に、カロリー摂取を調節しようとして行われる食事療法は大きく分けて二つある。

低糖質食と低脂肪食である。

低糖質食では普通、タンパク質の摂取を奨励する。

食事療法の効果の研究は非常に手間がかかるが、低糖質高タンパク質食が体重減少にもっとも効果的であることを示す証拠が増えている。

詳しい理由は不明だが、二つの説が広く言われている。

第一に、タンパク質は脂肪や糖質よりも満腹感を得やすいらしい。

第二に、タンパク質は脂肪や糖質に比べて消化するのに多くのエネルギーが必要で、エネルギー消費の増加が体重減少につながるという。

たとえば最近の研究で、タンパク質30%の食事は、タンパク質10%の食事よりも消化に必要なエネルギーが約30%多いことが明らかとなった。

タンパク質の多い食事がエネルギー消費を促進するしくみ、満足感を亢進するしくみは、まだわかっていない。

食事の量を減らして、運動量を増やせば、すべてに当てはまる。]

最後の食事誘発性熱産生DITまたは特異動的作用SDAについては
江部康二著「糖質制限パーフェクトガイド88p」が解り易く参考になりました。
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-category-106.html

厚生労働省のサイト e-ヘルスネット
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-030.html

こんばんは。

オスティナートさんから、ストライヤー生化学に記載してある「肥満と戦うために、食事療法がおこなわれる」について、貴重な情報をコメントいただきました。ありがとうございます。

オスティナートさん、高価な本をご購入され、肥満に対する糖質制限食の有効性についての記載を発見していただき、重ねてありがとうございます。

ストライヤー生化学 (第7版)は以下の如く、最新の知識が取り入れられていて
2013/02/22が、出版日です。

ストライヤー生化学 (第7版)
J. M. Berg  J. L. Tymoczko  L. Stryer 著
入村 達郎  岡山 博人 清水 孝雄 監訳
出版社 東京化学同人
本体13,900円+税

内容説明
監訳者のことばから:かつて,生化学の興味の中心は,代謝であり,“ストライヤー生化学”もその過半をこの代謝の記述に当てているが,本書の大きな特徴は,最新の分子生物学,細胞生物学の成果をいち早く取入れ,分子の構造と機能とに視点をおいて各領域の生命現象を論じ,解説している点である.今回の改訂では,代謝の全体像が最新の情報に基づいて見直され,また遺伝子調節の生化学的側面の解明が急速に進んでいることを受けて記述が増えている.新しい実験技術についても,最新の生化学研究における重要性を意識して詳しく述べてある.

『今回の投稿、肥満に関連して、ストライヤーの生化学からカロリー恒常性と肥満について、抜粋して投稿します。

最後に「肥満と戦うために、食事療法がおこなわれる」で低糖質高タンパク質食についての記述がありました。
全1101ページの中のたった12行ですがやっと糖質制限に関する記述を発見しました。
版を重ねるごとに、もっと増やしていってもらいたいものです。』

オスティナートさん。
同感です。

代謝の全体像が最新の情報に基づいて見直されたということで糖質制限食に有利な記載につながったのですね。

『低糖質食では普通、タンパク質の摂取を奨励する。

食事療法の効果の研究は非常に手間がかかるが、低糖質高タンパク質食が体重減少にもっとも効果的であることを示す証拠が増えている。

詳しい理由は不明だが、二つの説が広く言われている。

第一に、タンパク質は脂肪や糖質よりも満腹感を得やすいらしい。

第二に、タンパク質は脂肪や糖質に比べて消化するのに多くのエネルギーが必要で、エネルギー消費の増加が体重減少につながるという。

たとえば最近の研究で、タンパク質30%の食事は、タンパク質10%の食事よりも消化に必要なエネルギーが約30%多いことが明らかとなった。』

低糖質高タンパク食が体重減少に効果的であることを示す証拠が増えているとは嬉しいですね。

タンパク質が、満腹感を得やすいとのことですが、確かに、本ブログでもよく取り上げている有名な「DIRECT」というニューイングランド・ジャーナルに掲載されたイスラエルの研究があります。
Iris Shai et al. :NENGLJ MED , VOL359.NO.3 :229-241,2008
322人を
1)脂肪制限食(カロリー制限あり)
2)地中海食(カロリー制限あり)
3)糖質制限食(カロリー制限なし)
の3群に分けて2年間経過をみたものです。
その結果、糖質制限食は、カロリー無制限だったのに
自然に、脂肪制限食、地中海食と同じだけカロリー摂取が減って
結局3群とも同カロリーとなったのです。
そして結果は、糖質制限食が一番体重が減って、HDLコレステロールも一番増えたのです。

カロリー無制限なのに、自然に摂取カロリーが減ったのは、糖質制限食群では満腹感が得られやすかったからと思われます。

糖質制限食群では他の2群に比し、タンパク質の摂取比率は一番増えていました。

同様に、ストライヤー生化学で述べているように高タンパク食だと、食事誘発性熱産生DITまたは特異動的作用SDAが増加して消費エネルギーが増えることとなり、体重減少に有益です。

江部康二

糖尿病はよく見られる代謝疾患の一つで、肥満から生じることが多い

今日は「ストライヤー生化学」第7版   p744   から糖尿病に関する記述をご紹介します。
(リンクや色文字そしてカッコにより補足しました。一部原文と異なりますので、原書をご確認ください。)

41shwr6702l-_ac_us160_1

27・3 ≪糖尿病はよく見られる代謝疾患の一つで、肥満から生じることが多い

体重の調節の全体像がつかめたところで、行動、遺伝、あるいはその両方で調節がうまくいかないと生化学的にどうなるかを考えよう。

調節の失敗の結果としてもっとも一般的なのは肥満、すなわち過剰なエネルギーがトリアシルグリセロール(トリグリセリド)の形で蓄えられた状態である。
過剰に摂取された食物は、最終的にはすべてトリアシルグリセロールに変換されてしまうことを思い浮かべてほしい。
人は、グリコーゲンをおよそ1日分に相当する量に維持し、その分を補充した後は、余分な糖質を脂肪酸に変えてトリアシルグリセロールに変換する。
アミノ酸は全く貯蔵されないので、過剰なアミノ酸も結局は脂肪へと変換される。
つまり、食物の種類には関係なく、過剰に摂取すれば脂肪の貯蔵が増える。
カロリー恒常性の破壊がもたらす影響について、まず糖尿病(daiabetes mellitus (ダイアビーティス・メリタス)普通は単にdaiabetesという)から考えてみよう。
糖尿病は燃料の利用の仕方にひどい異常がある複雑な病気で、肝臓でグルコースが過剰に生産され、他の臓器ではグルコースの利用が低下する。
糖尿病の発症率は人口の5%で、世界で最も多く見られる代謝疾患であり、患者は数億人に上る。
1型糖尿病(type 1 daiabetes)はインスリンを分泌する膵臓の自己免疫機序による破壊が原因で起こり、通常は20歳前に発症する。
1型糖尿病は、インスリン依存性糖尿病とも呼ばれる。
インスリン依存性とは、患者が生きていく為にインスリン投与を必要とすることを意味している。
これに対し大多数の糖尿病では、血中のインスリン濃度は正常かむしろ高いのだが、患者はインスリンに対して全く応答を示さないインスリン抵抗性(insulin resistance)という特徴を示す。
この型の糖尿病はⅡ型糖尿病(type Ⅱ daiabetes)とよばれ、インスリン依存性糖尿病よりも一般的に発症時期が遅い。Ⅱ型糖尿病は糖尿病の90%以上を占め、世界で最も多くみられる代謝疾患である。
米国では、失明、腎不全、指や足の切断のおもな原因となっている。
肥満はⅡ型糖尿病を発症する大きな原因の一つである。

 

インスリンは筋肉で複雑なシグナル伝達経路を開始する

インスリン抵抗性の生化学的原因はなんだろう。
インスリン抵抗性がどのような仕組みで膵臓のβ細胞の機能不全を引き起こしⅡ型糖尿病に結び付くのだろう。
肥満はこの過程の進展にどう関わるのだろう。
これらの疑問に答え、代謝疾患の謎を解き明かす手始めに、インスリンによって調節される最大の組織である筋肉におけるインスリンの作用機構を見ていこう。

 

正常な細胞では、インスリンが受容体に結合すると受容体は二量体を形成しチロシン残基を自己リン酸化する。(このとき二量体の各サブユニットが互いに相手をリン酸化する)。
受容体のリン酸化によって、IRS-1等のインスリン受容体基質(IRS・insulin receptor substrate)の結合部位が生じる。
すると受容体のチロシンキナーゼ活性によってIRS-1がリン酸化され、インスリンシグナル伝達経路が開始する。
リン酸化されたIRS-1は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)に結合して活性化する。PI3Kは、ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸(PIP2)を二次メッセンジャーであるホスファチジルイノシトール3,4,5-トリスリン酸(PIP3)へと変換する反応を触媒する。PIP3がホスファチジルイノシトール依存性プロテインキナーゼ(PDK)を活性化し、これがさらに他のキナーゼを活性化する。
中でも特に重要なのが、Aktと呼ばれるプロテインキナーゼB(PKB)である。
プロテインキナーゼAktは、GIUT4を含む小胞の細胞膜への移行を促進するので、グルコースが血中からよりしっかりと吸収されることになる。
〇しかもAkt はグリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3)をリン酸化して阻害する。 〈GSK3前に述べたようにグリコーゲンシンターゼを阻害する。〉
したがって、インスリンはグリコーゲンシンターゼの活性化をも引き起こし、グリコーゲン合成を促進する。

 

シグナル伝達経路の例にもれず、インスリンのシグナル伝達カスケードのスイッチも、オフにできなければならない。
インスリンのシグナル伝達を抑制する方向に働く過程は3種類ある。

〇第一に、ホスファターゼがインスリン受容体を活性化して、鍵となる二次メッセンジャーを破壊する。チロシンホスファターゼ(tyrosine phosphatase)のPTP-1Bがリン酸基を除去して受容体を活性化する。
二次メッセンジャーであるPIP3は、PTENホスファターゼ(PTEN phosphatase; PTEN=phosphatase and tensin homolog)によって脱リン酸され、不活性され、二次メッセンジャーとしての作用を持たないPIP2が生成する。

〇第二にIRSタンパク質は、特異的Ser/Thrキナーゼによってセリン残基がリン酸化される、このキナーゼは過剰な栄養摂取や他のストレスシグナルによって活性化され、インスリン抵抗性の発生に関わっている可能性がある。

〇最後に、以前に述べた調節たんぱく質SOCSがインスリン受容体やIRS-1に結合し、それらのプロテアソーム複合体による分解を促進する。

ストライヤーからの掲載はここまでです。
後半の用語を少しまとめましたので、検索などの参考としてください。

・ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)Phosphatidylinositol 3- kinase
・ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸(PIP2)Phosphatidylinositol 4,5bisphosphate
・ホスファチジルイノシトール3,4,5-トリスリン酸(PIP3)Phosphatidylinositol 3,4,5 trisphosphate
・ホスファチジルイノシトール依存性プロテインキナーゼ(PDK)Phosphatidylinositol dependent protein kinase
・Aktと呼ばれるプロテインキナーゼB(PKB)Protein kinase B
・グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3)glycogen synthase kinase 3

 

 

※続きは次回掲載します。
●Ⅱ型糖尿病の前には、メタボリックシンドロームが見られることが多い。
●筋肉の過剰な脂肪酸が代謝を変化させる。
●筋肉のインスリン抵抗性が膵臓の機能不全を悪化させる。
●Ⅰ型糖尿病の代謝異常は、インスリンの不足とグルカゴンの過剰によって起こる。

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