インクレチンとDPP4阻害薬

前回、グルコースが膵β細胞に作用してインスリンが分泌される仕組のほかに、インクㇾチンにもインスリン分泌を促す作用があることを記載しました。

インスリン分泌の仕組み

今回は主にインクㇾチン、関連してDPP4阻害薬・GLP-1受容体作動薬について記載します。

経口投与されたグルコースは小腸のL細胞に作用してGLP-1 (glucagon-like peptide-1)を分泌し、またK細胞に作用してGIP (glucose-dependent insulinotoropic polypeptide)を分泌する。
これらGLP-1 、GIPを総称してインクレチンという。

インクレチンは膵β細胞内においてcyclic AMPを産生し、protein kinase Aを介して電位依存性Ca2+チャネルをリン酸化することによってCa2+イオンの流入を促進する。
よって、食後高血糖になる場合、2つの経路によってインスリンが分泌されることになる。
一つはグルコースによってATPが産生され、ATP感受性K+チャネルが閉鎖することによって脱分極し、電位依存性Ca2+チャネルが開口してCa2+イオンが流入する経路。
もう一つは、インクレチンによってcyclic AMPが産生され、上述した過程により電位依存性Ca2+チャネルが開口してCa2+イオンが流入することによってインスリンの分泌が促進されることになる。

DPP-IV阻害薬】

インクレチンはDPP-IV (dipeptidyl peptidase-IV) によって分解され、血中半減期は5分程度である。
このDPP-IVを阻害して血中のインクレチン濃度を上げるとインスリン分泌が増加するだろうと云う概念でDPP-IV阻害薬が開発された。

インクレチンは、膵β細胞内においてcyclic AMPを産生するために、膵β細胞の保護作用、増殖促進作用を示す。
GLP-1あるいはGIPによって産生されたcyclic AMPはプロテインキナーゼA (PKA)を活性化し、PKAはCREB (cyclic AMP応答タンパク質)を活性化することによってアポトーシス(積極的、機能的細胞死)を誘発するカスパーゼ3(caspase 3)を抑制し、膵β細胞の死が抑制されることになる。
また、プロテインキナーゼA (PKA)は、MAPキナーゼなどを活性化して膵β細胞の分化・増殖を促進する。
一方、プロテインキナーゼA (PKA)は、CREB (cyclic AMP応答タンパク質)を活性化して、IRS2の発現を促進し、PI3K/Aktを介して、PDX-1 (pancreatic duodenal homeobox-1)を活性化して膵β細胞の分化・増殖を促進する。

○GLP-1とGIPは、いずれもインスリン分泌を促進するが、少し作用が異なっている。
●GLP-1は、インスリン分泌促進作用、膵臓β細胞増殖作用、膵β細胞死抑制作用、グルカゴン分泌抑制作用、胃排泄能抑制作用、中枢性食欲抑制作用を示す。
●GIPは、インスリン分泌促進作用、膵臓β細胞増殖作用、膵β細胞死抑制作用を示すと共に、脂肪細胞に作用して脂肪の取り込みを促進し、肥満を誘発する作用を示す。

GLP-1受容体作動薬】

GLP-1はDPP-IVによって分解され、血中半減期は5分程度であることから、このDPP-IVを阻害して血中のインクレチン濃度を上げるとインスリン分泌が増加するだろうと云う概念でDPP-IV阻害薬が開発されたことは上記した。

GLP-1と同じような作用をする薬を外から投与すれば、すい臓からインスリンが分泌される過程を促進できることが分かる。
GLP-1そのものは体内で素早く分解されるため、分解されにくいようにGLP-1の構造を少し変えることで糖尿病治療薬が創出された。
そして、GLP-1受容体に結合する薬物がGLP-1受容体作動薬として開発された。
(薬の詳細や副作用については、こちらのサイトを参考に)

これらの薬剤は、体内の血糖値に応じて作用し、高血糖の時にのみ膵臓からのインスリン分泌を促進するため、インスリン治療に比べて低血糖発現率が低いと言われている。
また、いずれも体重減少や膵β細胞の保護作用を示すことも報告されている。

※参考にしていただきたい図
https://www.google.co.jp/search?q=dpp4%E9%98%BB%E5%AE%B3%E8%96%AC%E3%81%A8%E3%81%AF%E5%9B%B3&biw=1600&bih=751&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ved=0ahUKEwi3hrXUl_PQAhWEvrwKHWcfDqgQsAQILA

参考にさせていただいたサイト
http://kusuri-jouhou.com/medi/diabetes/dpp4.html
http://polaris.hoshi.ac.jp/openresearch/index.html

インスリン分泌の仕組み

食事によって炭水化物が消化・吸収され、血中グルコース濃度が上昇する。
このグルコースが各組織へ運ばれてエネルギー源となるが、各組織へグルコースを運ぶホルモンはインスリンのみである。(グルコーストランスポーターを介する(glucosetranceporter・GLUT1~14))

GLUT2を介して膵β細胞内へ流入したグルコースはグルコキナーゼによってリン酸化され、G-6-Pとなり、その後、解糖系を経てピルビン酸となり、ピルビン酸はミトコンドリア内へ入り、TCA回路を経て、ATP(アデノシン三リン酸)が産生される。
その結果、ATP/ADP(アデノシン二リン酸)比が上昇し、このATPがATP感受性K+チャネルを閉鎖する。
通常、ATP感受性K+チャネルはATP/ADP比の上昇によって閉鎖される。

膵β細胞内は、-70mV程度マイナスとなっている。
プラスに荷電しているK+イオンが外へ流出する分、細胞内はマイナスの方へ傾く。
しかし、ある程度マイナスになると、K+イオンが引き寄せられて平衡状態に達する。この平衡状態の電位が-70mV程度となる。
ATP感受性K+チャネルが閉じて、プラスに荷電したK+イオンが外へ流出しなくなると、細胞内はプラスの方向へ傾く。これを脱分極という。
この脱分極は、グルコース濃度の上昇から数分以内に起こる。-30~-50mV程度まで脱分極すると、それに応じて電位依存性Ca2+チャネルが開き、スパイク電位を発生する。
電位依存性Ca2+チャネルからCa2+ イオンが細胞内へ流入する。
インスリン分泌にはCa2+ 流入が必須である。
Ca2+ イオンは、インスリン分泌顆粒を刺激してインスリン顆粒の開口放出を引き起こす。
分泌顆粒が開口放出する過程には、数種のタンパク質が関与する。

グルコース刺激以外でもインクレチンが細胞内のcAMP(サイクリックアデノシン一リン酸)濃度を上昇させ、PKA(protein kinase A)によって電位依存性Ca2+チャネルがリン酸化されてCa2+が細胞内へ流入してインスリン分泌を促すことが考えられる。
電位依存性Ca2+チャンネルがリン酸化されると、Ca2+チャネルは開きやすくなり、開いている時間も長い。インクレチンとしては、GLP-1 (glucagon-like peptide 1), GIP(gastric inhibitory polypeptide)などがあり、いずれもインスリン分泌を促進する。

※参考にしていただきたい図
https://www.google.co.jp/search?q=%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%B3%E5%88%86%E6%B3%8C%E5%9B%B3&biw=1600&bih=751&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ved=0ahUKEwiXpYfP0vLQAhUEKpQKHUG9CvwQsAQIIA&dpr=1.2

参考にさせていただいたサイト
http://polaris.hoshi.ac.jp/openresearch/index.html

Copyright (C)2016 wp-Ostinato All rights reserved.