ぼんやりと脳活動その1

サイエンスZERO  「”ぼんやり”に潜む謎の脳活動」
2014/8/31 NHKの放送から

ゲ ス ト   : 宮内 哲
司   会    : 南沢 奈央、竹内 薫
キャスター : 江崎 史江
語 り 手   : 中山 準之助

〈VTR〉
サッカー日本代表選手キャプテン
長谷部誠選手

世界的コンピュータ会社の創業者
スティーブジョブズ

この二人に共通した習慣とは、
それは、「ぼんやーり」と何もしない時間をもつこと

いまこのなにもしていない時の脳の働きに注目が集まっています。
なんでも、頭の中が自然にメンテナンスされた感覚が得られるのだとか
ではこの時、脳では何が起きているのか?

近年このぼんやりしているときの脳の働きに意味があるのではないかと、世界中の研究者が注目しています。

更にこの脳の働きと病とのかかわりも明らかになりつつあります。
そう認知症です。

何もしていない脳を調べれば認知症の兆候がきわめて速く見つけることが出来るというのです。

ぼんやりに潜む、謎の脳活動に迫ります。

〈スタジオ〉
これまでの脳科学というのは計算してくださいとか、
なにか課題をやってもらう時の脳の活動をメインに調べてきました。
(意識して課題を行う時の脳活動が対象)

何もやってないという時は、脳もたいして何もやってないと思われていて、何も研究されてきていなかった。(何もしてないときは、意味のある脳活動はないと思われていた)

私たちが一日に使うエネルギーというのはおよそ2000kcolといわれています。
そのうち400kcolご飯山盛り一杯分位のエネルギーを脳がつかっています。

重さでいうと脳は体重の2%~3%位しかなく軽い、その脳が20%位のエネルギーを使っています。

このうち仕事をしたり、本を読んだり、料理をしたり意識的な活動に使うエネルギーはどのくらいでしょう。
意識的なエネルギーに使われているのはたった5%程度です。

では残りは何に使われているのでしょう。

20%位が脳の細胞の修復と維持に使われていて、
つまり脳の使うエネルギーの大半は、我々が知らないところで何かやっているのです。
では、何もしていないとき脳は大量のエネルギーを使って何をしているのでしょうか。

〈VTR〉
ぼんやりしているときの脳に最初にメスを入れた教授
ワシントン大学(セントルイス)
マーカス・レイクル教授

レイクル教授
「何もせず、ぼんやりとした時間を大切にしています。
山々を見ながらなにもせずぼんやり座っているのは、本当に心地よいものです。
それも想像的プロセスの一環なのでしょう
こうした何もしないときに脳が使うエネルギーは膨大で
無視できなかたんだよ。」】

研究はふとしたきっかけで始まりました。
血流の変化から脳の活動を調べるfMRIという装置で実験を行ったときのことです。

目を動かすときの脳の活動をしらべます。
たとえば目を動かすときの脳の領域を調べるとします。
実験ではまず目を動かすという課題をしてもらいます。

次に課題をやめ、何もしてないときの脳活動も測定します。

そしてこの両者を詳細に比較するのです。

すると、目を動かしているときに血流が増える領域がありました。

こうして脳の活動領域を推定してきたのです。
ところがレイクル教授はこうして得られた数々の実験データを眺めていたときあることに気が付きます。

レイクル教授
「当時は、課題で血流が増える領域を探すのに皆夢中になっていたんだけどある時ふと、こんな疑問が生じたんだ。
(血流が)減る領域にも何か意味があるんじゃないかと」】

レイクル教授は実験で得られるデータの見方を変えて見ました。
課題を行うと領域が増える領域ではなく、
逆に低下する領域に注目したのです。
その結果意識して様々な課題を行うと、
離れた二つの領域、後部帯状回前頭葉内側が活動を低下させるという現象が浮かび上がってきました。

レイクル教授
「さまざまな課題で試してみたけど、どれも何故かこの場所の血流が低下するんだ
後部帯状回と前頭葉内側で起きるまさにミステリーだよ」】

ではなぜ意識して活動しているときにだけ
このミステリーゾーンの活動は低下するのか

〈スタジオ〉
何もしてないときの部位ごとのエネルギー消費量をしらべてみました。

得られた結果がこちら
赤いところほど、エネルギーを多くつかっていることを示しています。
その領域はあのミステリーゾーンとほぼ一致

ミステリーゾーンは課題をすると活動が低下するのではなく
何もしてないときに活動が高まるところだったのです。

レイクル教授
「この現象を見つけた時、ほとんどの人が そんなことあるわけないと批判的だったよ
でも今は人間と多くの哺乳類の脳で確実に起きる、現実の現象だと分ってきたんだ。」】

〈スタジオ〉
何もしていないときだけ活動していところがあるなんてすごく不思議ですね

血流量が低下する場所があるという発見自体はそんなに驚くことではないのです。

脳は全体として血流の量はだいたい一定なんです。何処かが増えればどこかが減るこれは当たり前なんです。

減った領域ですね(課題時に活動が低下する領域)これが我々が何もしてない時は、逆にたくさんのエネルギーを使って活動しているということなんです。(何もしてない時に多くのエネルギーを消費)

どんな活動をしているのでしょうか
レイクル教授はこんな不思議な現象も捕えました。

〈VTR〉
有る課題を行ったり休んだり、これを繰り返した時に
ミステリーゾーンを構成する後部帯状回と前頭葉内側それぞれの
領域で血流どのように変化するか調べたデータです。

〈スタジオ〉
何か気づきませんか。
似てますよね。

そうなんです、離れた二つの領域では休んでいる時も、課題を行っているときも同じパターンで活動しているんです。

この不思議な現象を本日のゲストと一緒に見ていきたいと思います

ゲスト
情報通信機構 総括主任研究員
宮内 哲

この二つの領域、同じパターンで働いているのはどうしてですか。

宮内 哲
「これは驚きでした。じゃあこれは何をしているか、実はこれはよくわからないんですけど、同期して活動しているということはその両方の領域が強調してある一つの機能を果たしています。」(同期して活動・・・各領域が強調してある機能を果たす)】

これだけぴっったりしていると、何か共通の目的をもってコンビを組んでいるとしか思えないです

宮内 哲
「そうです、情報のネットワークを形成して、ある一つの特定の機能を果たしているのだろうと思います」】

この現象は、レイクル教授によってこの様な名前が付けられています。
デフォルトモードネットワーク(Default Mode Network)

特に何もしてない時のネットワークという意味ですね。

宮内 哲
「何もしてない時に活動している(何もしてない時に動くネットワーク)
理由はまだ良くわからないのですが、いろいろな研究者がいくつかの説を出しています。

自己認識 自分自身に対して何か考えた時、
見当識  自分を見ている自分(自分の置かれた状況を把握する)
記 憶   デフォルトモードネットワークに海馬が含まれている場合が     あるので、記憶に関して何らかの機能を絶たしているのではないかという説もある。

良く考えると、自己認識、見当識、記憶これは全く別のものではないんです。(記憶のない自己はあり得ない。みんな共通の要素がある。)
概念はまだ見つかっていないのですが、なにかすべてに共通した要素があるのではないかと考えています。」】

つまり、ぼーっとしていても、脳は何もしいなかったというわけでは無いのですね

【「ひたすらボーっとしていてもいいし
頭に浮かんで来たことについて施行を巡らせてもいい。」
長谷部誠著 「心を整える」(幻冬舎)より】

ということは、長谷部さんは自分なりの方法として、心を落ち着かせて
整理して、それによって次のサッカーのプレーにつなげようということですかね。

宮内 哲
「長谷部選手が行っている「ぼーっと」している状態と同じかどうかはわからないのですが、座禅を組んでいるときあるいは何か瞑想のとき、その時の脳活動とこのデフォルトモードネットワークは関連している可能性はあると思います。
ファンクショナルMRI(ファンクショナルMRI=fMRI)の場合は、脳のどこであっても活動している場所がきちっと決まるんです。
しかもそこがどれくらい同期しているか、それが全部でてきますので、(どの領域がどの程度同期しているのか測定)
じゃあ、この領域って今までの研究では、どういう機能をしているのだろう、
ということで、いままでほとんど研究されてこなかった、安静時の脳活動というのが、従来の基礎的研究と結びつく可能性が今後出てくると思います。」】

〇何もしていない時の脳内ネットワーク、実はこのデフォルトモードネットワークだけではないんです。(認知症)
次回  ぼんやりと脳活動その2 に続きます。

サイエンスZERO  「”ぼんやり”に潜む謎の脳活動」
2014/8/31 NHKの放送を文章にしてまとめたものです。

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再放送は2014年9月6日(土) [Eテレ] 昼0時30分~

放送日時: 2014年9月6日(土)
昼0:30~午後1:00(30分)
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