ぼんやりと脳活動その2

サイエンスZERO  「”ぼんやり”に潜む謎の脳活動」
2014/8/31 NHKの放送から

ゲ ス ト   : 宮内 哲
司   会    : 南沢 奈央、竹内 薫
キャスター : 江崎 史江
語 り 手   : 中山 準之助

〈VTR〉
ヘルスサイエンスセンター島根
出雲市

島根県にある健康診断を行う施設です。
ここで行われているのは脳梗塞などの兆候をとらえる脳ドック、
それに加えてこんな検査も、受けてもらっています。

「目を閉じて「ぼんやり」していてください
検査時間はだいたい5分ぐらいかかります。」

5分間ただぼんやりするだけ、

実はこれ、安静時の、脳のネットワークを調べる検査だったのです。

島根大学
島根大学では、こうして得られたデータを2010年から解析してきました。

集まったのは、性別も年齢も様々な述べ、1000人分。
昨年その一部をまとめてたものが論文として発表されました。
その結果がこちら、何やらたくさんの線があちらこちらにひかれていますが、

【島根大学 医学部
猪田 慶一 講師
「脳をネットワークとしてとらえたグラフになります。
この点と点の間に線があると、その脳領域間につながりがあることを示しています。」】

いったいどういうことか、fMRIの検査では、脳を4000程の領域に区切り血流の変化をとらえます。
(領域ごとの血流の変化をとらえる)

そのデータを分析、
血流が時間とともにどう変化するのかそのパターンを比較します。
(血流ごとに血流の変化パターンを比較)

そして同じパターンで変化する領域をピックアップするのです。
(同じパターンで変化する領域を抽出)

この作業をすべての組み合わせで行います。

同じ作業をする領域どうしを同じ線の色でつなげていくと、
ほら、先ほどお見せした脳のネットワークです。

このうちデフォルトモードネットワークは緑色、
後部帯状回と前頭葉内側はしっかりつながっています。

でもほかにもさまざま色のネットワークがつながっています。

【猪田 慶一 講師
デフォルトモードネットワークと同じように、安静時においても、いろいろな脳領域が同調した活動をもっている、それが複数あるのだということがわかってきました。。

更にこうした様々なナットワークのつながり方を、50才未満の人たちと70才以上の高齢者に分けて解析してみました。

左が50才未満、右が70才以上の高齢者以上の脳のネットワークです。

先ずは緑色のデフォルトモードネットワークに注目、

高齢者では、50才未満には診られる後部帯状回と前頭葉内側をつなぐ長い線がなくなっています。

一方この部分の赤い色のネットワークを注目すると、なぜか高齢者の方が密につながっている部分があったのです。

猪田 慶一 講師
「ある領域がいろいろな領域とつながるコストを考えると遠いところとつながりを維持する方がコストが高いわけですね。
加齢にしたがって、遠くの領域と つながりをもつ領域が先に影響を受けて、認知機能や運動機能の低下につながっていると考えられます。】

〈スタジオ〉
年を取ると
遠いネットワークは減っちゃうんですね。

宮内 哲
「そうですね
身近なものに置き換えて考えると、たぶんわかると思います
こちらをご覧ください。」】

[宮内 哲
「脳のネットワークと道路網はよく似ているんです。
脳のネットっワークの代わりに道路網として考えます。
高速道路これは離れたところと離れたところわ結んでいる道路ですね。」】

じゃぁ、歳を取って離れたネットワークが減るということは、高速道路が減るということなんですか。

宮内 哲
「そうです
もっと拡大しますと、街中の道路が出てきます。
それでは、街中の道路が一本工事で通れなく無くなっても
いくらでも道がありますのであまり困らない。

じゃあ、高速道路一本通行止めになると
下の道を通ることはできますけれど、非常に時間がかかります。

これを情報のネットワークに戻して見ますと
離れた領域がきれたりしても同じ機能を果たすことはできるでしょう、
ただし非常に時間がかかるでしょう。」】

その時間がかかることとなったのはどう言う意味ですか。

宮内 哲
「たとえば、ある場面で何かを判断する。
あるいは特定の反応をする。
(判断や反応に時間がかかる)
これが遅くなるということですね。」】

ここで注目して頂きたいことがあります。
デフォルトモードネットワークはこちらの領域からなるネットワークでしたよね。
アルツハイマー型認知症の方の脳データです
アミロイドβという物質の分布を示しています。
そっくりですね。
このアミロイドβと言うのは、アルツハイマー病の原因の一つといわれるタンパク質ですね。
おんなじ場所にありますね。
これは何か関係ががありそうですね。

〈VTR〉
そうなんです、それは先ほどの安静時の脳のネットワークを調べる検査。
目指しているのは、認知症の超早期診断です。

その始まりは、2004年アルツハイマー型認知症の人特有のデフォルトモードネットワークのつながり方が明らかになったのです。

たとえば、こちらは健康な高齢者の脳です。

デフォルトモードネットワークとして同じパターンで同期している領域に色を付けました。

黄色い領域ほどぴったり同期しています。

一方こちらは、アルツハイマー病の人は、 同期する領域が減っています。

では同期の仕方は、一人ひとりどれほど違うのか。

アルツハイマー病の人と健康な人と分けてみると、
アルツハイマー病の人では、ネットワークのつながりが悪いことがわかってきたのです。

では、アルツハイマー病におけるデフォルトモードネットワークのつながりは、いつから弱くなるのか。

島根大学では、軽度認知障害の人も調べてみました。

軽度認知障害は、記憶量の低下は見られるものの生活に支障が出るほどではありません。
脳の画像解析でも、健康な人との違いがとらえられないほどです。
こうした軽度認知障害の人、健康な高齢者そして認知症が進行した人それぞれでで比較しました。

その結果がこちら、
右が健康な高齢者、左がアルツハイマー病の人の値です。

では軽度認知障害ではどうか。
脳の委縮がとらえられる前、軽度認知障害でもアルツハイマー病に近い 特徴を示していたのです。

島根大学
山口 修平 認知症疾患医療センター教授
「脳の委縮の前という、アミロイドβの沈着が始まるころから
(デフォルモードネットワークに)
なんらかの以上が出るだろうと 、ま、
データ的にも一部が出ていますので、
認知症の診断にデフォルトモードネットワークの利用が確実にできる
可能性が強いと思います。」】

〈スタジオ〉
デフォルトモードネットワークとアルツハイマー病はメカニズム的には、どう関係しているのですか。

宮内 哲
「そのメカニズム、それはまだわからないのですが、おそらく一番活動しているところにアミロイドβが貯まりやすいではないいかと思います。」】

どういうことなのですか。

宮内 哲
去年出た研究ですけれども、まばたきをしました、まばたきをした直後に一瞬デフォルトモードネットワークが現れる、そう考えると、デフォルトモードネットワークは他の領域に比べてずっと長く活動しているわけですね」】、

そういうことだったのですね。

更にデフォルトモードネットワークは、このような病気との関連も指摘されているんです。
うつ病・自閉症・慢性疼痛・統合失調症・ADHD

これらの病気では、デフォルトモードネットワークはどういう状態なんですか。

宮内 哲
たとえば、うつ病の人、先ほどからデフォルトモードネットワーク、安静時にデフォルトモードネットワークが出現して(安静時に機能、課題時に機能が低下)何かタスクをしているときにこれが下がるという事を説明したのですけれど、でも、うつ病の人は何かタスクをしていてもこのデフォルトモードネットワークの活動があまり下がらないとか。
(うつ病のデフォルトモードネットワーク・課題をしているときに活動が下がらない)
統合失調症の人は逆に、デフォルトモードネットワークのある領域とある領域の結びつきが健康な人よりももっと強くなりすぎてしまっている。
そういった各疾患に応じた、デフォルトモードネットワークの特徴が報告されてきています。
今ほとんどすべての神経精神疾患で、このデフォルトモードネットワーが健康な人と比べてどうかかわっているかの研究が有ります。」】

ベイクル教授が、デフォルトモードネットワークの研究論文を発表して
10年あまりですよね。なにか研究が爆発的に進んでいる印象がありますけれど。

宮内 哲
「今世界中で数千人規模でデータベースが作られてあるいは、疾患別に、 この疾患の人はこういう特徴がありますという、データベースが非常に整理されてきたのですね。
ここ数年だいたい1日1本論文が出ています。」】

デフォルトモードネットワークというのは、かつては切り捨てられていた存在だったけれども、実は宝の山だったということですかね。

宮内 哲
「そうですね、これからもっと研究が盛んになると思います。」】

宮内さん、今日はどうも有難うございました。

サイエンスZERO  「”ぼんやり”に潜む謎の脳活動」
2014/8/31 NHKの放送を文章にしてまとめたものです。

再放送は2014年9月6日(土) [Eテレ] 昼0時30分~

放送日時: 2014年9月6日(土)
昼0:30~午後1:00(30分)
Copyright (C)2016 wp-Ostinato All rights reserved.