糖質制限食とダイエット

糖質制限食を実践して標準体重よりも痩せてしまったとよく聞きます。
食事内容や摂取カロリーを尋ねますと、 主食(炭水化物)を減らした分、ほかの食品(たんぱく質・脂質)を摂っていない、 つまり魚、肉、脂質が不足している場合がほとんどのようです。

つまり、成人として摂るべき約2,000~2,400kcol(男・女や年齢・活動量によって差があります。)のうち1,400kcol以下しかとっていない場合があります。
(厚生労働省の推定エネルギー必要量 別表)
つまり、栄養失調でやせたのです。

太りすぎでのダイエットの場合、BMI20~22ぐらいで止まるところ、痩せすぎ危険域のBMI18.5以下まで痩せてしまったという、ブログの投稿をよく見かけます。(BMIと死亡率・ http://epi.ncc.go.jp/can_prev/evaluation/2830.html)

実は私も、糖質制限を始める前、170cmで64kgでBMI22.1と標準体重でした。
糖質制限開始後体重が減り55.5kgでBMI19.2と危険域に近づきました。
約3年続き、最近半年ほどでやっと58kgになりBMI20まで回復しました。

想えば、私の場合も摂取カロリー不足だったようです。
肉や魚・野菜だけでは量が食べられないのです。
何十年もの間、主食であるご飯やパン麺類と一緒に食べてきたので2,000~2,400kcolの食事ができたのだと思います。
やはり、糖質制限食の場合2,000kcolが限度でした。

最近BMI20まで回復した理由の一つとして、自分で低糖質のパンや麺を作ることができるようになったことが挙げられます。
市販のパンや麺の80~90%ofですので、血糖値もほとんど上がりません。
肉や魚・野菜そして油(脂質)も以前の1.5倍は食べられるようになりました。

もうひとつ忘れていけないのが食物繊維です。
食物繊維にもカロリー(0~2kcal)があるのです。
腸内細菌により短鎖脂肪酸となり、大腸から吸収されます。
http://wp-ostinato.eek.jp/wp/syokumotuseni-no2/
私が作っている丸パンは、ローソンのブランパンの約半分の糖質です。
食物繊維が多い分糖質が下がったのです。そして満腹感もあります。

ダイエットとは健康や美容のために、太りすぎた体を標準体重に戻すことです。
それ以上やせることはダイエットではないと思います。

体には脂肪も必要です。
脂肪酸は、体内に入り脂肪組織の中にエネルギー源として蓄えられます。
(ブドウ糖だけでなく脂肪酸もエネルギーとして利用されています。 最近は短鎖脂肪酸が腸内フローラ関連で話題になっています。そしてケトン体も短鎖脂肪酸です。)
また脳や各種ホルモン、人体の細胞膜を構成する材料となるなど重要な働きをしています。

極端なエネルギー不足の場合には、免疫力が落ち、感染症(インフルエンザなど)
になりやすくなるものと思われます。

 

参考までにストライヤー生化学から
飢餓状態が続き中性脂肪(TGトリアシルグリセロール)を使い果たした時、タンパク質の分解が加速し、否応なく死に至るとあります。

【ストライヤーの生化学第7版 東京化学同人 755pより】
http://goo.gl/MHByJC

タンパク質分解も糖新生の炭素骨格を供給する。
中略
しかしほとんどの動物では、生き残れるかどうかは素早く動けるかで決まり、それには大量の筋肉が必要になる。
そのため、筋肉の損失は最小限に抑えなければならない。

筋肉の損失はどのようにして抑えるのだろう。
飢餓のおよそ3日後には、大量のアセト酢酸とβヒドロキシ酪酸(ケトン体)が肝臓でつくられる。

○アセチルCoAからのこれらの合成が著しく増加するのは、脂肪酸の分解で生じるアセチル基すべてをクエン酸回路で酸化することはできないからである。
○アセチルCoAをクエン酸回路に入れるのに必要なオキサロ酢酸が、糖新生によって使い果たされてしまうのである。
○その結果、肝臓では大量のケトン体が形成されこれが血中に放出される。

この時点で脳はかなりの量のアセト酢酸をグルコースの代わりに消費し始める。
飢餓の3日後には脳のエネルギーの約1/4はケトン体で賄われるようになる
心臓もケトン体を燃料として使う。

飢餓が数週間続くと脳の主な燃料はケトン体になる。

○スクニシルCoAからのCoAの転移によってアセト酢酸が活性化され、アセトアセチルCoAとなる。
○アセチルCoA C-アセチルトランスフェラーゼ(チオラーゼ)による分解で2分子のアセチルCoAが生成し、これがクエン酸回路に入る

本質的にはケトン体は脂肪酸と等価な化合物だが脳が燃料として利用できる。
飢餓1日目には脳が必要とするグルコースは1日当たり約120gであるが、この時点ではわずか40gになる。

肝臓が脂肪酸を効率よくケトン体に変換し、脳でこのケトン体が利用されることによって、グルコースの必要量が著しく減少するのである。
したがって飢餓初期よりも筋肉の分解は少なくなる。
飢餓初期に1日当たり75gだった筋肉の分解量が20gに減ることは、生存にとって極めて重要である。

生存可能な飢餓の期間は、主としてヒトのトリアシルグリセロール貯蔵量によって決まる

貯蔵したトリアシルグリセロールが使い果たされた時にはどうなるのだろう。
残された唯一の燃料源はタンパク質である。
タンパク質の分解が加速し、心臓、肝臓、腎臓の機能が失われて否応なく死に至る。

糖質制限食とLDL-Cそしてケトン体

●糖質制限食を始めてLDL-Cが増えたが・・・。
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3583.html

●コレステロール摂取基準撤廃。日本動脈硬化学会が声
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3374.html

●糖質制限食とケトジェニックダイエット、尿中ケトン体。
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3107.html

※私の血中総ケトン体(アセト酢酸・βヒドロシキ酪酸)は、普段4,000~5,000です。 尿中ケトン体は-(陰性)です。http://goo.gl/pM2ha2

インフルエンザと糖尿病そしてケトアシドーシス

去年の3月11日に2型糖尿病の親戚S(男性71歳)がケトアシドーシスで死亡しました。

Sは、インスリンを注射しながら、炭水化物や糖質の入ったアルコールを多量に飲食していました。
HbA1cも10を超えているようでしたので、Sの家族もかなり心配していたようです。
特に長男は、医薬品関連の会社に勤務する薬剤師だったので、何度も注意していたようです。

Sは、同年の1月中ごろにインフルエンザに感染し、食欲がなくなったそうです。
そして、低血糖を心配した長男の判断で、インスリン注射をやめたそうです。
(ここですぐに総合病院で検査を受ければ助かったのでは、薬剤師としての判断が甘かった。江部先生のブログで糖質制限を勉強している人にとっては常識なのに。)

その後、意識がもうろうとなってきたので、低血糖だと思いブドウ糖をなめさせたそうです。

病院での検査の結果、「高血糖でケトーシス」でした。

一命は取り留めたものの、2ヵ月入院後に死亡しました。
長年の炭水化物摂取のため、2型糖尿病のインスリン依存型になっていたのかも知れません。
Sは長年糖尿病専門医の下で治療を受けていたそうです。
主治医は、Cペプチドの検査で、内因性のインスリンを把握し、家族にも伝えておくべきだったのではと思いました。

また、江部先生の著書「糖質制限食パーフェクトガイド47pより」
【2型糖尿病の人が感染症、外科的処置などによりインスリン需要が増大する場合も、インスリン注射を必要としますので、一時的なインスリン依存状態といえます。】
とありますように、感染症による一時的なインスリン依存状態だったのでしょうか。

何もわからないまま、葬儀会場でSの死因(ケトアシドーシス)を知っていたのは、Sの長男と私だけでした。

 

糖質制限食とケトン体その2

糖質制限食を実践していくうえで知っておきたいケトン体について解説していきます。

内容はすこし専門的になりますが、糖質制限食パーフェクトガイド 江部康二著 などの糖質制限関連の本とあわせてご覧ください。

二回目はケトン体の役割(使われ方)をお話しします。


ケトン体は人体のエネルギーとして使われますが、

ここで人体のエネルギーシステムを整理してみます。

①解糖系

糖質→グリコーゲン→ブドウ糖
まず血液中のブドウ糖がエネルギーとしてして使われます、次に肝臓に蓄えられたグリコーゲンからブドウ糖が作られます。

②糖新生

●脂肪組織→グリセロール(中性脂肪の分解物)→ブドウ糖
●筋肉→アミノ酸→ブドウ糖
●ブドウ糖代謝→乳酸→ブドウ糖

肝臓にグリコーゲンが無くなった場合に糖新生によってブドウ糖が作られエネルギーとして利用されます。
赤血球にはミトコンドリアが無いので、ブドウ糖しかエネルギーとして利用できません。そこで糖質の摂取量が少なくても、ブドウ糖が不足しないよう糖新生によりエネルギーが確保されています。

③脂肪酸

脂肪が分解さえた脂肪酸がエネルギーとして使われます。
脳の場合は、血液脳関門があるため、脂肪酸は分子が大きく脳細胞内に到達できず、利用できません。

④ケトン体回路

脂質→脂肪酸(β酸化→アセチルCoA)→ケトン体


ケトン体は人体にとってどのような役割を持っているのか

糖質の摂取が少なくなるとグルコース消費が抑えられ、ケトン体が使われます。

ケトン体は肝臓以外の臓器にエネルギーとして提供されています。

また前述したように赤血球にはミトコンドリアが無いため、ブドウ糖のみがエネルギーとなりケトン体を使うことはできません。

通常GULT1(糖輸送体GULT1は赤血球・脳・網膜などに備わっていていつでもブドウ糖を利用できる)によりブドウ糖を優先して使う脳や網膜細胞もケトン体を利用することができます。

脳は、血液脳関門があるため、エネルギーとして分子の大きい脂肪酸を利用することができませんが、ケトン体は利用できます。
このためケトン体は脳でのエネルギー(ブドウ糖の代替エネルギー)として重要な役割を担っています。

また、骨格筋や心筋でもエネルギーとして積極的に消費されています。

ケトン体はタフなエネルギーである

ブドウ糖の場合、体に蓄積できる量は肝臓のグリコーゲンとしての600Kcolが精一杯のところ、ケトン体の場合材料である中性脂肪は脂肪酸などで10万Kcol分、タンパク質は筋肉などに2万4000Kcol分もの量を蓄積できます。グリコーゲンの600Kcolだと安静時の8時間分のエネルギーですが、中性脂肪だと55日分のエネルギーに相当する事になるのです。(BergJM他:ストライヤー生化学第6版 東京化学同人2008)

まとめ

糖質制限を実践すると、エネルギーとしてケトン体を使うことが多くなり、多くの脂肪を消費することになります。
そしてメタボ解消やダイエットの効果につながるものと思われます。


参考にさせていただいたサイトと著書
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%88%E3%83%B3%E4%BD%93
糖質制限食パーフェクトガイド 江部康二著

糖質制限食とケトン体その1

糖質制限食を実践していくうえで知っておきたいケトン体について解説していきます。

内容はすこし専門的になりますが、糖質制限食パーフェクトガイド 江部康二著 などの糖質制限関連の本とあわせてご覧ください。

一回目はケトン体が作られるメカニズムをお話しします。

ケトン体とは、
アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトンの総称。
脂肪酸ならびにアミノ酸の不完全代謝産物である。

ケトン体が作られる仕組みには2種類あります。

①インスリンが枯渇しグルコース代謝に異常をきたしたとき

Ⅰ型糖尿病患者がインスリン注射を中断した場合や、Ⅱ型糖尿病患者が大量のペットボトル飲料を一度に飲んだ場合などに、グルコース代謝に異状をきたしケトン体が大量に作られます。
この様な状態をケトーシスと呼びます。

細胞内にグルコースを取り込む役割をするグルコーストランスポーターのGLUT4(GLUTとは糖輸送体でGLUT1~GLUT14まであります)は、主に脂肪細胞、筋肉細胞(骨格筋、心筋)に認められます。
ふだんは細胞内に沈んでいますが、インスリンが追加分泌され感知すると、細胞膜上へと浮上してグルコースを細胞内に取り込みます。

このためインスリンが枯渇していると(インスリン作用の欠乏)肝臓、筋肉といった組織がグルコーストランスポーターを介して血糖を細胞内に取り込むことが出来ず、エネルギーとして利用できません。
そのため、体内に蓄積した脂肪酸をβ酸化することによりアセチルCoAを取り出し、肝臓でケトン体を作りエネルギーとするのです。

この様なケトーシスは、グルコース代謝に異状をきたし代償的にケトン体でエネルギー代謝を賄おうとして引き起こされたものです。

これはグルコース代謝に異状をきたした結果としてケトン体が増加(ケトーシス)したもので、きわめて危険な病的なケトン体上昇です。

これによりアシドーシス(酸血症)になりアシデミアとなり結果ケトアシドーシスとなります。
そして糖尿病性のものを糖尿病性ケトアシドーシスといいます。

ケトアシドーシスの流れ

インスリン作用欠乏→拮抗ホルモンの過剰→全身の代謝障害→糖利用の低下・脂肪分解の亢進→高血糖・高遊離脂肪酸血症→ケトン体生産の亢進

②インスリン作用がある程度保たれている場合

糖質制限、絶食、激しい運動、高脂質食(ケトン食)などによってケトン体が生成(ケトン体上昇)されケトーシスになります。

糖質制限などにより糖質の摂取が減りますと、ブドウ糖に代わるエネルギーとしてケトン体が作られます。

これは、インスリン作用がある程度保たれている状態でケトン体が生成される生理的なケトン体上昇で、安全なケトン体増加です。
したっがって、インスリン作用が保たれているためケトアシドーシスにはなりません。

まとめとして肝臓でのケトン体生成の流れを模式化します。

脂肪酸→β酸化→アセチルCoA→ケトン体

2014/9/2追記
インスリン作用が保たれている場合のケトーシスについて、江部康二医師のブログで読者の質問に詳しく解答されていますのでリンクします。

参考にさせていただいたサイトと著書

アシドーシスとアルカローシス

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%83%89%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%81%A8%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%82%B9
ケトン体
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%88%E3%83%B3%E4%BD%93

糖質制限食パーフェクトガイド 江部康二著

 

次回はケトン体の利用についてお話しします。

 

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