インクㇾチンとDPP4阻害薬

過去に掲載したインクㇾチンとDPP4阻害薬の記事を再掲載します。

前回、グルコースが膵β細胞に作用してインスリンが分泌される仕組のほかに、インクㇾチンにもインスリン分泌を促す作用があることを記載しました。

インスリン分泌の仕組み

今回は主にインクㇾチン、関連してDPP4阻害薬・GLP-1受容体作動薬について記載します。

経口投与されたグルコースは小腸のL細胞に作用してGLP-1 (glucagon-like peptide-1)を分泌し、またK細胞に作用してGIP (glucose-dependent insulinotoropic polypeptide)を分泌する。
これらGLP-1 、GIPを総称してインクレチンという。

インクレチンは膵β細胞内においてcyclic AMPを産生し、protein kinase Aを介して電位依存性Ca2+チャネルをリン酸化することによってCa2+イオンの流入を促進する。
よって、食後高血糖になる場合、2つの経路によってインスリンが分泌されることになる。
一つはグルコースによってATPが産生され、ATP感受性K+チャネルが閉鎖することによって脱分極し、電位依存性Ca2+チャネルが開口してCa2+イオンが流入する経路。
もう一つは、インクレチンによってcyclic AMPが産生され、上述した過程により電位依存性Ca2+チャネルが開口してCa2+イオンが流入することによってインスリンの分泌が促進されることになる。

DPP-IV阻害薬】

インクレチンはDPP-IV (dipeptidyl peptidase-IV) によって分解され、血中半減期は5分程度である。
このDPP-IVを阻害して血中のインクレチン濃度を上げるとインスリン分泌が増加するだろうと云う概念でDPP-IV阻害薬が開発された。

インクレチンは、膵β細胞内においてcyclic AMPを産生するために、膵β細胞の保護作用、増殖促進作用を示す。
GLP-1あるいはGIPによって産生されたcyclic AMPはプロテインキナーゼA (PKA)を活性化し、PKAはCREB (cyclic AMP応答タンパク質)を活性化することによってアポトーシス(積極的、機能的細胞死)を誘発するカスパーゼ3(caspase 3)を抑制し、膵β細胞の死が抑制されることになる。
また、プロテインキナーゼA (PKA)は、MAPキナーゼなどを活性化して膵β細胞の分化・増殖を促進する。
一方、プロテインキナーゼA (PKA)は、CREB (cyclic AMP応答タンパク質)を活性化して、IRS2の発現を促進し、PI3K/Aktを介して、PDX-1 (pancreatic duodenal homeobox-1)を活性化して膵β細胞の分化・増殖を促進する。

○GLP-1とGIPは、いずれもインスリン分泌を促進するが、少し作用が異なっている。
●GLP-1は、インスリン分泌促進作用、膵臓β細胞増殖作用、膵β細胞死抑制作用、グルカゴン分泌抑制作用、胃排泄能抑制作用、中枢性食欲抑制作用を示す。
●GIPは、インスリン分泌促進作用、膵臓β細胞増殖作用、膵β細胞死抑制作用を示すと共に、脂肪細胞に作用して脂肪の取り込みを促進し、肥満を誘発する作用を示す。

GLP-1受容体作動薬】

GLP-1はDPP-IVによって分解され、血中半減期は5分程度であることから、このDPP-IVを阻害して血中のインクレチン濃度を上げるとインスリン分泌が増加するだろうと云う概念でDPP-IV阻害薬が開発されたことは上記した。

GLP-1と同じような作用をする薬を外から投与すれば、すい臓からインスリンが分泌される過程を促進できることが分かる。
GLP-1そのものは体内で素早く分解されるため、分解されにくいようにGLP-1の構造を少し変えることで糖尿病治療薬が創出された。
そして、GLP-1受容体に結合する薬物がGLP-1受容体作動薬として開発された。
(薬の詳細や副作用については、こちらのサイトを参考に)

これらの薬剤は、体内の血糖値に応じて作用し、高血糖の時にのみ膵臓からのインスリン分泌を促進するため、インスリン治療に比べて低血糖発現率が低いと言われている。
また、いずれも体重減少や膵β細胞の保護作用を示すことも報告されている。

※参考にしていただきたい図
https://www.google.co.jp/search?q=dpp4%E9%98%BB%E5%AE%B3%E8%96%AC%E3%81%A8%E3%81%AF%E5%9B%B3&biw=1600&bih=751&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ved=0ahUKEwi3hrXUl_PQAhWEvrwKHWcfDqgQsAQILA

参考にさせていただいたサイト
http://kusuri-jouhou.com/medi/diabetes/dpp4.html
http://polaris.hoshi.ac.jp/openresearch/index.html

追記
江部先生の(2017年07月23日)ブログ記事「DPP-4阻害剤。低血糖を起こしにくい。SU剤との作用機序の違い。」
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4269.html

マイクロRNAその2

前回に続き

マイクロRNAその1


NHKサイエンスゼロ  2015/2/22放送
「がんも!老化も!? 生命を操る マイクロRNA」

から
マイクロRNAその2を掲載します。

ナビケーター:南沢 奈央・竹内 薫
アナウンサー:江崎 史恵
国立がん研究センター研究所
分子細胞治療研究分野長
落谷 孝弘

 

VTR

細胞の老化や寿命を専門にしてきた
広島大学大学院 細胞分子生物学研究所
田原 栄俊 教授です。

田原さんは、老化にもマイクロRNAが関係しているのではないかと考え研究を進めました。
この研究で使ったのは、人の繊維芽細胞。
全身に存在する細長い細胞で、細胞分裂の回数に限界があることがわかっています。
分裂を1年ぐらい繰り返すと細胞がおおきく広がった形になってしまいます。
老化したのです。
見た目にもわかりやすいため老化研究でよく使われています。

田原さんは若い細胞と老化した細胞で含まれるマイクロRNAに違いがないか調べてみました。
まず培養した線維芽細胞に薬品を入れて溶かします。
マイクロRNAは透明な部分に溶けています。
この透明な部分の液体を分析しました。

線維芽細胞に含まれるマイクロRNAはおよそ1000種類。
若い細胞と老化した細胞でその量を比較しました。
その結果大きな違いが見つかったのがマイクロRNA22番です。
調べた線維芽細胞は3種類、若い細胞と老化した細胞ではこのマイクロRNA22番が2倍以上違っていたのです。

このマイクロRNA自体になにか機能はあるのか、田原さんたちは若い線維芽細胞に注入してみました。
これがマイクロRNAを入れる前、青く見えるのは細胞の核です。
3日経つと細胞はたるんだように広がり数も減っていました。
通常これほどの変化が起きるには100日ほどかかるといいます。
マイクロRNAのせいでたった3日で老化したのです。

田原:
我々の体の中ではある一定の細胞分裂をした後に止まるというプログラムがあります。
これは老化のプログラムというのですが、
それ以上増えてしまうとその細胞自身の機能が悪くなる、あるいは変な細胞になるということが起こりやすくなってしまいますので、
このマイクロRNA22いうのは非常に重要な機能をしているのだろと考えています。

STUDIO

奈央:
へー、マイクロRNAによって細胞があっという間に老化してしまうのが驚きでしたね。

竹内:
浦島太郎の玉手箱を開けてしまうような、あっという間でしたね。
逆に、若返るためのマイクロRNAはないんですか。

落谷:
おそらく、あると思います。
世界中の研究者が考えていると思いますが、残念ながら今ではまだわかっていません。

竹内:
でも、老化のプログラムも体にとっては重要なんですよね。

落谷:
そうですね、実際に我々が生きていますと、その細胞のゲノムには傷がついてしまいます。
そういった傷んだ細胞を排除するシステムとして老化というものがある。
ですから、そういったことができなくなると、とっても危険な状態なんですね。

奈央:
それって、癌細胞ということですか。

落谷:
まさに、その通りです。
実はマイクロRNAにおこる異常が癌と非常に強く結び付いているのです。

江崎:
そうしたですね、癌とかかわり深いマイクロRNAを見つけることで、癌の治療に応用しようという研究が行われています。

VTR

国立がん研究センター研究所
ゲノム生物学研究分野
ユニット長 土屋直人

土屋直人さんたちの研究グループは
癌の増殖を抑えるマイクロRNAを見つけました。

際限なく増殖する癌細胞、
増殖が制御できないのは多くの場合p53という遺伝子が壊れているからです。
細胞の異常な増殖を抑えるp53は、がん抑制遺伝子と呼ばれ、
癌研究では長く研 究されてきました。

そこで土屋さんたちはp53とともに活性化するマイクロRNAを探しました。
用意したのは大腸がんの細胞です。
ここに抗がん剤を加えます。
すると増殖を抑えるp53が活性化します。
そして抗がん剤を加える前後のマイクロRNAの量を測ります。
調べたのはおよそ170種類のマイクロRNA
その一部がこの表です。

増えたのは7種類、その中でp53と関係が深いとして注目したのがこの34aです。
これが34aの塩基配列、p53とともに増えたので、逆にこれを入れればp53が活性化し異常な増殖が抑えられるかもしれません。
土屋さんたちは、大腸がんの細胞に34aを加えて効果を見ました。
マイクロRNAを投与しないと大腸がんの細胞は急激に増殖します。
しかし入れた方はがんがほとんど増殖しませんでした。

マイクロRNAによってp53遺伝子が働き異常な増殖が抑えられたと考えられます。
生体内でも同じことが起こるのかマウスの背中に人の大腸がん細胞を移植しマイクロRNA34aの効果を見ました。
癌細胞を移植して14日目右側のマイクロRNAを投与しなかった癌は大きくなっています。
一方マイクロRNAを投与した癌はそれほど大きくなっていません。
生体内でもがんの増殖を抑える効果があることが確かめられたのです。

2007年土屋さんたちは論文として発表。
これがマイクロRNAが癌の治療に使える可能性を示した世界で最初のものでした。

国立がん研究センター研究所  ゲノム生物学研究分野
ユニット長 土屋直人:
分子標的治療薬とか抗がん剤とか抗体薬品とかいろいろ開発されていますがそれプラス核酸薬品のような、作用機序が異なった方法を開発する価値があると強く信じています。

STUDIO

奈央:
へえー、マイクロRNAでがんの治療までできる可能性があるんですね。

竹内:
それって、驚きですよね、
マイクロRNAはメッセンジャーRNAの働きを止めるんですよね
そうゆうことは、何かを止めるとp53遺伝子が働きだすっていうことですか。

落谷:
一つのタンパク質は別の多くのタンパク質によってコントロールされています。
でこのマイクロRNA43aの場合はおそらくp53を抑え込んでいるタンパク質を解除していると考えることができます。

竹内:
つまり邪魔者を働かなくするということですか。

落谷:
そーゆうことですね

奈央:
マイクロRNAって、体の外から薬のような形で体の中に入れるっていうのは大丈夫なんですか。

落谷:
マイクロRNAっていうの、、みなさんの体の中にもともとあるものですね、その増えたり減ったりしているものを、元に戻してあげる
ひょっとしたら、私たちにとって優しい治療になるのではないかと考えられています。
しかし、こういったマイクロRNAを標的に治療薬を開発するにはかなりの時間が要すると考えられています。
しかし先ほどお話に出た細胞の外に出るマイクロRNA、つまり我々の血液でがんに特異的なマイクロRNAを見つける、こういった新しいがんの診断これはもっと早く開発が進むと考えています。

奈央:
あ、番組の冒頭にちょっと出てきた血液一滴で診断できるっていうやつですか。

落谷:
そうですね。
実は癌になると、その癌に特有のマイクロRNAがその患者さんの血液中に出てきます。
これを利用して新しい診断が今進もうとしているんですね。

これはですね、縦軸にある患者さんのマイクロRNAの量を示しています。
健康な方ではこのマイクロRNAはほとんど見つかりません。
ところが癌になるととても増えるんですね。
そしてこの癌を例えば手術で取り去ったとします。
そうなると術後ある一定期間は必要ですけど正常のレベルに戻るんですね。
残念ながら、また再発をした場合は、また同じマイクロRNAが患者さんの血液中に出てくる。
つまり、血液中のマイクロRNAを見るだけで、その患者さんの中で癌がどういった振る舞いをしているか、これが手に取るようにわかる、そーいったことなのですね。

奈央:
ほんとに敏感に量が変わるんですね。

竹内:
現在でも血液中の腫瘍マーカーを調べて癌を調べたりしますけど、それとは違うんですか。

落谷:
腫瘍マーカーというのは優秀なものがたくさんあります、
実際に、腫瘍マーカーというものは癌が大きくなって、
癌細胞が死んでその結果患者さんの血液中に出で来る、そーいったものなのですね。
残念ながら癌が早期でゆっくり増えて細胞があまり死なない、そーいった状況ではなかなか見つけられないのですね。
ところが癌細胞、癌が小さいとき、初期でもおしゃべりをしていますね、
例えば血管内皮細胞にマイクロRNAを届けてそして血管を引っ込んでそこから別の遠隔地の臓器に転移していく、そうゆうこともしたり、
あるいは自分を攻撃しようとしてやってくる免疫細胞に、ある特定のマイクロRNAを送り込んで、その細胞をいわゆる撃退するそういったこともしてるんですね。
そういったおしゃべりの道具であるマイクロRNAを使えば新しい診断ができるという可能性があるということですね。

奈央:
癌細胞がマイクロRNAを使っておしゃべりをしてくれてるおかげで早期診断ができるということなんですね。

落谷:
そうなんですね、まさに我々人類が逆手にとって、今度はがん細胞に仕返しをしようってことなんですね。

竹内:
これは、実用化っていうのはいつごろになりそうですか。

落谷:
13種類のがんすべてがマイクロRNAで診断できるのは2020年ぐらい、
そういったところをめどにしています。
でも、すでにもう我々の基礎研究から乳がんを始めとしたいくつかの癌では、
こういった新しい診断が可能であるということが分かっていますので、
実現は少し早いかもしれませんね。

竹内:
今ですと大腸の内視鏡検査だったり、胃の内視鏡検査だったり、CTスキャンを取ったりだとか臓器ごとに癌を調べなければいけないじゃないですか、
それが血液一滴でいいというのはすごいですね。

江崎:
落谷さんどうも有難うございました。

それではサンエスゼロ次回もお楽しみに

 

 

マイクロRNAその1

NHKサイエンスゼロ  2015/2/22放送
「がんも!老化も!? 生命を操る マイクロRNA」

からの掲載です。
http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp496.html

ナビケーター:南沢 奈央・竹内 薫
アナウンサー:江崎 史恵

最近注目のマイクロRNAについてです。

血液検査によるがんの早期発見、そして、近い将来がん治療にも。

去年糖尿病治療で、論文が発表されています。
【糖尿病のマウスに遺伝子の働きを抑える「マイクロRNA」という分子を注射して血糖値を下げることに東北大のチームが成功した。
血糖値を下げるインスリンを分泌する膵臓の細胞が再生されたという。
糖尿病の新たな治療法につながる可能性がある。】
http://www.asahi.com/articles/ASJDG6V5VJDGUNHB00M.html?iref=comtop_8_06

VTR

2014年8月がんの早期診断方法を新たに開発する国家プロジェクトが始まりました。
これが成功すれば血液を一滴調べるだけで13種類の癌が極めて初期の段階でも診断できるようになるというのです。
プロジェクトの鍵を握るのは、国立がん研究センターに保管された70万にも及ぶ癌患者の血液です。
そこからがんの初期段階でも変化がが現れるというある物質を見つけ出そうというのです。

その物質とは、

癌になると血液中に増えてくる、マイクロRNA

マイクロRNAというのは小さなRNAの一種で
実は最近、このマイクロRNAが生命活動の維持にとって
とても重要な調整役をしていることがわかってきたのです。

生命の設計図DNAから転写されるRNA中でもとっても小さなマイクロRNAが重要だというのです。

生命を裏から操り癌の早期診断にも役立つというマイクロRNAに迫ります。

STUDIO

奈央:
マイクロRNA初めて聞きました私。

竹内:
ですよね、注目されてからまだ10年ちょっとなんで知らなくて当然です。
ただ、今、生命科学でとってもホットな分野なんです。
しかも血液中にあるマイクロRNAを調べると癌の早期診断もできるということなんですね。
もし、これがほんとうにできたら画期的ですよね。

奈央:
マイクロというのはすごく小さいということですよね、RNAというのはなんでしたっけ。

竹内:
DNAは知ってますよね。

奈央:
はい、細胞の中にあるタンパク質の設計図ですよね。

竹内:
RNAはDNAの仲間なんです。
DNAはデオキシリボ核酸
RNAはリボ核酸

江崎:
そもそもRNAとはどのようなものなんでしょうか。
後ろに並んでいるのはDNAなんです。
DNAはタンパク質の設計図なんですが、ここから直接タンパク質が作られるわけではないのです。
この情報をいったんRNAにコピーするんです。
では、どのようにコピーされるのかと言いますと
この、DNAをじっくり見てください
四色ありますよね
これ塩基と言いまして
四種類あるんです。
DNAがほどけますと
RNAがやってきます

奈央:
ほおー、繋がっていきますね

江崎:
そうなんです、DNAの並びにそってこの様に繋がっていきます。
では、どうやって並びにそって繋がっていくのかと言いますと、
DNAとRNAの塩基は繋がる相手というのが完全に決まっているんです。
RNAの塩基も四種類、DNAの塩基も四種類、
今回は繋がる相手の色を似たような色として表しているんですね、
例えば緑には青、DNAの赤にはRNAの黄色といったぐあいですね、
同じ色どうしはくっつきません。
こういった法則がありますので、
DNAの塩基の並び方の情報がしっかりとRNAにコピーされるということなのです。

奈央:
なるほど

江崎:
このコピーされたものはメッセンジャーRNAと言います。
そして、塩基が数千くらい繋がっているんです。
そのメッセンジャーRNAからの情報を読み取ることで
この様にですね、この白いのがタンパク質なんですけど
タンパク質が作られていくわけです。

奈央:
これがRNAの役割なんですね。

竹内:
さあ、ここで恒例の奈央ちゃんに質問です。
DNAの中でRNAにコピーされるのは何%ぐらいでしょうか。

奈央:
ええ、ちょっと想像もつかないですね

竹内:
言い換えるとDNAの中でタンパク質の設計図になっている部分は何%でしょうか。

奈央:
難しいですね

竹内:
ヒントを出しましょうか、大腸菌の場合だと86%です

奈央:
へえー、じゃあ近いんじゃないですかね。
8割ぐらい80%

竹内:
ブブー
答えです、1.4%

奈央:
ええー、少ないですね
じゃー、他の部分は何をしてるんですか。

江崎:
他の部分もRNAにコピーされるんですけどちょっと役割が違うんです。

DNAの中でもタンパク質の設計図にならない部分からコピーされたRNAです。
このRNAは22塩基くらいにまで短く切り刻まれるんですね、
奈央さんこの小さなRNAが本日の主役、マイクロRNAです。

奈央:
これが今日の主役なんですね、だけどメッセンジャ―RNAに比べてだいぶ短いですよね。
これは何をしてるんですか。

江崎:
マイクロRNAは働くときにメッセンジャーRNAにくっつきます。

奈央:
ほー、ぴったりくっつきましたね。

江崎:
はい、くっつかれたRNAはタンパク質を作ることができなくなります。
つまりメッセンジャーRNAの働きを止める役割なんですねえ。

奈央:
こんな短いのがくっつくだけで。

江崎:
そうなんです
この様にしてマイクロRNAは体の中でいろいろ作用してるんですね。
どのようなことが起きるのか見てみましょう。

VTR

東京大学 分子細胞生物学研究所
RNA機能研究分野
泊 幸秀 教授

体の中でマイクロRNAがどのような働きをしているかを調べていいる、
東京大学の泊幸秀さんの研究グループです。

受精卵が成長するときマイクロRNAが重要な働きをしているというのでゼブラフィシュでの実験を見せてもらいました。
ゼブラフィシュは受精後2日ぐらいまで体が透き通っています。
体の中の器官がよく見えるため活性の実験でよく使われています。
これは正常なゼブラフィシュの受精卵、この部分は栄養などなどが入った卵黄
魚類では画面上の部分が細胞分裂していきます
その様子をよく見てみると細胞は分裂を繰り返し。受精から4時間を過ぎると卵黄を取り囲み始めます。
そして30時間ほどでこのような魚の形になるのです。
この様な成長にマイクロRNAはどんな役割を果たしているのか、
ある、1種類のマイクロRNAの働きを止める物質を受精卵に注入して調べました。
受精から30時間後、右が働きを止めたもの尾が曲がってしまっています。
この部分が心臓、左は強く鼓動していますが右の鼓動は弱くなっています。
マイクロRNAを1種類止めただけで正常な発生ができなくなるのです。

今回の実験ではマイクロRNAの430番というものを阻害しました。
このマイクロRNAは母親由来のメッセンジャーRNAからタンパク質が作られるのを邪魔する働きを持っています。

どういうことかというと
ゼブラフィシュの受精卵では、まず最初は母親が残したメッセンジャーRNAからタンパク質を作ります。
このタンパク質が細胞分裂を促すのです。
受精から2時間半後子供の遺伝子が働く時期がやってきます。
この後は母親由来のタンパク質が邪魔になります。
そこで子供が作り出すのがマイクロRNAの430番です。
430番は、母親由来のタンパク質にくっつき、母親由来のタンパク質が作られないようにするのです。
こうして子供本来のタンパク質だけを使うことで正常に発達します。
しかし430番を止めてしまうと、母親由来の余計なタンパク質が作られ続けてしまいます。
そのため本来働くはずの子供のタンパク質が邪魔されてしまうと考えられています。
成長がうまく進まないのはこのためです。
マイクロRNAは発達の主役が母親から子供にバトンタッチされるを制御していたのです。

STUDIO

奈央:
へー、お母さん由来のメッセンジャーRNAをマイクロRNAがぴったりくっついて止めることで成長がちゃんとできるようになっていたのですね。

竹内:
そうなんですね、さらに面白いことは、マイクロRNA430はお母さん由来の数百種類のメッセンジャーRNAを止めることができるんですよ。

奈央:
えー、1種類のマイクロRNAだけで、そんなたくさんのメッセンジャーRNAを止めることができるんですか。

竹内:
そうなんですよ。

江崎:
こちらがマイクロRNA430の塩基配列です。
そしてこちらがお母さん由来のメッセンジャーRNAです。
沢山ある中の4つです。
ここにマイクロRNA430がこのようにくっついてタンパク質が作られないようしているんです。

竹内:
奈央ちゃんこれ、なんか気づきませんか。

奈央:
いや、ところどころくっついてないですよね。

竹内:
はいはい、くっついている部分とくっついてない部分がありますよね。
実はマイクロRNAは、一部分しかくっつかなくてもタンパク質が作られるのを止めたりできるんですよ。
だから数百種類を相手にできると。
だから複雑に生命を操ることができるんですね。

江崎:
その仕組みなどについて専門家に伺いましょう。

国立がん研究センター研究所
分子細胞治療研究分野長
落谷 孝弘さんです

奈央:
あんなに小さなマイクロRNAがいろんなタンパク質を作れなくしてしまうってすごいですね。

落谷:
そうですね実はこの発見に一番驚いたのは、私たち研究者かもしれません。
メッセンジャーRNAというのはDNAを確実にタンパク質にするための中間体だと思われてきました。
したがって中間体そのものには機能はないと考えられていましたけれども、実はマイクロRNAのような機能を持っているRNAが、実は我々にとってDNAやタンパクと同様にですね、とても重要な機能を持っていることが非常に大きなな発見なんです。

奈央:
ちなみに、さっきのはマイクロRNA430でしたけれど430というのは種類の数。

落谷:
そうなんですね、我々人では2500種類以上のマイクロRNAが見つかっているんですね。

奈央:
そんなにあるんですか、しかも1種類でいろんなタンパク質に作用するんですよね。

落谷:
そうですね。
1つのマイクロRNAが先ほど出たように、何百、時には1000を超える遺伝子を制御するといわれています。
先ほど例にあったゼブラフィシュのマイクロRNA430というものは少し特殊で、相手を完全に抑えるわけですけれども、一般的なマイクロRNAはおそらく相手をおそらく20%程度しか抑えることしかできません。
でもマイクロRNAの働きがたくさんの相手に及ぶため、こういったすごくおおきな働きがでるんですね。

奈央:
そんな複雑なんですね。

竹内:
そうしますと、その数ですね、
人と違う生物では違ってくるんですか。

落谷:
そうですね、いわゆる、ショウジョバエというものは人のゲノムの半分といわれていますけれども、マイクロRNAに比較すると人はショウジョバエの5倍ほどのマイクロRNAを持っているんですね。

奈央:
へえー

竹内:
5倍と言いうことは人間の方が機能がたくさんあるっていうことなんですか。

落谷:
そうですね、マイクロRNAの数が多ければそれだけ調節をする複雑さが増してきます。
より高度な、いろんな生理的な調節がマイクロRNAによって達成されている。
ですから、われわれ人間はいろんな別の生物に比べて、マイクロRNAによって進化している、そのように言っても過言ではないと思います。

奈央:
このマイクロRNAっていうのは体のどこにあるんですか。

落谷:
一般的には細胞の中に存在しています。
でも、細胞の外、我々の血液にも存在してるんですね。

奈央:
へー、細胞の外にもあるんですね。

落谷:
そうですね、このマイクロRNAは我々のあらゆる生命活動の局面で使われている、そういったものなのです。
実は、細胞同士コミュニケーションしています。
細胞の場合は言語を持ちませんので、細胞が細胞の外に分泌するマイクロRNAを利用して細胞同士の会話が成立している、ということが言えるんです。

奈央:
面白い、マイクロRNAを使ってコミュニケーションしてるんですね。

竹内:
具体的にはどういったコミュニケーションをしているのですか。

落谷:
実は母乳の中にもマイクロRNAがあることがわかっています。
母乳の中のマイクロRNAというのはすごく特徴的で、赤ちゃんの免疫細胞を成長させる。
つまり、赤ちゃんを外敵から守る、そういったマイクロRNAが母乳に仕込まれていて、それによって赤ちゃんはうまく成長できる、そういったことも分かっています。

奈央:
自分の体に影響があるというのはわかったんだけれど、お母さんのマイクロRNAが生まれてくる赤ちゃんにまで影響を及ぼすというのはすごいですね。

江崎:
さらにマイクロRNAは、私たちが気になる老化にもおおきく係わっていることが分かってきました。

次回に続きます。

 

運動は、細胞を生化学的に良い方向に変化させる

ストライヤーの生化学 第7版 から
(リンクや色文字そしてカッコにより補足しました。一部原文と異なりますので、原書をご確認ください。)

p750    27・4    《運動は、細胞を生化学的に良い方向に変化させる》

運動と健康的な食事の組み合わせは、糖尿病の最も効果的な治療法の一つだが、それだけでなく、冠動脈疾患、高血圧、うつ、癌を始めとするさまざまな病気に対しても、最良の治療法となる。糖尿病の場合、インスリン抵抗性になった人やⅡ型糖尿病患者でも、運動によってインスリン感受性が高まる。
この有益な効果が生じるのはなぜだろう。

筋肉の活動によってミトコンドリア生合成が促進される

運動の際、筋肉が運動ニューロンから神経インパルスを受け取って、収縮するよう刺激を受けると、筋小胞体からカルシュウムが放出される。
カルシュウムは、後に35章で説明するように、筋収縮をひき起こす。
前に述べたように強力な二次メッセンジャーであり、多くの場合カルシュウム結合タンパク質カルモジュリンと協力して働く。二次メッセンジャーとしてのカルシュウムの作用には、カルモジュリン依存性プロテインキナーゼなど、さまざまなカルシュウム依存性酵素を刺激する働きがある。
カルシュウム依存性酵素は、AMPKと同様に、つぎには特定複写因子複合体を活性化する。
第29章、第31章で見ていくが、転写因子とは遺伝子の発現を抑制するタンパク質である。
特に2種類の遺伝子発現パターンが、定期的な運動に応じて変化する。
定期的な運動は、β酸化を行う酵素など、脂肪酸代謝に必要なタンパク質の生産を促進する。
興味深いことに、脂肪酸それ自体が、脂肪酸代謝系の酵素の転写を活性化するためのシグナル分子として働く。
さらに、カルシュウムシグナルカスケードによって活性化された別の転写因子群が代謝をプログラムし直し、それによってミトコンドリアの生成が亢進する。
脂肪酸酸化能力の上昇とミトコンドリアの増加が合わさって、脂肪酸の効率よい代謝が可能になる。
前に述べたように過剰な脂肪酸はインスリン抵抗性につながるので、逆に、効率の良い脂肪酸代謝はインスリン感受性を高めることになる
実際、トレーニングを積んだ運動選手の筋肉は、高濃度のトリアシルグリセロールをを含んでいても、インスリンに対する高い感受性を維持している。

運動時の燃料の選択は活動と時間によって決まる

ここまで異なった条件下でのエナルギー利用を見てきたが、このテーマに従って、今度は、様々な運動を行うときに燃料がどのように使われるかを考えてみよう。
嫌気的な運動、例えば短距離走をしているときに使われる燃料は、長距離走のような好気的な運動で使われる燃料とは異なる。
このように運動の種類が異なるときの燃料の選択から、エナルギー変換と代謝統合の多くの面が説明される。
化学エネルギーを運動エネルギーに直接変換するタンパク質であるミオシンは、ATPを直接の原動力とする。(第35章)
しかし、筋肉中のATP量は少ないので、筋肉からの出力とそれに応じて決まる走行速度は、他の燃料からのATP産生速度によって左右される。表27・3に示すように、ホスホクレアチン(phosphcreatin)〔クレアチリン酸(creatin phosphate)とも言う〕は、高エネルギーをもつリン酸基をADPに素早く移してATPを産生するが、ホスホクレアチンの量もATPと同様に限られている。
ホスホクレチンとATPは、激しい筋収縮の5~6秒分のエネルギーを賄える。
そのため、短距離走で最高速度が維持できるのは5,6秒だけなのである。
したがって100m走の勝者となるのは、初速を最大にするとともに速度の最低を最小限に抑えられる走者ということになる。
約10秒間走る間に、筋肉のATP濃度は5.2mMから3.7mMへ、ホスホクレアチン濃度は9.1mMから2.6mMへと低下する。
失われたATPとホスホクレアチンを補充するのには、嫌気的な解糖によって供給される燃料が使われる。
100m走のエネルギー源は、貯蔵されているATPとホスホクレアチン、筋グリコーゲンの嫌気的解糖である。
筋グリコーゲンの乳酸への変換では、ホスホクレアチンからのリン酸基転移に比べると、かなり大量のATPが得られるが時間が掛かる。
嫌気的な解糖のため、血中の乳酸濃度は1.6mMから8.3mMへと上昇する。
激しく活動する筋肉からはH⁺が放出され、それに伴って血液の㏗は7.42から7.24へと低下する。
1000m走(約132秒)の場合には、このような速度は二つの理由で維持できない。
第一にホスホクレアチンが数秒で使い果たされてしまうからである。
第二に生成する乳酸によってアシドーシスが起こってしまうからである。
したがってこれに代わる燃料源が必要になる。
筋グリコーゲンがCO₂にまで完全に酸化されればエネルギー収量はかなり大きく増加する。
この好気的過程は嫌気的解糖よりもかなり遅いが、走る距離が長くなるにつれ、好気的呼吸すなわち酸化的リン酸化の重要性が増す。
例えば1000m走で消費されるATPの一部は酸化的リン酸化から得られるに違いない。
解糖に比べると酸化的リン酸化ではATPがゆっくり生成するので、必然的に1000m走の速度は100m走よりも遅くなる。世界記録の100m走の約10.4ms⁻¹に対し1000m走は約7.6ms⁻¹である。
マラソン(42.195km)ではまた違った燃料の選び方が必要で、筋肉、肝臓、脂肪組織の共同作業が特徴である。
肝臓のグリコーゲンはすぐに頼れるエネルギー貯蔵庫として筋肉のグリコーゲンを補う働きをする。
しかし、約2時間ものこの過酷な競技に必要な150molのATPを補うには、全身の貯蔵グリコーゲン(最大でATP 103mol)でも足りない。
脂肪組織の脂肪の分解で得られる脂肪酸を酸化すればはるかに大量のATPが得られるが、ATP生成速度は最高でもグリコーゲン酸化よりも遅く、ホスホクレアチンからの生成速度の1/10以下である。
このように大量の貯蔵庫からのATP生成は、容量の限られた貯蔵庫からに比べてはるかに遅く、好気的運動と嫌気的運動の速度が違う原因となる。
長距離走には脂肪酸からのATP生成が不可欠である。
長距離走のような運動では脂肪が速やかに消費されるので、インスリン抵抗性を示す人に好気的運動を長くつづけるのが有益なのはそのためである。
しかし、優れたマラソンランナーの場合、脂肪だけを燃焼源にするわけにはいかない。
研究の結果明らかになっているのだが、筋肉のグリコーゲンが使い果たされると、筋肉の出力は最大50%に低下してしまう。
脂肪が十分に得られているにもかかわらず出力が低下するということは、脂肪で賄えるのは好気的活動の最大値の50%に過ぎないことを意味する。
脂肪酸酸化はグリコーゲン酸化よりもはるかに遅いので、脂肪酸酸化で得られるATPですべてを賄おうとすると、マラソンはおよそ6時間かかってしまう。
優れたマラソンランナーは、グリコーゲンと脂肪酸をほぼ同量ずつ消費して、100m走の速度の約半分に当たる5.5ms⁻¹という平均速度を実現する。
どうすれば、これらの燃料を最適な混合比で消費できるのだろう。
血糖値が低くなるとグルカゴン/インスリン比が高くなり、脂肪組織から脂肪酸が動員される。
脂肪酸はすぐに筋肉に入り、そこでβ酸化によってアセチルCoAへ、ついでCO₂へと分解される。
アセチルCoA濃度が上昇するとピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体の活性が下がり、ピルビン酸からアセチルCoAへの変換がが妨げられる。
つまり脂肪酸酸化によってクエン酸回路と酸化的リン酸化に進むグルコースが減少する。
こうすると、マラソン終了時にも十分使えるだけの量が残るようグルコースが節約されることになる。
両方の燃料を同時に使うことで、グリコーゲンを使い果たしてから脂肪酸酸化を始めた場合よりも、高い平均速度が得られる。
グリコーゲンが枯渇したところで糖質の多い食事をとると、グリコーゲンの貯蔵が速やかに回復する。
さらに、糖質の多い食事をとっている間もグリコーゲン合成は続くので、グリコーゲン貯蔵量が正常値よりはるかに多くなる。
この現象は、❝筋グリコーゲンの超回復❞と呼ばれ、普通にはカーボローディングと呼ばれることの方が多い。

グルコースは食事の炭水化物から産生される

食事により摂取された炭水化物がグルコースとして体内に取り込まれる過程を記事にします。
以前(2015/1/6)の投稿記事もご覧ください。

砂糖・糖類そして糖質について1~5

小糖類・二糖類は、小腸でαグルコシダーゼという酵素の働きにより単糖となり、グルコースとして体内に吸収されます。
そこで開発された、αグルコシダーゼ阻害薬についても記載します。

まず、ストライヤーの生化学 第7版 p413
から一部ご紹介します。
(リンクや色文字そしてカッコにより補足しました。一部原文と異なりますので、原書をご確認ください。)

グルコースは食事の炭水化物から産生される

私たちは、一般に、食事において多量のデンプンと少量のグリコーゲンを摂取する。
これらの炭水化物複合体は、腸管からの吸収と血中での輸送のために、より単純な炭水化物へと変換させる必要がある。
デンプンとグリコーゲンは、その大部分が膵臓の酵素であるα-アミラーゼ(α-amylase)によって、またその一部は唾液のα-アミラーゼによって消化される。
アミラーゼはデンプンとグリコーゲンのα1→4結合を切断するが、それらのα1→6結合を切断しない。
その代謝物は、二糖類または三糖類のマルトース(麦芽糖・二糖類)とマルトトリオース(三糖類)である。α1→6結合をもつため消化されないそれらの物質は、限界デキストリン(limit dextrin)と呼ばれる。
マルターゼ(maltase)はマルトースを2分子のグルコースに切断するが、一方、α-グルコシダーゼ(α-giucosidaase)は、アミラーゼによる消化を免れたマルトトリオ―スと他のオリゴ糖を消化する。
α-デキストリナーゼ(α-dextrinase)は、限界デキストリンをさらに消化する。
マルターゼとαグルコシダーゼは、腸管細胞の表面に局在する。
野菜に由来するスクロース(ショ糖)をフルクトース(果糖)とグルコースに分解するスクラーゼ(sucrase)も同様である。
ラクターゼは(lactase)は、乳糖のラクトースをグルコースとガラクトースに分解するのに重要な酵素である。単糖類は腸管壁細胞に輸送され、さらにそこから血中に輸送される。

ここまでが、ストライヤーの生化学 第7版 p413からの抜粋です。


【α-グルコシダーゼ阻害薬】

食事により摂取された炭水化物は、小腸においてαアミラーゼによって小糖類(オリゴ糖)・二糖類に分解さ れる。
小糖類(オリゴ糖)・二糖類は、小腸膜上(刷子縁膜上)に存在するα-グルコシダーゼ、マルターゼ、ラクターゼ、スクラーゼ、サッカラーゼ、グルコアミラーゼにより、単糖類(グルコース、フルクトース、ガラクトース)に分解される。

グルコースは、小腸粘膜細胞上に存在するNa・グルコース共輸送体1(SGLT1)によってNaと共に細胞内へ輸送される。
α-グルコシダーゼ阻害薬が小腸内に存在すると、α-グルコシダーゼ阻害薬がα-グリコシダーゼに結合する。

αグルコシダーゼ阻害薬は上記の作用によって、二糖類の分解を阻害する。
分解が阻害された二糖類は、回腸まで輸送され、この部位において分解されて単糖類となり、吸収される。
したがって、食後の急激な血糖値の上昇(グルコーススパイク)は抑制される。
また、血糖値が徐々に上昇するため、インスリンもそれに応じて徐々に分泌されることになり、高インスリン血症が改善されることになる。

α-グルコシダーゼ阻害薬の種類や副作用についてはこちらのサイトが参考になります。

α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)

グルコバイ(アカルボース)

ベイスン(ボグリボース)

セイブル(ミグリトール)

 

参考にさせていただいたサイト
http://www.amano-enzyme.co.jp/jp/enzyme/2.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%BC
https://katosei.jsbba.or.jp/download_pdf.php?aid=135
https://ja.wikipedia.org/wiki/%CE%91-%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%82%B7%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%BC
http://kusuri-jouhou.com/medi/diabetes/
http://polaris.hoshi.ac.jp/openresearch/index.html

インクレチンとDPP4阻害薬

前回、グルコースが膵β細胞に作用してインスリンが分泌される仕組のほかに、インクㇾチンにもインスリン分泌を促す作用があることを記載しました。

インスリン分泌の仕組み

今回は主にインクㇾチン、関連してDPP4阻害薬・GLP-1受容体作動薬について記載します。

経口投与されたグルコースは小腸のL細胞に作用してGLP-1 (glucagon-like peptide-1)を分泌し、またK細胞に作用してGIP (glucose-dependent insulinotoropic polypeptide)を分泌する。
これらGLP-1 、GIPを総称してインクレチンという。

インクレチンは膵β細胞内においてcyclic AMPを産生し、protein kinase Aを介して電位依存性Ca2+チャネルをリン酸化することによってCa2+イオンの流入を促進する。
よって、食後高血糖になる場合、2つの経路によってインスリンが分泌されることになる。
一つはグルコースによってATPが産生され、ATP感受性K+チャネルが閉鎖することによって脱分極し、電位依存性Ca2+チャネルが開口してCa2+イオンが流入する経路。
もう一つは、インクレチンによってcyclic AMPが産生され、上述した過程により電位依存性Ca2+チャネルが開口してCa2+イオンが流入することによってインスリンの分泌が促進されることになる。

DPP-IV阻害薬】

インクレチンはDPP-IV (dipeptidyl peptidase-IV) によって分解され、血中半減期は5分程度である。
このDPP-IVを阻害して血中のインクレチン濃度を上げるとインスリン分泌が増加するだろうと云う概念でDPP-IV阻害薬が開発された。

インクレチンは、膵β細胞内においてcyclic AMPを産生するために、膵β細胞の保護作用、増殖促進作用を示す。
GLP-1あるいはGIPによって産生されたcyclic AMPはプロテインキナーゼA (PKA)を活性化し、PKAはCREB (cyclic AMP応答タンパク質)を活性化することによってアポトーシス(積極的、機能的細胞死)を誘発するカスパーゼ3(caspase 3)を抑制し、膵β細胞の死が抑制されることになる。
また、プロテインキナーゼA (PKA)は、MAPキナーゼなどを活性化して膵β細胞の分化・増殖を促進する。
一方、プロテインキナーゼA (PKA)は、CREB (cyclic AMP応答タンパク質)を活性化して、IRS2の発現を促進し、PI3K/Aktを介して、PDX-1 (pancreatic duodenal homeobox-1)を活性化して膵β細胞の分化・増殖を促進する。

○GLP-1とGIPは、いずれもインスリン分泌を促進するが、少し作用が異なっている。
●GLP-1は、インスリン分泌促進作用、膵臓β細胞増殖作用、膵β細胞死抑制作用、グルカゴン分泌抑制作用、胃排泄能抑制作用、中枢性食欲抑制作用を示す。
●GIPは、インスリン分泌促進作用、膵臓β細胞増殖作用、膵β細胞死抑制作用を示すと共に、脂肪細胞に作用して脂肪の取り込みを促進し、肥満を誘発する作用を示す。

GLP-1受容体作動薬】

GLP-1はDPP-IVによって分解され、血中半減期は5分程度であることから、このDPP-IVを阻害して血中のインクレチン濃度を上げるとインスリン分泌が増加するだろうと云う概念でDPP-IV阻害薬が開発されたことは上記した。

GLP-1と同じような作用をする薬を外から投与すれば、すい臓からインスリンが分泌される過程を促進できることが分かる。
GLP-1そのものは体内で素早く分解されるため、分解されにくいようにGLP-1の構造を少し変えることで糖尿病治療薬が創出された。
そして、GLP-1受容体に結合する薬物がGLP-1受容体作動薬として開発された。
(薬の詳細や副作用については、こちらのサイトを参考に)

これらの薬剤は、体内の血糖値に応じて作用し、高血糖の時にのみ膵臓からのインスリン分泌を促進するため、インスリン治療に比べて低血糖発現率が低いと言われている。
また、いずれも体重減少や膵β細胞の保護作用を示すことも報告されている。

※参考にしていただきたい図
https://www.google.co.jp/search?q=dpp4%E9%98%BB%E5%AE%B3%E8%96%AC%E3%81%A8%E3%81%AF%E5%9B%B3&biw=1600&bih=751&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ved=0ahUKEwi3hrXUl_PQAhWEvrwKHWcfDqgQsAQILA

参考にさせていただいたサイト
http://kusuri-jouhou.com/medi/diabetes/dpp4.html
http://polaris.hoshi.ac.jp/openresearch/index.html

糖尿病の前には、メタボリックシンドロームが見られることが多い

前回に続きストライヤー生化学 第7版  p746
からの記事になります。
(リンクや色文字そしてカッコにより補足しました。一部原文と異なりますので、原書をご確認ください。)

糖尿病の前には、メタボリックシンドロームが見られることが多い

エネルギーの恒常性にかかわる重要な因子がわかったところで、インスリン抵抗性とⅡ型糖尿病の生化学基盤を考えてみよう。
肥満は、Ⅱ型糖尿病に至る道筋で初期に現れる症状の一つ、インスリン抵抗性をもたらす要因の一つである。
実際、インスリン抵抗性、高血糖、脂質異常症(トリアシルグリセロール、コレステロール、低密度リポタンパク質の血中濃度が高い)といった一群の状態は一緒に生じることが多い。
このような病態が集積した状態をメタボリックシンドローム(metabolic syndrome)と呼びⅡ型糖尿病の前兆と考えらえている。
肥満の結果、トリアシルグリセロールの摂取量が脂肪組織の貯蔵容量を超えてしまう。そのため、他の組織、特に腎臓と筋肉に脂肪が蓄積するようになる。理由は本省の後の方で説明するが、こうして脂肪が蓄積すると、インスリン抵抗性、ひいては膵臓の機能不全につながる。
筋肉と膵臓のβ細胞に的を絞って話を進めよう。

筋肉の過剰な脂肪酸が代謝を変化させる

脂肪が細胞の燃料として重要なことは、これまで何度も述べてきた。肥満の場合筋肉で処理できる量を超える脂肪が存在する。
ミトコンドリアでは高濃度の脂肪に対応してβ酸化の速度が上昇するものの、この脂肪酸すべてをβ酸化で処理しきれず、脂肪酸がミトコンドリアに蓄積し、やがては細胞質へとあふれ出す。
実際に、全部を処理しきれないと脂肪酸は再びトリアシルグリセロールに取り込まれ、細胞質に脂肪が蓄積する。細胞質では、ジアシルグリセロールとセラミド(スフインゴ脂質の成分の一つ)も増加する。
ジアシルグリセロールは、プロテインキナーゼc(PKC)を活性化する二次メッセンジャーある。PKCを始めとするSer/Thrプロテインキナーゼは、活性化されるとIRS(insulin receptor substrate)をリン酸化し、IRSのもつインスリンシグナルの伝達能力を低下させる。セラミドやその他の代謝物は、グルコースの取り込みとグリコーゲンの合成を阻害する。
それはPDK(phos- phoinositide-dependent kinase)とPKB(プロテインキナーゼB)を阻害するからで、その結果が食餌誘導性インスリン抵抗性である。

筋肉のインスリン抵抗性が膵臓の機能不全を悪化させる

過剰栄養は膵臓の機能不全にどのような影響を及ぼすのだろうか。
この問題が重要なのは、膵臓の主要な機能が、血中のグルコースの存在に応じたインスリンを分泌することだからである。これをグルコース応答性インスリン分泌(glucose-stimulated insulin secretion)(GSIS)という。
実際、膵臓のβ細胞は実質的にはインスリン製造工場である。
プロインスリンmRNAは膵臓の全mRNA(messenger RNA)の20%にもなり、一方、膵臓で合成される全タンパク質の50%はインスリン前駆体であるプロインスリンである。
グルコースはグルコース輸送体GLUT2を介して膵臓のβ細胞に入る、前にも述べたが、GLUT2は血中にグルコースが多いときにだけグルコースを輸送するので、インスリンが分泌されるのは、食後などのようにグルコースが豊富にあるときに限られる。
β細胞は、細胞呼吸と呼ばれる過程でグルコースをCO2とH2Oにまで代謝しATPを生産する。その結果ATP・ADP比が上昇すると開いていればk+を細胞外へと流失させる働きをするATP感受性k+チャンネルを閉じる。そうして細胞内のイオン環境が変化するとCa2+チャンネルが開き、流入したCa2+の働きでインスリンを含む分泌小胞が細胞膜と融合し、インスリンが血中に放出される。
つまり、グルコース代謝によるエネルギー充足率の上昇が、膜タンパク質の働きによって生理的応用(インスリンの分泌と血液中からのグルコースの除去)へと変換されるのである。
過剰栄養が続くと、最終的にβ細胞のどのような機能が損なわれ、インスリン抵抗性が本格的なⅡ型糖尿病へと移行するのだろう。

前述のように、
正常な状態にある膵臓のβ細胞は大量のプロインスリンを合成している。
このプロインスリンは小胞体内で折りたたまれ、加工されてインスリンとなり、分泌用の小胞へと入れられる。
筋肉でインスリン抵抗性が生じると、β細胞は、インスリンを働かせようとさらにインスリンを合成するという無駄な努力をする。

そのため、プロテインとインスリンすべてを処理する小胞体の処理能力が損なわれて小胞体ストレス(endoplasmic reticulum stress)〔ERストレス(ERstress)〕と呼ばれる状態になり、折りたたまれないタンパク質や誤って折りたたまれたタンパク質が蓄積する。

小胞体ストレスが細胞を守るためのUPR(unfolded protein response)またはストレス応答と呼ばれるシグナル伝達経路を開始する。UPRは数段階から成っている。
〇まず、それ以上タンパク質がERにに入って来ないように、タンパク質合成全体が抑制される。
〇第二にシャペロン合成が促進される。シャペロンとは前に説明したように、他のタンパク質の折りたたみを助けるタンパク質である。
〇第三に、誤って折りたたまれたタンパク質かがERから取除かれ、その後プロテアソームに運ばれて破壊される。

最後に、もしも、ここで述べたような応答でERストレスが軽減できないと、アポトーシス(積極的、機能的細胞死)が誘発され結局は細胞死が起こり、本格的なⅡ型糖尿病につながる。

Ⅱ型糖尿病の治療とはどのようなものだろう
実際は、ほとんどが行動面に関する治療法で、糖尿患者へは、エネルギー摂取が消費を上回らないようカロリー計算をすること、野菜、果物、穀類の多い食事をとることと有酸素運動を十分にするようにとといったアドバイスがなされる。

これらの治療指針は、健康な生活を送るための指針と同じで、Ⅱ型糖尿病のための特別な治療には、血糖値を監視して、これが目標範囲内(3.6~6.1mM)に収まるようにするという方法がある。ここで説明したようなな運動療法、食事療法で血糖値を適正に維持できない場合は、薬物療法が必要になる。
膵臓の機能不全の場合にはインスリン投与が必要になる可能性もある。また、AMPKを活性化するメトホルミンによる治療が有効な場合もある。

Ⅰ型糖尿病の代謝異常は、インスリンの不足とグルカゴンの過剰によって起こる

次に、Ⅰ型糖尿病について考えよう。
Ⅰ型糖尿病では、膵臓のβ細胞が自己免疫によって破壊されるために、インスリンの生産が不十分になる。そのためインスリン/グルカゴン比が正常レベルよりも高くなる。
突き詰めて言うと、この型の糖尿病患者は、血中グルコース濃度が高いにもかかわらず生化学的には飢餓状態なのである。
インスリンが欠乏しているのでグルコースの脂肪細胞や筋細胞への取り込みがうまく行かない。肝臓は糖新生、ケトン体生成の状態に固定されてしまう。
糖新生状態の特徴は、グルコースが過剰に生産されることである。
インスリンに比べて相対的にグルカゴンが過剰になるため、肝臓での解糖を促進し、糖新生を阻害するフルクトース2,6-ビスリン酸(f-2,6-BP)量が減少する。すると、6-ホスホフルクトキナーゼとフルクトース-1,6-ビスホスファターゼに対するf-2,6-BPの相反した効果のため解糖が阻害され糖新生が促進される。
要するに、インスリンの欠乏に対する細胞の応答が、血中のグルコース濃度をさらにさらに上昇させる。
また、糖尿病患者ではインスリン/グルカゴン比が高いため、グリーコーゲン分解も促進される。そのため、肝臓で過剰量のグルコースが生産され血中に放出される。血中グルコース濃度が尿細管の再吸収容量を超えると、グルコースは尿へと排出される。〔これがmellitus(密のように甘い意)という名の由来である〕。グルコースとともに水分も排出されるので、治療を受けていない急性期の糖尿病患者は、空腹とのどの渇きを感じる。
インスリンが欠乏して糖質利用がうまく行かなくなるため、脂質とタンパク質の分解が制御できなくなり、ケトン体生成状態になって、β酸化によって大量のアセチルCoAが生成する。
しかし、このアセチルCoAの大半は、縮合反応に必要なオキサロ酢酸が不十分なためクエン酸回路には入れない。
哺乳類は解糖で生じるビルビン酸からはオキサロ酢酸を合成できるが、アセチルCoAからは合成できないことを思い出してほしい。
その代わりにケトン体が生成するのである。

糖尿病の際立った特徴は、利用する燃料が糖質から脂質に替わることである。グルコースはどんなに豊富にあっても見向きもされないのである。ケトン体が高濃度になると、腎臓の酸塩基平衡維持能力の限度を超えてしまう。

治療していない糖尿病患者は、血液のPH低下と脱水によって昏睡になることもある。
面白いことに、Ⅱ型糖尿病患者では、糖尿病ケトアシドーシスはめったに問題にならない。肝臓や脂肪組織での過剰な脂肪分解を十分に妨げる程度のインスリン活性はあるからである。

Ⅰ型糖尿病にはどのような治療法があるのだろう。
カロリー計算、運動健康的な食生活など、Ⅱ型糖尿病治療の行動指針の多くがⅠ型糖尿病にも当てはまる。同様に、血糖値の監視もしなくてはならない。
生きていく為にはインスリンの投与が必要である。

※ここまで掲載してきての感想です。

糖質制限の理解ができていないようです。
ストライヤーの生化学 第7版 の別のページでは糖質制限に理解を示している個所もあります。
版を重ねるごとに糖質制限に対する理解度は上がってきているように思います。
(ストライヤー生化学  8版 英語版が出ているようです)

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追記

以前江部先生のブログに投降した記事です。

『16/03/15 オスティナート

カロリー恒常性と肥満

江部先生こんにちは、

今回の投稿、肥満に関連して、ストライヤーの生化学からカロリー恒常性と肥満について、抜粋して投稿します

最後に「肥満と戦うために、食事療法がおこなわれる」で低糖質高タンパク質食についての記述がありました。
全1101ページの中のたった12行ですがやっと糖質制限に関する記述を発見しました。
版を重ねるごとに、もっと増やしていってもらいたいものです。

【ストライヤーの生化学第7版 東京化学同人 742p・743p・744p

●レプチンとインスリンはカロリー恒常性の長期的な制御を行う

数時間から数日という尺度でエネルギーの恒常性を調節する重要なシグナル分子が二つある。
脂肪細胞から分泌されるレプチン(leptin)と、膵臓β細胞から分泌されるインスリン(insulin)である。
レプチンはトリアシルグリセロールの貯蔵状況を知らせ、インスリンは血中のグルコース量、すなわち糖質の供給状況を示す。

中略

●レプチンは脂肪細胞が分泌する数種類のホルモンの一つである。

●レプチン抵抗性は肥満の要因になる可能性がある

レプチンが体の脂肪量に比例して産生され、食べるのを抑制するのだとすれば、なぜヒトは肥満になるのだろう。
肥満したヒトでもほとんどの場合は、正しく機能するレプチンをもち、その血中濃度も高い。
レプチンの食欲抑制効果に対応できないことを、レプチン抵抗性(leptin resistance)という。
レプチン抵抗性の原因はなんだろう。

中略

よくわかっていないが、最近得られた証拠が示すようにサイトカインシグナル抑制因子(suppressor of cytokin signaring)(SOCS)と呼ばれる一群のタンパク質がかかわっているらしい。

中略

SOCSがレプチンの抵抗性にかかわっている事を裏付ける証拠は、POMC発現ニューロンから、SOCSを選択的に欠損させたマウスの研究で得られた。

中略

◎肥満と戦うために、食事療法がおこなわれる。

現在我々は肥満の蔓延とそれに関連した病気に直面しており、
どのような食事療法で最も体重を減らせるかが関心の的になっている。

一般に、カロリー摂取を調節しようとして行われる食事療法は大きく分けて二つある。

低糖質食と低脂肪食である。

低糖質食では普通、タンパク質の摂取を奨励する。

食事療法の効果の研究は非常に手間がかかるが、低糖質高タンパク質食が体重減少にもっとも効果的であることを示す証拠が増えている。

詳しい理由は不明だが、二つの説が広く言われている。

第一に、タンパク質は脂肪や糖質よりも満腹感を得やすいらしい。

第二に、タンパク質は脂肪や糖質に比べて消化するのに多くのエネルギーが必要で、エネルギー消費の増加が体重減少につながるという。

たとえば最近の研究で、タンパク質30%の食事は、タンパク質10%の食事よりも消化に必要なエネルギーが約30%多いことが明らかとなった。

タンパク質の多い食事がエネルギー消費を促進するしくみ、満足感を亢進するしくみは、まだわかっていない。

食事の量を減らして、運動量を増やせば、すべてに当てはまる。]

最後の食事誘発性熱産生DITまたは特異動的作用SDAについては
江部康二著「糖質制限パーフェクトガイド88p」が解り易く参考になりました。
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-category-106.html

厚生労働省のサイト e-ヘルスネット
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-030.html

こんばんは。

オスティナートさんから、ストライヤー生化学に記載してある「肥満と戦うために、食事療法がおこなわれる」について、貴重な情報をコメントいただきました。ありがとうございます。

オスティナートさん、高価な本をご購入され、肥満に対する糖質制限食の有効性についての記載を発見していただき、重ねてありがとうございます。

ストライヤー生化学 (第7版)は以下の如く、最新の知識が取り入れられていて
2013/02/22が、出版日です。

ストライヤー生化学 (第7版)
J. M. Berg  J. L. Tymoczko  L. Stryer 著
入村 達郎  岡山 博人 清水 孝雄 監訳
出版社 東京化学同人
本体13,900円+税

内容説明
監訳者のことばから:かつて,生化学の興味の中心は,代謝であり,“ストライヤー生化学”もその過半をこの代謝の記述に当てているが,本書の大きな特徴は,最新の分子生物学,細胞生物学の成果をいち早く取入れ,分子の構造と機能とに視点をおいて各領域の生命現象を論じ,解説している点である.今回の改訂では,代謝の全体像が最新の情報に基づいて見直され,また遺伝子調節の生化学的側面の解明が急速に進んでいることを受けて記述が増えている.新しい実験技術についても,最新の生化学研究における重要性を意識して詳しく述べてある.

『今回の投稿、肥満に関連して、ストライヤーの生化学からカロリー恒常性と肥満について、抜粋して投稿します。

最後に「肥満と戦うために、食事療法がおこなわれる」で低糖質高タンパク質食についての記述がありました。
全1101ページの中のたった12行ですがやっと糖質制限に関する記述を発見しました。
版を重ねるごとに、もっと増やしていってもらいたいものです。』

オスティナートさん。
同感です。

代謝の全体像が最新の情報に基づいて見直されたということで糖質制限食に有利な記載につながったのですね。

『低糖質食では普通、タンパク質の摂取を奨励する。

食事療法の効果の研究は非常に手間がかかるが、低糖質高タンパク質食が体重減少にもっとも効果的であることを示す証拠が増えている。

詳しい理由は不明だが、二つの説が広く言われている。

第一に、タンパク質は脂肪や糖質よりも満腹感を得やすいらしい。

第二に、タンパク質は脂肪や糖質に比べて消化するのに多くのエネルギーが必要で、エネルギー消費の増加が体重減少につながるという。

たとえば最近の研究で、タンパク質30%の食事は、タンパク質10%の食事よりも消化に必要なエネルギーが約30%多いことが明らかとなった。』

低糖質高タンパク食が体重減少に効果的であることを示す証拠が増えているとは嬉しいですね。

タンパク質が、満腹感を得やすいとのことですが、確かに、本ブログでもよく取り上げている有名な「DIRECT」というニューイングランド・ジャーナルに掲載されたイスラエルの研究があります。
Iris Shai et al. :NENGLJ MED , VOL359.NO.3 :229-241,2008
322人を
1)脂肪制限食(カロリー制限あり)
2)地中海食(カロリー制限あり)
3)糖質制限食(カロリー制限なし)
の3群に分けて2年間経過をみたものです。
その結果、糖質制限食は、カロリー無制限だったのに
自然に、脂肪制限食、地中海食と同じだけカロリー摂取が減って
結局3群とも同カロリーとなったのです。
そして結果は、糖質制限食が一番体重が減って、HDLコレステロールも一番増えたのです。

カロリー無制限なのに、自然に摂取カロリーが減ったのは、糖質制限食群では満腹感が得られやすかったからと思われます。

糖質制限食群では他の2群に比し、タンパク質の摂取比率は一番増えていました。

同様に、ストライヤー生化学で述べているように高タンパク食だと、食事誘発性熱産生DITまたは特異動的作用SDAが増加して消費エネルギーが増えることとなり、体重減少に有益です。

江部康二

糖尿病はよく見られる代謝疾患の一つで、肥満から生じることが多い

今日は「ストライヤー生化学」第7版   p744   から糖尿病に関する記述をご紹介します。
(リンクや色文字そしてカッコにより補足しました。一部原文と異なりますので、原書をご確認ください。)

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27・3 ≪糖尿病はよく見られる代謝疾患の一つで、肥満から生じることが多い

体重の調節の全体像がつかめたところで、行動、遺伝、あるいはその両方で調節がうまくいかないと生化学的にどうなるかを考えよう。

調節の失敗の結果としてもっとも一般的なのは肥満、すなわち過剰なエネルギーがトリアシルグリセロール(トリグリセリド)の形で蓄えられた状態である。
過剰に摂取された食物は、最終的にはすべてトリアシルグリセロールに変換されてしまうことを思い浮かべてほしい。
人は、グリコーゲンをおよそ1日分に相当する量に維持し、その分を補充した後は、余分な糖質を脂肪酸に変えてトリアシルグリセロールに変換する。
アミノ酸は全く貯蔵されないので、過剰なアミノ酸も結局は脂肪へと変換される。
つまり、食物の種類には関係なく、過剰に摂取すれば脂肪の貯蔵が増える。
カロリー恒常性の破壊がもたらす影響について、まず糖尿病(daiabetes mellitus (ダイアビーティス・メリタス)普通は単にdaiabetesという)から考えてみよう。
糖尿病は燃料の利用の仕方にひどい異常がある複雑な病気で、肝臓でグルコースが過剰に生産され、他の臓器ではグルコースの利用が低下する。
糖尿病の発症率は人口の5%で、世界で最も多く見られる代謝疾患であり、患者は数億人に上る。
1型糖尿病(type 1 daiabetes)はインスリンを分泌する膵臓の自己免疫機序による破壊が原因で起こり、通常は20歳前に発症する。
1型糖尿病は、インスリン依存性糖尿病とも呼ばれる。
インスリン依存性とは、患者が生きていく為にインスリン投与を必要とすることを意味している。
これに対し大多数の糖尿病では、血中のインスリン濃度は正常かむしろ高いのだが、患者はインスリンに対して全く応答を示さないインスリン抵抗性(insulin resistance)という特徴を示す。
この型の糖尿病はⅡ型糖尿病(type Ⅱ daiabetes)とよばれ、インスリン依存性糖尿病よりも一般的に発症時期が遅い。Ⅱ型糖尿病は糖尿病の90%以上を占め、世界で最も多くみられる代謝疾患である。
米国では、失明、腎不全、指や足の切断のおもな原因となっている。
肥満はⅡ型糖尿病を発症する大きな原因の一つである。

 

インスリンは筋肉で複雑なシグナル伝達経路を開始する

インスリン抵抗性の生化学的原因はなんだろう。
インスリン抵抗性がどのような仕組みで膵臓のβ細胞の機能不全を引き起こしⅡ型糖尿病に結び付くのだろう。
肥満はこの過程の進展にどう関わるのだろう。
これらの疑問に答え、代謝疾患の謎を解き明かす手始めに、インスリンによって調節される最大の組織である筋肉におけるインスリンの作用機構を見ていこう。

 

正常な細胞では、インスリンが受容体に結合すると受容体は二量体を形成しチロシン残基を自己リン酸化する。(このとき二量体の各サブユニットが互いに相手をリン酸化する)。
受容体のリン酸化によって、IRS-1等のインスリン受容体基質(IRS・insulin receptor substrate)の結合部位が生じる。
すると受容体のチロシンキナーゼ活性によってIRS-1がリン酸化され、インスリンシグナル伝達経路が開始する。
リン酸化されたIRS-1は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)に結合して活性化する。PI3Kは、ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸(PIP2)を二次メッセンジャーであるホスファチジルイノシトール3,4,5-トリスリン酸(PIP3)へと変換する反応を触媒する。PIP3がホスファチジルイノシトール依存性プロテインキナーゼ(PDK)を活性化し、これがさらに他のキナーゼを活性化する。
中でも特に重要なのが、Aktと呼ばれるプロテインキナーゼB(PKB)である。
プロテインキナーゼAktは、GIUT4を含む小胞の細胞膜への移行を促進するので、グルコースが血中からよりしっかりと吸収されることになる。
〇しかもAkt はグリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3)をリン酸化して阻害する。 〈GSK3前に述べたようにグリコーゲンシンターゼを阻害する。〉
したがって、インスリンはグリコーゲンシンターゼの活性化をも引き起こし、グリコーゲン合成を促進する。

 

シグナル伝達経路の例にもれず、インスリンのシグナル伝達カスケードのスイッチも、オフにできなければならない。
インスリンのシグナル伝達を抑制する方向に働く過程は3種類ある。

〇第一に、ホスファターゼがインスリン受容体を活性化して、鍵となる二次メッセンジャーを破壊する。チロシンホスファターゼ(tyrosine phosphatase)のPTP-1Bがリン酸基を除去して受容体を活性化する。
二次メッセンジャーであるPIP3は、PTENホスファターゼ(PTEN phosphatase; PTEN=phosphatase and tensin homolog)によって脱リン酸され、不活性され、二次メッセンジャーとしての作用を持たないPIP2が生成する。

〇第二にIRSタンパク質は、特異的Ser/Thrキナーゼによってセリン残基がリン酸化される、このキナーゼは過剰な栄養摂取や他のストレスシグナルによって活性化され、インスリン抵抗性の発生に関わっている可能性がある。

〇最後に、以前に述べた調節たんぱく質SOCSがインスリン受容体やIRS-1に結合し、それらのプロテアソーム複合体による分解を促進する。

ストライヤーからの掲載はここまでです。
後半の用語を少しまとめましたので、検索などの参考としてください。

・ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)Phosphatidylinositol 3- kinase
・ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸(PIP2)Phosphatidylinositol 4,5bisphosphate
・ホスファチジルイノシトール3,4,5-トリスリン酸(PIP3)Phosphatidylinositol 3,4,5 trisphosphate
・ホスファチジルイノシトール依存性プロテインキナーゼ(PDK)Phosphatidylinositol dependent protein kinase
・Aktと呼ばれるプロテインキナーゼB(PKB)Protein kinase B
・グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3)glycogen synthase kinase 3

 

 

※続きは次回掲載します。
●Ⅱ型糖尿病の前には、メタボリックシンドロームが見られることが多い。
●筋肉の過剰な脂肪酸が代謝を変化させる。
●筋肉のインスリン抵抗性が膵臓の機能不全を悪化させる。
●Ⅰ型糖尿病の代謝異常は、インスリンの不足とグルカゴンの過剰によって起こる。

THE SUGARFILM(甘くない「砂糖」の話)のDVDを見て

THE SUGARFILM(甘くない「砂糖」の話)

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THE SUGARFILM(甘くない「砂糖」の話)のDVDを見て,
TGそしてLDLcとsdLDLcについて前から気になっていたことがあります。
日本語字幕を見て疑問を感じて、吹き替えに変えてみました。

 

〈字 幕〉
トリグリセリドの数値が上がってしまうと
悪玉コレステロールも増える
悪玉の増加は
心臓病につながる
なぜなら動脈壁に蓄積して
動脈硬化を引き起こすからです
このコレステロールは
非常に危険なんです

 

〈吹き替え〉
トリグリセリドの数値が上がってしまうと
それに伴い小型で比重の高い超悪玉コレステロールが増える
この超悪玉の増加は心臓病につながります
血管の壁に蓄積して動脈硬化を引き起こしますからね
本当に危険なコレステロールなんですよ

必要な悪玉もありますけどね~

 

2016/11/26の江部先生のブログから
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-4020.html

この記事を拝見し、LDLcholesterol の重要性がよくわかりました。

追記
江部先生からのコメント

Re: THE SUGARFILM(甘くない「砂糖」の話)

オスティナート さん

そうですね。

1)
「通常の大きさの善いLDLコレステロール」
2)
「悪玉の小粒子LDLコレステロール」
3)
「超悪玉の酸化LDL之ステロール」

1)2)3)を、明確に区別することが重要と思います。

現状では、ほとんどの医師が、
1)2)3)を、一緒くたにしているのが、問題と思います。

2016/11/27(Sun) 10:22 | URL | ドクター江部 | 【編集
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