糖質について

岩波生物学辞典 第5版 p984 cによれば
http://r-ostinato.sakura.ne.jp/na/?p=428
糖質【carbohydrate】⦅同⦆炭水化物
糖質=炭水化物です。

いつから、糖質=炭水化物-食物繊維または、炭水化物=糖質+食物繊維と言われるようになったのでしょうか。
四訂成分表では炭水化物=糖質+繊維でした。


四訂食品成分表収載の記載例  ※画像を2回クリックすると拡大します。

五訂成分表(2000年平成12年)では糖質区分が廃止され、新たに別項目で食物繊維が設けられました。
そして、四訂成分表の繊維から五訂成分表では食物繊維となり内容も変わりました。


出典:五訂増補日本食品成分表 食品成分研究調査会/編 参考資料p469

〇四訂成分表(1982年(昭和57年))
●繊維
・セルロース
・ヘミセルロース
・リグニン・・・非炭水化物
〇五訂増補成分表(2005年(平成17年1月24日))
●食物繊維
・ヘミセルロース[グルコマンナンおよびペントサン(キシランなど五炭糖の重合体)など]
・ゴム質
・ペクチン
・アガロース/アガロペクチン
・アルギンサン
・キチン
・セルロース
・ヘミセルロース
・リグニン・・・非炭水化物

※現在糖質は、食品成分表(文部科学省)での区分は廃止されたままです。

※糖質は食品表示基準(消費者庁)に定めがあります。
食品表示法に基づく 栄養成分表示のための ガイドライン – 消費者庁
【資料】食品表示基準に規定されている基準値等 【食品表示基準 別表】p46
●測定及び算定の方法
〇炭水化物
当該食品の質量から、たんぱく質、脂質、灰分及び水分の量を控除して算定すること、この場合において、たんぱく質、脂質及び食物繊維にあっては、第1欄の区分に応じ、第3欄に掲げる方法により測定し、灰分及び水分の量にあっては、次に掲げる区分に応じ、次に定める方法により測定すること。
1 灰分 酢酸マグネシュウム添加灰化法、直接灰化法又は硫酸添加灰化法
2 水分 カールフィッシャー法、乾燥助剤放、減圧加熱乾燥法、常圧加熱乾燥法又はプラスチックフィルム法
〇糖質
当該食品の質量から、たんぱく質、脂質、食物繊維、灰分及び水分を控除し算定すること。
この場合において、たんぱく質、脂質及び食物繊維にあっては、第1欄の区分に応じ、第3欄に掲げる方法により測定し、灰分及び水分の量にあっては、炭水化物の項の第3欄の1及び2の方法により測定すること。
〇食物繊維
プロスキー法又は高速液体クロマトグラフ法

利用可能炭水化物について

2015年七訂食品成分表(公表日:2015年、平成27年12月25日)から、炭水化物成分表が公表されました。

これまで日本食品標準成分表における炭水化物量は、可食部100gから水分、たんぱく質、脂質及び灰分等の合計を差し引いた、いわゆる「差し引き法による炭水化物量」でした。
炭水化物成分表では、炭水化物の成分量算出にあたって、単糖類、二糖類およびでん粉をそれぞれ個別に直接定量のうえ、利用可能炭水化物として表示しています。

なぜ、利用可能糖質ではなく、利用可能炭水化物となったのでしょう、
また、糖質成分表ではなく、炭水化物成分表なのか謎(不思議)です。

※日本食品標準成分表2015年版(七訂)炭水化物成分表編 (文部科学省) p1
http://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365452.htm
利用可能炭水化物について、【(注)国際連合食糧農業機関(FAO)では、「available carbohydrate」を用いている。】としています。
国際的な混乱のないように「利用可能炭水化物」と直訳したのでしょうか。

※じつは、2009年に日本食品糖質推定成分表というものがありました。
参考までに、ご紹介いたします。
※日本食品糖質推定成分表の作成
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jisdh/21/4/21_4_314/_pdf
長文となりますので抜粋を掲載します。是非論文内容をご確認ください。
以下抜粋です。
【・緒言
糖類は、糖質の主要な構成成分であり、エネルギー源として利用されるばかりでなく、重要な栄養成分でもある。国連食糧農業機関(FAO)の報告書では、食品のエネルギー計算の基礎となる炭水化物の成分量算出にあたって、単糖類、二糖類およびでん粉をそれぞれ個別に直接定量のうえ、重量あるいは単糖当量として示すことを推奨しているので、我が国の成分表も基本的にはこのような国際的な動きとの整合性に配慮して作成されることが望ましい。・・・・・・・・
一方、※日本人の糖尿病患者の多くは2型糖尿病で、食べ過ぎや運動不足など、生活習慣の関与が大きいが、病状コントロールには※糖摂取を調整することが不可欠である。・・・・・・・・
・方法 略
・結果・・・・・・・


※画像を2回クリックすると拡大します。

・考察・・・・・・・
「糖質成分表」は糖類を分析し検討した成分表ではない。したがって、その数値は「成分表2010」と同じ精度ではないため、目安として使うものである。
・まとめ・・・・・・・・・
***
本糖質成分表は、著者により、平成21年度文部科学省委託調査中間報告(別冊)「五訂増補日本食品標準成分表準拠 日本食品糖質推定成分表」(平成21年8月31日、在団法人 日本食品分析センター)としてとりまとめた資料を、「成分表2010」に準拠するように補訂したものであり、公刊を予定している。】
※書籍名 日本食品糖質推定成分表: 五訂増補日本食品標準成分表準拠
寄与者 日本食品分析センター
出版社 日本食品分析センター, 2009.8
ページ数 131 ページ として公刊されました。
※詳細はこちらです
国立国会図書館 レファレンス協同データベース
http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000182722
・・・・・・・・・・・・・

●2010年版では、日本食品糖質推定成分表として糖質の成分表でした。

●2015年七訂食品成分表では、炭水化物成分表となりました。
利用可能炭水化物として数値総量(合計)を算出し、
各利用可能炭水化物に換算係数を乗じて単糖当量の総量を算出し、利用可能炭水化物(単糖当量)として区分し、表示されたのです。

※乗じた換算係数についてはこちらを参考にしてください
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/008/attach/1341939.htm
【換算係数についての提案
(1) わが国の食品成分表の策定過程においては、これまでもFAO/INFOODSの提案や指針をできる限り尊重しているので、独自の換算係数を採用することはしない。単糖当量への換算係数は、二糖類については1.05とし、でん粉については1.10とする。】

※換算係数の必要性について「炭水化物成分表 解説」に次のようにあります。
炭水化物成分表 解説(文部科学省)p11
3 利用可能炭水化物の単糖当量及び換算係数

食品成分委員会が、成分表2015年版で、単糖当量を用いることにした理由は、単糖当量で表した収載値(g)に単糖当量で表した利用可能炭水化物に適用するエネルギー換算係数(16kj/g、3.75kcl/g)を乗ずることにより、利用可能炭水化物のエネルギーを的確に利用できると判断したためである。
従来の方法では、炭水化物のエネルギー換算の際には重量に4kcol/gを乗じていた。
しかし、、例えば単糖類のぶどう糖と多糖類のでん粉とに同一の係数を用いているため、同一の重量で比較した場合にはエネルギー量に矛盾が生じた。
すなわち、でん粉からはその重量の約1.11倍のぶどう糖が生じるため、エネルギーも約1.11倍生ずるはずであるが、これに関する補正はされなかった(ただし、FAO/INFOODSは、重量で表した利用可能炭水化物のエネルギー換算係数は17kj/g(4kcol/g)とさだめている)。

国際的基準を採用する等の実用的見地から、科学的には適切な換算係数を採用することはせず、単糖当量への換算係数は、でん粉については1.10とし、二糖類については1.05とした。

・・・・・・・・・・・

2015年七訂食品成分表、炭水化物成分表はつぎのとおりです。


※画像を2回クリックすると拡大します。

炭水化物成分表の考察

2015年に公表された炭水化物成分表についてです。

利用可能炭水化物について、よくわからない、
糖質=炭水化物-食物繊維で算出した糖質量との差が大きく、不明な部分が多い、数値の信用性がない等、問題が多く指摘されているようです。

しかし、いつまでも臭いものに蓋をしておくわけにもいきません。
日本食品標準成分表2020年版の公表がすでに予定されています。
積極的に問題点などを(文部科学省に)指摘するなど、前向きに対応していくことが、医療関係者にも求められていると思います。

いろいろと問題ある利用可能炭水化物ですが、
現在の差し引き法による糖質算定は、不明な成分(100gから水分、たんぱく質、脂質、食物繊維、灰分その他を差し引いた残りのすべての成分)が多く含まれる、推定糖質です。
将来、利用可能炭水化物を直接定量し、現在より正確な数値が得られるようになれば、差し引き法による推定糖質ではなく、具体的に糖質を把握することができることになるでしょう。

調べてみると、海外のデータ(英国、豪州、アメリカ合衆国)の流用または推計など、自国(日本)データのない部分の数値を補っているようです。
これでは、あくまでも、次の段階に進む過程という印象です。

とはいうものの、利用可能炭水化物の成分を直接定量することは、将来の食品成分表を考えるうえで、とても重要なことだと思います。

※私の個人的な、2015年版炭水化物成分表の感想です。
「炭水化物成分表」は糖質を分析し検討した成分表ではない。
また、利用可能炭水化物(単糖当量)と血糖値上昇の関係などの検討もしていない。
したがって、その数値は「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」と同じ精度ではないと思われます。
私は、2015年版炭水化物成分表は、目安として使うものであると思っています。

以上、次の資料を一部引用しました。
※日本食品糖質推定成分表の作成
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jisdh/21/4/21_4_314/_pdf
日本食品糖質推定成分表 著者、渡邊智子氏、千葉県立保健医療大学 他6名
≪・考察・・・・・・・
「糖質成分表」は糖類を分析し検討した成分表ではない。したがって、その数値は「成分表2010」と同じ精度ではないため、目安として使うものである。≫

ロカボ糖質

サラヤのラカントsの商品パッケージ左上に「糖質0」の表示を発見しました。
よく見ると「ロカボ糖質0」だそうです。
※があり、左下に「ロカボ糖質」の説明がとても小さな文字で記載されていました。

サラヤのサイトをのぞいてみると、
https://www.lakanto.jp/toshitsu/
〇サラヤでは、商品パッケージに「ロカボ糖質」表示を始めています。
●ロカボ糖質とは、利用可能炭水化物を元に算出したものです。
・・・・・・・・・・・・
※「ロカボ」、「ロカボ」マークは一般社団法人 食・楽・健康協会の登録商標です。

紛らわしい表示は是非やめてほしいものです。

もしこれを許すと、糖質と利用可能炭水化物(単糖当量)との数値に差のある多くの食品で(ビール等々・・・・・・)、誤解を与えることになりそうです。

糖質と利用可能炭水化物その3

われわれ糖質制限をしているものにとって、とても重要な「糖質」です。
今回は、糖質の定義についてコメントいたします。

糖質とは

●生物学
岩波生物学辞典 第5版
p984 c
糖質【carbohydrate】⦅同⦆炭水化物。
Cm(H2O)nすなわち見かけ上炭酸と水からなるような組成をもつ化合物の総称。
多価アルコールのアルデヒド、ケトン誘導体、それらに近縁の誘導体や縮合体を含める。
糖は元来は天然の甘味成分を意味する。
糖質の基本は*単糖で、これらがグリコシド結合した化合物を、その糖残基の数により*オリゴ糖及び*多糖に分類する。
また、これらが蛋白質や脂質などと共有結合したものを*複合糖質と呼ぶ。
単糖やオリゴ糖の還元基にアルコール、フェノール、サポニン、色素などのアグリコンが結合した*配合体も天然に広く分布する。
糖質の生理機能としてエネルギーの貯蔵・運搬(*グリコゲン、*澱粉、グルコース、ショ糖など)、構造支持(*セルロース、*キチン、*ペプチドグリカン、*プロテオグリカンなど)に加え種々の細胞間相互作用や生物的認識の過程で糖質(複合糖質)が特異的なマーカーやシグナルとして重要な役割を果たしている。

●日本食品標準成分表
五訂増補日本食品標準成分表
食品成分研究調査会/編  医歯薬出版株式会社
p468
参考資料 食品成分研究調査会 編
参考資料1 「炭水化物」の成分内容
(1)五訂成分表における区分変更

五訂成分表・五訂増補成分表おいては、炭水化物内の成分区分である「食物繊維(水溶性、不溶性、総量)」のみを後段に記載し、四訂成分表の「糖質」区分を廃止した。

従前JAS規格の延長線上規定されていた糖質(炭水化物から繊維(粗繊維)を差し引いた成分区分)は行政上その根拠を失ったことになる。

※五訂以降、2010年版、七訂2015年版と「糖質」区分は廃止されたままです。
そして糖質(炭水化物から繊維(粗繊維)を差し引いた成分区分)は行政上その根拠を失ったままで、現在、七訂2015年版でも同じです。
上記参考資料では、続いて次のような記載があります。

JAS規格の立場から定める成分値は各食品あるいは食品群の品質や特性に照らして、それぞれ規定された方法で測定されるので、その間の統一性は必ずしも図られていない。
研究・教育あるいは関係技術面で当面「糖質」が二様あるいはそれ以上の意味合いで用いられることがあり得るので、混同のないように注意し、場合によっては断り書きも必要になろう。

注:例えば「ここで「糖質」とは、食品の栄養表示基準(平成15年厚生労働省告示第176号)に基づく糖質をいう」など。

※全文はこちらです。
資料jpg no.1
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資料jpg no.2
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資料jpg no.3
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資料jpg no.4
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注:四訂までは炭水化物を糖質と繊維に区分して表示していました。
五訂では炭水化物とは別区分で食物繊維の項目をもうけ、四訂成分表の「糖質」区分を廃止しました。
資料jpg no3では、四訂の「繊維」と五訂の「食物繊維」の違い(内容)も確認できます。

●「食品表示法」と「食品表示基準」
栄養成分表示及び栄養強調表示とは – 消費者庁https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/health_promotion_170901_0001.pdf

栄養成分の量及び熱量(基準別表第9)
〇炭水化物
当該食品の質量から、たんぱく質、脂質、灰分及び水分の量を控除して算定すること、この場合において、たんぱく質、脂質及び食物繊維にあっては、第1欄の区分に応じ、第3欄に掲げる方法により測定し、灰分及び水分の量にあっては、次に掲げる区分に応じ、次に定める方法により測定すること。
1 灰分 酢酸マグネシュウム添加灰化法、直接灰化法又は硫酸添加灰化法
2 水分 カールフィッシャー法、乾燥助剤放、減圧加熱乾燥法、常圧加熱乾燥法又はプラスチックフィルム法
〇糖質
当該食品の質量から、たんぱく質、脂質、食物繊維、灰分及び水分を控除し算定すること。
この場合において、たんぱく質、脂質及び食物繊維にあっては、第1欄の区分に応じ、第3欄に掲げる方法により測定し、灰分及び水分の量にあっては、炭水化物の項の第3欄の1及び2の方法により測定すること。
〇食物繊維
プロスキー法又は高速液体クロマトグラフ法

次回は「利用可能炭水化物」についてコメントさせていただきます。
(農作業(ニンニクの植え付けなど)の関係で2週間後を予定しています。)